七十八話 三匹一組でも
リトルキラーマンティス二匹を一気に倒せることが判明したので、俺は深層域のモンスターが三匹一組で現れる区域へと進むことにした。
二匹一組の区域よりも探索者が来ないのか、早速モンスターと出くわした。
リトルキラーマンティス、ホブゴブリン、ミドルゴーレムが一匹ずつの組み合わせだ。
モンスターたちの隊列は、ミドルゴーレムが前、ホブゴブリンが真ん中、リトルキラーマンティスが後ろ。
差し詰め、ミドルゴーレムがタンク役、ホブゴブリンがアタッカー役、リトルキラーマンティスが遊撃役といったところだろう。
俺がメイスを構えながら近づくと、ミドルゴーレムが更に前に出てくる。
ミドルゴーレムが俺を押し止めている間に、他の二匹が別方向から襲ってくる気だろうな。
俺はそんな戦法に付き合う気はないので、速攻でミドルゴーレムを排除することを決める。
確かにミドルゴーレムは、石の身体を持っていて防御力が高い。
しかし人間大かつ人型をしているため、弱点は分かりやすい。
「膝関節、もらったああッ!」
メイスを大スイングさせて、ミドルゴーレムが右足を前に踏み出した瞬間に合わせて、その右膝へとブチ当てる。
メイスのヘッド部の十字架の端がミドルゴーレムの右膝に入り込み、バキリと膝関節を担っていた石が砕けた。
ミドルゴーレムは片足が動かなくなり、転倒。
これが一対一の状況なら、ミドルゴーレムの後頭部にメイスを叩き込めば終了なんだけど、未だモンスターは他に二匹いる。
俺は未だ生きているミドルゴーレムから離れるように、大きく後ろに跳んで距離を取る。
するとホブゴブリンが、前衛を代わるように前にでてきた。
ホブゴブリンは棍棒持ちかつ、戦闘技術がある。一撃で倒すのには向かない相手だ。
とりあえず俺は、ホブゴブリンの棍棒を持つ手を狙って、メイスを振るっていく。
するとホブゴブリンは、唯一の武器を失いたくない様子で、必死に棍棒でメイスの攻撃を防御する。
そうしてメイスと棍棒が何度かぶつかり合ったところで、ホブゴブリンの頭を飛び越す影が現れる。目だけ上に向けて確認すると、リトルキラーマンティスが昆虫特有の薄羽根を広げて飛翔していた。
上からの奇襲とは、やるものだ。
そんな感想を抱きつつ、俺はホブゴブリンの棍棒をメイスで押さえつけたあとで柄から片手を離し、その手でホブゴブリンの棍棒を掴む。そして棍棒を力強く引っ張った。
ホブゴブリンは棍棒を取られまいと踏ん張ってくれたので、俺の体の方がホブゴブリンの近くに移動する。
これは、俺とホブゴブリンの距離が近づけることで、リトルキラーマンティスの攻撃を失敗させようという懇談だ。
しかしリトルキラーマンティスは、ホブゴブリンのことなど知ったことかとばかりに、両手の鎌を振るってきた。
俺はリトルキラーマンティスの行動に驚きつつ、ホブゴブリンの腹を蹴りつつ、蹴った反動を利用して後ろへと移動する。
俺の眼前をリトルキラーマンティスの鎌の片方が通り抜け、ホブゴブリンの身体にもう片方の鎌がぶつかった。
「同士討ちなんて、馬鹿な真似して」
思わず俺が言葉を零してしまったのは、リトルキラーマンティスの鎌の一撃が、ホブゴブリンの右肩に入り、その肩関節が壊れる音がしたからだった。
これでホブゴブリンは、棍棒を左手一本で扱うしかなく、棍棒の威力が減退するのは目に見えている。
そして相手側で無事なのは、リトルキラーマンティスだけ。
リトルキラーマンティスさえ倒せてしまえば、後は消化試合だ。
そしてリトルキラーマンティスは、自分の失態を挽回するためか、他のモンスターとの連係を捨てるように突撃してくる。
鎌を振り上げながら、節足を全力で動かしての突進。
しかしハッキリ言って、突進ボアや猛牛の突撃より速度と迫力がないため、全然怖くない。
それどころか、移動スピードが一定なので、攻撃のタイミングを図るのが容易だ。
「先に倒してくれってことなら!」
俺はタイミングを図ってメイスを力の限りに振るい、リトルキラーマンティスの頭を上から叩き潰した。
リトルキラーマンティスが薄黒い煙と化したのを確認してから、俺はその煙を踏み越えてホブゴブリンに近づく。
ホブゴブリンが片手で棍棒を振るってきたので、俺はスエーバックで攻撃を避けてからメイスを叩き込んだ。
メイスの十字架ヘッドがホブゴブリンの側頭部に叩き込まれ、ホブゴブリンも薄黒い煙と変わった。
「さて、最後はミドルゴーレムだ」
当のミドルゴーレムは、地面に両手と無事な方の片足をついて、どうにか攻撃態勢を取ろうとしている。
しかしその姿は、頭を下げて許しを求めているようにしか見えない。
なら慈悲の一撃だと、メイスでミドルゴーレムの後頭部を破壊する。
こうして、三匹一組のモンスターたちを全滅させることに成功した。
ドロップ品を回収していると、一つレアドロップ品が出ていた。
それはリトルキラーマンティスのレアドロップで、リトルキラーマンティスの顔を模したお面だ。
成人の顔をすっぽりと覆える大きさで、一センチメートルぐらいの厚みのあるお面だ。そして発泡スチロールのように軽いのに、叩いてみると硬化プラスチックよりも硬い感触がある。
かなり不思議な素材だが、もしかしたらキラーマンティスの外骨格の殻を使用しているのかもしれないな。
「複眼の部分は透明で、ちゃんと視線が通るようになっているんだな」
お面を顔に当ててみながら、これはバイザーの代わりになるんじゃないかと思ってしまう。
俺の装備の中で唯一バイザーだけが市販の量産品で、ダンジョンの中でだと防御力が皆無。
だから、代替品を見つけたら取り換えようと思っていたところだったんだ。
「革の全身ジャケットに、革手袋と革ブーツ。そして昆虫を模したお面。この姿はもう、完璧にニチアサ特撮なんだよなぁ」
俺はどうしたものかと考えるが、バイザーの代替品としては満点の材料だ。
とりあえず、ヘルメットを改造する道具が手元にないので、このお面は次元収納に仕舞うことにした。




