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寄り道好きのユキ  作者: ソドムとゴモラの獣
アンテスロム氏族
57/110

シーン3

本気で殺しに掛かったユキだったが、ティアを半分ズタ袋のようにしても殺しきることが出来なかった。


ユキ:

「はぁ・・・どうなってるんですか?

本気で殺しに掛かって、私が殺せなかった人なんて そうそう居ませんよ?

ましてや全身の骨を砕いて、貴方を血液袋にしてやったはずですが?」


ティア:

「ヒヒッ、アタシは特殊な体質でね。

ちょっとや そっとのダメージでは死なないのさ。

分かったらホラ。」


ユキ:

「ちょっとや そっとと言ったダメージでは無かったと思いますが・・・。

まぁ、少しくらい乱暴にしても良いことは分かりました。

・・・何ですか その手は?」


ティア:

「死なないことに魔法書を賭けると言っただろう?

掛け金の回収だよ。」


ユキ:

目敏(めざと)いですね。

・・・まぁ、身体を張った賭けに金を払わない理由はありません。

いいでしょう、1金50銀で良いですか?」


ティア:

「ん?

3金じゃないのかい?」


ユキ:

「魔法書を売り戻したら、貴方の手元に残るのは1金50銀でしょう?

元手の魔法書が無い分、純粋に儲けになって良いじゃないですか。」


ティア:

「アンタも十分 目敏いじゃないか。

まぁいいよ、1金50銀で手を打ってやろうじゃないか。

その代わり、今後もご贔屓(ひいき)にね。」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<所持金>

・金貨:3

・銀貨:49

・銅貨:39

・鉄貨:1

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ユキ:

「ええ、今後も贔屓にしますよ。

少なくとも殺しきれないなら贔屓にせざるを得ませんからね。」


ティア:

「ヒヒ、怖いねぇ。

じゃあ、”薬神の迷宮”を楽しんでね。

今回はアタシが仕込んでいるワケじゃないから退屈だと思うけどね。」


ユキ:

「なんだ、貴方が仕込んだわけじゃないんですか。

殴り損ですよ。」


ティア:

「仕込みに関わってるのは本当だよ。

仕事だからね。

仕込んだのが私じゃないというだけさ。

大差ないよ。」


ユキ:

「まぁ、どっちでも良いですけど。

次 会うまでに新しい魔法書を用意しておかなかったら、今度こそ手の込んだ殺し方しますからね。」


ティア:

「あいよ、楽しみにしておくね。」


そう言うと、ユキはティアの店を去った。


──────


市場を去ったユキは、その足で鍛冶屋に向かった。


───鍛冶屋───


ユキが鍛冶屋を訪れると、見覚えの無い若者が店番をしていた。


若者は気怠(けだる)げだ。


若者:

「らっしゃせー。」


挨拶まで気怠げである。


しかし舐められているとは感じないので、ユキはスルーした。


ユキ:

「こんにちは。

店主のダフネルは居ますか?」


若者:

「鍛冶長なら仕事中だよ。

話なら後にするんだね。」


ユキ:

「そういうことなら待ちましょう。

ただ、ダフネルにユキが来たとだけ伝えて下さい。

早く来ないと暴れるとも。」


若者は少し引いたような顔をした。


若者:

「分かったけど、店の物 壊さないでよ?

賃金から天引きなんだ。」


そう言うと、若者は店の奥へと引っ込んでいった。


少し経つと、店の奥からドッタンバッタンと騒音が響いた。


(しばら)くして、店の奥から作業中だったらしいダフネルが顔を出した。


その顔はオーラすら感じるほど不機嫌である。


ダフネル:

「小娘・・・店の物を壊しておらんだろうな・・・。」


ユキ:

「流石に まだ壊してませんよ・・・。

私を何だと思ってるんですか。」


ダフネル:

「エディ(ぶし)を受け継いだ狂犬。」


ユキ:

「失礼ですね。

それより依頼の話ですよ。」


ユキは そう言うと、バックから”雪グマの耳”を5つ、”氷グマの耳”を1つ取り出した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<バック>

・特大の革袋->容量:40枠

1.<石生成>の魔法書

2.<水生成>の魔法書

3.<送風>の魔法書

4.<静電気>の魔法書

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ダフネル:

「ほう、雪グマが5体に・・・この巨大な耳は・・・──」


ユキ:

「奥の方に居た氷グマですよ。

大した迫力でした。

おかげで”鉱脈神の迷宮”の一部が倒壊しましたよ。」


ダフネル:

「氷グマを単身で倒したか。

大したものだ。

雪グマ狩りと思って戦士団が出ていたら壊滅していたかもしれんな。」


ユキ:

「そこまで持ち上げなくても、私が凄いということは分かっているので大丈夫ですよ?

それより報酬ですよ、報酬。

戦士にしてくれるという話だったでしょう?

