シーン6
<あらすじ>
孤児院に泊まった。
早朝、孤児院前で部下と集合。
────────────────────
───孤児院───
早朝、ユキは孤児院の前で部下を待っていた。
意外なことに、最も早く来たのは反抗的だったダンだった。
ユキ:
「早かったですね。
もう一度 殴り飛ばさないと、貴方は素直に来ないと思っていましたが・・・。」
ダン:
「・・・悔しいが、あれだけ実力差があるのに従わないわけにはいかない。」
ダンの態度はハッキリとしたものだった。
気のせいか、表情も幾らかスッキリとしているようにも見える。
ユキはダンに対する評価を幾らか改めた。
ユキ:
「ふむ、雑魚というのは改めざるを得ないようですね。
クソ真面目。」
ダン:
「・・・もしかして、それは何か改めたのか?」
そうしてユキがダンにダル絡みしていると、暫くして部下達が集まってきた。
ユキ:
「よし、全員 集まったようですね!
それでは方針を発表します。」
ユキは近くの”薬神の迷宮”に敵が潜んでいるらしいので、全員で殴り込みに行く旨の話をした。
ユキ:
「──・・・というわけで、その”薬神の迷宮”にカチコミを掛けます。
私一人でも十分過ぎるほどですが、私が使えると判断した貴方達がいれば もっと楽勝でしょう。」
そこでダンが待ったを掛けた。
ダン:
「話は分かったが・・・ユキ、お前が戦士だというなら欠かしてはならない予定を忘れているぞ。」
ユキ:
「はて?
皆で魔物狩りでもしますか?」
ダン:
「俺は良いと思うが・・・違う。
戦士というからには団体行動が基本だ。
規律を重んじ、毎日の調練を欠かさず行う。」
ユキ:
「なるほど・・・クソ真面目はクソ真面目ですね。
ですが私は さっき話したように”薬神の迷宮”にカチコミを掛けたい。
それを止めろとでも言うのですか?」
ダン:
「止めろとは言わない。
戦士の本分は戦いにある。
だが、俺が言いたいのは規律を重んじるべきということだ。
お前の言い分を通すのなら、裁量のある百人長に直談判すべきだ。」
ユキ:
「ふむ、続けて?」
ダン:
「だから我々は、お前の言うように”薬神の迷宮”に殴り込む前に、近隣の部隊が集まる”調練場”に顔を出す必要がある。」
ユキ:
「”調練場”は修練場とは違うんですか?」
ダン:
「研鑽を積むという意味では同じと言える。
ただ違うのは、”調練場”は部隊としての戦い方を磨く場所で、修練場というのは個人としての戦い方を磨く場所ということだ。
・・・なんで こんなことを知らないんだ?」
ユキ:
「ふん!」
ユキはダンを殴打した。
ダン:
「痛ぁ!」
ユキ:
「規律を重んじるというなら、隊長に舐めた口を利くんじゃありませんよ。
・・・まぁ、貴方の知識が優れているということは分かりました。
頼りにしますよ、クソ真面目。」
ダン:
「・・・善処する。」
ダンは殴られた部分を摺り合わせながら言った。
ユキ:
「では、クソ真面目の提言を受けて、調練場に顔を出します。
クソ真面目!
言い出しっぺなんですから案内して下さい。」
ユキは部下達を連れて、ダンに先導されながら歩き出した。
───調練場───
ユキ達が調練場に顔を出すと、既に沢山の部隊が合同で訓練をしているところだった。
ユキはキョロキョロと辺りを見渡した後、ヒマそうにしていた一人の男性に声を掛けた。
ユキ:
「そこの貴方。
ここは どう利用すればいいか教えて下さい。」
ユキに声を掛けられた男:
「あ?
なんだ貴様ら?
調練に遅れて来るとは懲罰ものだぞ!」
ユキに声を掛けられた男は、突然ユキに殴り掛かってきた。
しかしユキは その拳を躱して懐に潜り込み、腹部に強烈なカウンターをお見舞いした。
急に殴り掛かってきた男:
「う・・・ぐぅ・・・き、貴様・・・。」
ユキ:
「どう利用すればいいか聞いたんですが?」
ユキは急に殴り掛かってきた男の足を払って転ばせると、その顔面を踏み潰して気絶させた。
ユキ:
「ハッ!
雑魚が!」
ダン:
「おい・・・。」
ジャグ:
「あ~、やっちゃったよ・・・。」
ミランダ:
「元気だねぇ~。」
ビンド:
「鋭い身のこなしだ。」
部下達は三者三様の反応を示すが、半分は顔を青くしていた。
しかしユキは気にすることなく、再びキョロキョロしはじめる。
すると、ユキは ゆっくりと近づいてくる一人の男に気が付いた。
ゆっくりと近づいてきた男:
「あ~、やっちゃったねぇ~。」
ユキ:
「誰です?
