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七十話 技量成長中

 魔槌は扱いが難しい武器だということが判明した。

 二十回振り回すと超威力の爆発がヘッドに起こる特殊効果がある。しかし、それは二十回振ってしまうと必ず爆発を起こす、ということでもある。

 モンスターと一対一のときなら、その二十回を数えるのは容易いことだろう。

 しかしモンスターと多対一の状況だったら、数を数えている暇なんてない。

 もし戦闘中の変なタイミングで魔槌のヘッドが爆発したら、俺が一気に窮地に陥ることにもつながりかねない。


「使用する俺自身は爆発の威力を受けない機能がついているみたいだけど、それも確実じゃないしな」


 爆発自体は食らわなくても、爆発によって噴き取んだ何かが俺の体に当たって大ダメージなんてことがあり得そうだしね。

 ともあれ、魔槌は常用するタイプの武器じゃない。

 なので俺は、今まで通りにメイスを主武器に使ってモンスターと戦い続けることが決まった。


 

 戦槌が魔槌に進化した後も、俺は第四階層の中層域のモンスターと一対一の戦いに明け暮れている。

 徐々に戦い慣れてはきていて、それぞれのモンスターの効率的な倒し方も考案できている。

 ハニワは盾と鎧の防御力が高いが、機動力は遅い。俺がハニワの周囲を回るように走ると、ハニワは追従してその場で旋回するが時間と共に遅れが出始め、やがて背後を突けるようになる。

 猛牛は、顔に布か革を被せて視界を奪う方法もありだが、避けつつ突撃方向を誘導してダンジョンの壁に衝突させる方が一番良い。なにせダンジョンの床や壁はもの凄く硬いため、猛牛が壁に突撃すると、猛牛の頭に大ダメージが入って失神してしまうんだから。

 小鬼は、小鬼の打撃を体に受けることを覚悟し、その頭にメイスを叩き込む相打ち戦法が一番早く決着できる。怖気づいてメイスを振るう威力が下がると、一撃じゃ沈めきれないので、思い切りが必要なのが難点だ。

 そんな確殺戦法を身に着けられたが、これはモンスターが二匹現れる場所では使えないことも判明している。

 ハニワの周りを走り回るのは、他のモンスターがいてはやり難い。

 猛牛をダンジョンの壁に誘導するのだって、他のモンスターと戦いながらだと難しい。

 小鬼の倒し方は二匹のところでも通用するだろうが、相打ち戦法の直後は、殴られた衝撃から咄嗟の身動きが取れなくなってしまう。そこを他のモンスターに突かれたら、大怪我を負うことに繋がりかねない。

 だかれ俺は、確殺戦法を使いつつも、その戦法に頼らずに地力で倒せるよう、一対一の戦いで戦闘技能を詰んでいっている。



 じっくりと二週間の熟達期間を儲けたお陰で、中層域のモンスターと確殺戦法を使わずに一対一で戦っても打倒可能な領域まで、俺の地力が育った。

 二週間というと、かなり早く成長できたと思われるかもしれない。

 だが、命のやり取りをする戦闘を日に何度もやれば、誰だってこのぐらいの成長はする。

 むしろ俺の成長具合は、他の探索者と比べたら、遅々としたものだろうな。

 なにせ、第四階層を稼ぎの中心としていたパーティーの何組かが、五階層から先へと活動場所を変更しているのを知っている。つまり彼らは日々の戦闘で技能を向上させ、より強いモンスターが出てくる場所でも活動できるほどの地力を身に着けたということ。

 加えて、俺よりも後に第四階層に入ってきた探索者パーティーのうち一組は、中層域を突破して深層域に稼ぎ場所を移している。

 そんな探索者と比較したら、俺の成長具合は遅いという評価になる。

 この成長の差は、恐らくスキルの差だ。

 初期スキルを選ぶ際に、多くの探索者は身体強化スキルを選ぶ。

 そして身体強化スキルがレベルアップすれば、それだけでモンスターを圧倒できる膂力が手に入ってしまう。

 身体強化スキルを持っていない俺でも、素の肉体でモンスターと戦えているぐらいだ。レベルアップした身体強化スキルを持っていれば、それこそ赤子の手を捻るような簡単さで、モンスターを倒せるようになるに違いない。

 そうしたダンジョン序盤の戦闘アドバンテージが確保できるからこそ、既存チャートでは初期スキルに身体強化スキルを選ぶことを強く勧められているわけだしな。

 もっと言えば、ダンジョンの五階層までで金を稼ぐことを目的とするのなら、初期スキルに身体強化スキルを選ぶことが最上だ。

 しかし逆に、ダンジョンの奥の奥まで進もうとするのなら、身体強化スキルではダメなことも確かだ。

 なにせ現在のダンジョン攻略の最前線では、身体強化スキルの成長が滞って、階層を先に進めなくなっていると噂があるのだから。

 ともあれ、俺は序盤のアドバンテージを捨ててでも、後々の成長に繋がるだろうと思って、初期スキルに次元収納スキルを選んだ。その選択が間違いではないことは、俺以外の者からの取得情報がないスキル――治癒方術スキルを入手できたことからも確かだ。


「つまりは、ここが頑張りどころってわけだ」


 俺は疲れた身体に治癒方術のリフレッシュをかけてから、第四階層中層域にて二匹一組でモンスターが出る区域を進む。先ほど倒した、小鬼と猛牛のドロップ品を次元収納に入れながら。


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― 新着の感想 ―
[一言] 大器晩成型になるためにも今はじっくりと鍛えないとですねー
[良い点] いいねいいねー と書き込んでおくテスト。 [一言] いつも楽しませていただいているので、 たまにはと書き込んでみました。
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