そこんとこ どうなってるんですか?」


ダフネル:

「持ち上げているワケでは無いのだがな。

まぁいい。

どうせ貴様のことだから直ぐに雪グマ共を駆除してくると思って、既に戦士として認めさせてきたわ。」


ユキ:

「おー。」


ユキの<信用>が上がった。


・信用:10%(浮浪者) -> 50%(市民)


ダフネル:

「そして今年から新しく編成された五人隊の内、一人足りなかったところに ねじ込んでおいたぞ。

顔合わせのために待機させておるから少し待っとれ。」


ユキ:

「良いですけど、余りに遅かったら暴れますよ?」


ダフネル:

「止めろ。

一歩も動くな。」


ダフネルはユキに大人げなく威嚇すると、店の奥へと再び戻っていった。


暫くして、もう少しでユキが店の物に手を出すといったタイミングで、4人の若者を連れたダフネルが戻ってきた。


その中には、先程 店番をしていた若者も含まれている。


ダフネルは若者たちに横一列で並ぶよう指示した。


若者達は文句一つ垂れず、ダフネルの指示に従って横一列に素早く並んだ。


ダフネル:

「右から紹介しよう。

1番目が さっきまで店番を頼んでおったジャグ。

便利・・・いや器用なヤツで、お前も気に入るはずだ。」


ジャグ:

「ダフネルさん・・・。

人を便利って言いかけるの止めて貰えますか?」


ダフネル:

「細かいことは良いではないか。

そして2番目がビンド。

良い奴なんだが、抜けとるヤツでな。

まぁ、楽しい奴だ。」


ビンド:

「君がダフネルさんの言ってたユキだね?

宜しく頼むよ。」


ビンドが手を差し出す。


ユキは強めに掴んで振り回した。


お互いニコッとなる。


ダフネル:

「そして3番目がミランダ。

ノンビリした奴だが、まぁ気は合うだろう。」


ミランダ:

「話は聞いてるよぉ~。

元気な子なんだってねぇ~ユキちゃんって。」


聞く人によっては悪意すら感じさせる物言いだが、当のミランダは100%好意的に捉えていた。


この言葉も、ダフネルが散々ユキを狂犬と罵った後に出た感想である。


ダフネル:

「そして最後なんだが・・・──」


最後の若者:

「お前がユキか?

ダフネルさんに聞いたが、大分調子に乗ってるらしいな。

その根性、俺が叩き直してやるから覚悟しろよ?」


ユキ:

「あ?」


舐められていると感じたユキは、反射的に最後の若者に殴り掛かった。


最後の若者は反応出来ず、吹き飛んで店の在庫に突っ込んだ。


挿絵(By みてみん)


ユキも そのまま雪崩込む店の在庫に突っ込み、どこかで見たような光景が再現される。


その間、ダフネルはアチャーと言わんばかりに額を手で覆っていた。


ユキは起き上がろうとする最後の若者を足蹴(あしげ)にすると、何度も何度も執拗に最後の若者を叩きのめした。


最後の若者:

「アガッ・・・!」


ユキ:

「・・・誰が誰の根性を叩き直すって?

あ?

こっち見ろ。」


最後の若者と目が合うと、ユキは最後の若者の顔面を殴った。


最後の若者:

「グッ!!」


ユキは確かに最後の若者の骨を幾らか砕いた感触を味わった。


ユキ:

「雑魚が。

二度とそんな口聞けないよう、その顎砕いてやるよ。」


ユキは極めて冷徹に、魔物を(さば)くときと同じような目で最後の若者の顎に手を掛けた。


そんなとき、ダフネルが不意に咳払いをした。


ダフネル:

「──・・・ゴホン、ゴホン。

あー、ユキ?

ジャグが引いておるから、その辺にしてくれんか?」


ユキが最後の若者を足蹴にしながら振り向くと、確かに先程まで店番をしていた気怠げな若者が「コイツ、ヤバ・・・」と言わんばかりに引いた目線を投げかけていた。


それは畏怖の感情にも似て、ユキには心地良かった。


ユキ:

「・・・もう少し、痛めつけましょうか?」


一転して ご機嫌になったユキはジャグに尋ねる。


ジャグは一層ドン引きして首を振った。


ユキ:

「そうですか・・・。」


ユキは少し残念そうに、最後の若者の腹部に追撃を加え、最後の若者の意識を刈り取った。


ユキ:

「あー、やっぱりムカつく奴を殴るのは気分が良いですね。」


ユキは先程までの怒りが嘘のようにルンルンである。


ダフネル:

「それは良かったな。

ちなみに今黙らせた男はダンと言って、この五人隊の隊長候補だった男だ。

今、隊長は決まったようだがな。」


そう言って、ダフネルは意味ありげにユキを凝視する。


ユキ:

「ん?

私ですか?