私はユキというんですけど。」
ゆっくりと近づいてきた男:
「ご丁寧にどうも。
私はデナグド・・・この辺りを管轄している百人長だ。」
デナグドと名乗った男がユキの前に立つと、ユキの部下達が一斉に頭を下げた。
ダン:
「すいません、デナグドさん。
コイツは私が抑えるべきでした。」
ジャグ:
「いやホント、ゴメンなさい・・・。」
ミランダ:
「ゴメンなさい~。」
ビンド:
「お疲れさまです。」
一人だけ おかしいが おおよそデナグドに謝罪を述べた。
取り敢えずユキはダンの頭をハタいた。
ダン:
「痛ぁ!」
ユキ:
「偉そうな口を叩かないで下さいよ・・・。
それよりデナグド百人長、この男 突然 殴り掛かってきたんですけど 頭おかしいんですか?」
デナグド:
「それは君たちが調練に遅れてくるからだよ。
彼は調練の教官なんだ。
悪く思わないでやってくれ。」
ユキ:
「そうなんですか。
それは悪いことをしました。
まぁ、一重に私に刃向かったせいですが・・・。」
デナグド:
「聞くに勝る横暴だねぇ。」
デナグドはそう言うと、背後に合図して突然殴り掛かってきた男を部下に回収させた。
デナグド:
「話はダフネル先生から聞いてるよ。
君がエディ様の弟子のユキだね。」
ユキ:
「はい、そうです。
エディのクソババァの弟子のユキです。」
デナグド:
「おおぅ・・・。
エディ様のことを堂々と悪く言えるのは、この集落では君くらいだろうね。」
ユキ:
「そんなにエディが怖いですか?」
デナグド:
「そりゃあね・・・。
昔はよく半殺しにされたもんさ・・・。
ダフネル先生の扱きが天国に思えるほどに苛烈な人だからね。」
ユキ:
「まぁ沸点が低いチンピラなことは認めますよ。
でも、エディは単にケンカが好きな愛すべきバカですよ?」
デナグド:
「ハハ・・・この話題は止めようか。
・・・エディ様に聞かれたら昔みたいに半殺しにされそうだ。
昔みたいにタフじゃないから死にかねないよ。」
ユキ:
「大変ですね。
もしエディ関連で何かあったら言って下さい。
代わりにブン殴ってあげますから。」
デナグド:
「・・・本当に君は強いんだね。
私には到底マネ出来ないよ。
それより、この場所に用があったんだろう?
私が君が殴り飛ばした教官の代わりに話しを聞こうじゃないか。」
ユキ:
「この場所の利用方法を教えて下さい。」
デナグド:
「調練場の利用方法だね。
調練場は皆で訓練をするところさ。
ここではチームでどのように動くのか、どうすればより良い動きを出来るのかを学ぶことが出来る。
・・・本当は さっき君が殴り飛ばした彼が担当なんだけど・・・まぁ、ダフネル先生から君の性格は聞いてるからね。
私が特別に君の専属教官になろうじゃないか。」
ユキ:
「おぉ・・・話が分かりそうな方が担当してくれるとは助かります。
しかしダフネルは随分 私の性格を分かっているようですね。」
デナグド:
「あぁ・・・ダフネル先生からエディ様 並の苛烈さと聞いて震えたよ。」
ユキ:
「いやぁ~、照れますね。」
デナグド:
「照れるんだ・・・。」
ユキ:
「まぁ、そんなことはさておき、早速ですがデナグド百人長。
私達は五人隊としては新編になります。
最初にやるべき調練は何でしょうか?」
デナグド:
「う~ん、君たち・・・確か人数が足りなくて編成しきれなかった部隊だよねぇ。
そういうことなら調練より先にやることがあるね。」
ユキ:
「ほう・・・その やることとは?」
デナグド:
「それはもう、自分のオオカミを選ぶことさ。」
ユキの部下達:
「「おぉ!」」
デナグドが そう言った瞬間、ユキの部下達が一斉に声を上げた。
ユキ:
「え?
何です?」
ダン:
「おい、オオカミだぞ!?」
ジャグ:
「オオカミだよ!?」
ミランダ:
「オオカミ~♪オオカミ~♪」
ビンド:
「荷物が楽になりそうだね。」
ユキは部下達のテンションについていけてない。
デナグド:
「まぁ、ユキちゃんにも分かり易く言うと、騎獣だよ騎獣。」
ユキ:
「あぁ!」
しれっとデナグドは”ユキちゃん”呼びしたが、ユキは気にしなかった。
ユキ:
「それは良いですね!
遠征が楽になります。」
デナグド:
「じゃあ早速”放牧場”に行こうか。」
デナグドは背後に控えていた部下達に少し離れることを伝えると、ユキ達を連れて”放牧場”に向かった。
────────────────────
<ユキの手帳>
・氷グマ(魔物)
パワーがイカレポンチのクソ魔物。
戦ってみると結構 楽しかった。
魔法も派手だから、心臓バクバクする。
雪グマの上位種で、かなり珍しい。
肉は上質で、痺れるような旨さがあるけど、調理が かなり難しい。
ステーキか骨付き肉にするのがオススメ。