こういうのって、いきなり隊長でも大丈夫なんです?」


ダフネル:

「わざとらしく言うな。

どうせ誰が隊長だろうと決闘を仕掛けて成り代わっていただろう?」


ユキ:

「いやぁ~。

どうも他人の命令は聞きたくなくて・・・。」


ダフネル:

「うむ。

それでこそ、我らが選んだ劇物よ。

よ、狂犬!」


ユキ:

「・・・バカにしてます?」


ダフネル:

「まさか。

これ以上ない程ホメておるわ。

馬鹿にしてるように感じるのは、貴様の心に(やま)しい部分があるからではないか?」


ユキ:

「あー、拳がダフネルの方に吸い込まれるぅ~。」


ユキはわざとらしく棒読みで そう言うと、ダフネルの腹に拳をグリグリした。


ダフネル:

「おい、ちょっと・・・止めろ。

グフ・・・グハハハハハ!」


ミランダ:

「ユキちゃんって、本当にダフネルさんと仲良いんだねぇ~。」


ビント:

「ホント、ダフネルさんが笑ってるところなんて初めて見たかもね。」


気絶しているダンが放置されながら、奇妙で和やかな空気が暫く続く。


ダフネル:

「さて・・・店の設備の弁償の話なのだが。」


ユキ:

「私は払いませんよ。」


ダフネルが金の話を出した途端、ユキはピシャリと突っぱねる。


ダフネル:

「隊長は貴様なのだから、やはり部下の失態は補填すべきなのではないか?」


ユキ:

「私が あの雑魚を叩きのめしたのは、私が隊長になる前です。

だから、弁償の話は雑魚にして下さい。」


ダフネル:

「貴様以外に請求するのは気が引けるのだ。

さぁ、早く出せ。」


ユキ:

「嫌です。

今回も諦めて下さい。」


ダフネル:

「ちっ、守銭奴が。」


ユキ:

「それは お互い様でしょう?

用事は終えたので、私は出ますね?」


ダフネル:

「あぁ、待て。

渡すものがある。」


そう言うと、ダフネルは店の奥に飛び込んでいく。


そして直ぐに戻ってきた。


ダフネル:

「これを持って行くが良い。

祝いの品だ。」


ダフネルが持ってきたのは鉄で出来た籠手(こて)だった。


しかしそれは通常の籠手とは違い、甲虫の甲殻(こうかく)のように丸みを帯びている。


それはおおよそ、殴ることに特化した籠手のようだった。


挿絵(By みてみん)


・装飾品:鉄の格闘籠手

->効果:殴打系戦技のダメージ1.5倍


ユキ:

「おぉ・・・まさかダフネルから祝いの品とは・・・。

明日は大雪ですね。」


ダフネル:

「やめろ、気持ち悪い。

儂からでは無い。

貴様の師のエディから、前々から注文を受けていたのだ。」


ユキ:

「それこそ明日は槍が降るじゃないですか。」


ダフネル:

「うむ。

儂も まさかエディに 師としての情があるとは思っておらんかった。

それだけ貴様に期待しておるということだろう。

励めよ。」


ユキ:

「まぁ、私は凄いですからね。

試しに付けてみますか。」


ユキは”鉄の格闘籠手”を装備した。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

<装備>

・主兵装:格闘

・副兵装:針葉樹の弓

・防具:亜竜の鱗鎧

->装甲:+4

・外套:羽毛の外套

->耐性:凍傷・霜焼け

・装飾品:黄金玉の髪飾り

・装飾品:鉄の格闘籠手

->効果:殴打系戦技のダメージ1.5倍

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


”鉄の格闘籠手”を装備したユキは試しにニギニギする。


ユキ:

「うん。

良い調子ですね。」


ダフネル:

「ふむ、問題無さそうだな。

ならば用は無い、去れ。」


ユキ:

「えぇ、それでは。」


ユキは部下の方に向き直る。


部下達は暇そうに座り込んでいた。


ユキ:

「この中で一番 (ちから)のある者は?」


ミランダ:

「は~い、アタシぃ~。」


手を上げたのは紅一点のミランダだった。


確かに他の部下に比べて体格が一回り大きい。


ユキ:

「よし、ではあの雑魚を運んで下さい。

少し遠いですが、大丈夫ですか?」


ミランダ:

「ん~、多分大丈夫~。」


ミランダは そう言うと、気絶しているダンを肩に背負った。


その体幹に不安は見られない。


ユキ:

「ではエディの孤児院まで行きます。

付いてきて下さい。」


部下達はユキの後に続いた。


──────


<ユキの手帳>

・雪グマ(魔物)


挿絵(By みてみん)


 森や迷宮、果てには洞窟にも出没する厄介者。

 シンプルに強いから、下手な魔物に遭遇するより面白い。

 肉はクセこそあるけど、(あぶら)の質が良いので調理次第では美味しく食べられる。

 オススメはステーキかハンバーグ。

 とにかく焼くと良い。


「追記」

 この魔物を”鉱脈神の迷宮”に配置した黒幕ティアの判断は、あながち間違いじゃないと思う。

 正直、魔物としての完成形の一つだと思うから、下手な魔物を用意するより、脳死で雪グマの物量攻めをした方が強そうな気がする。

 ただ、この魔物は群れないので、連携がとれないのが弱点。

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