四十六話 大量売却
中層域のモンスターに戦い慣れてくれば、それだけモンスターの数も倒せるようになる。
その倒した分だけ、モンスタードロップ品も多く出て、確率的にレアドロップ品も多く手に入るようになる。
そんな好循環が起きるので、夕方から夜になりそうな時間帯に東京ダンジョンから出る頃になると、次元収納から出したリアカーの荷台には数多くのドロップ品が積み込まれることになる。
自分の防具に使う分のレッサーオーク革とワイルドドッグ毛革は残し、それ以外の全てをリアカーの荷台に。
今日はスケルトンランサーと出くわすことが多かったので、骨槍が三本も手に入った。その骨槍が荷台から突き出ているので、傍目だとなかなかに目立つ。
俺はリアカーを引きながら、第三階層の出口用の黒い渦に入り、東京ダンジョンの外へ。
無事に旧皇居外苑に戻ってきたので、ドロップ品を売却するために役所へ。
荷台から突き出た骨槍が目立つようで、今から東京ダンジョンに入ろうとしている探索者たちの待機列から視線が来ている。
俺はイキリ探索者を装い、自分の成果を誇るように、胸を張って役者へ。
バリアフリーの通路をリアカーと共に通り、役所内の買い取り窓口へ。
リアカーからドロップ品を次々と出して乗せていくと、職員がニッコリと微笑んできた。
「今日もドロップ品が大量ですね。これだけ持ち込まれる方、珍しいんで助かります」
第三階層は、ライト層が足を踏み入れるには厳しい場所であり、ダンジョン攻略やダンジョンで稼ぐガチ勢には旨味の少ない場所。
そのため、ドロップ品が持ち込まれることが少ないらしい。
だが中層域で手に入るドロップ品の、レッサーオーク革とボーンアクセサリーは、特定の方面から需要が高い。
しかし入荷が少ないので、その方面から催促でせっつかれていた状況だったそうだ。
そこに次元収納スキル持ちの俺が、単独行とは思えないほどに大量のドロップ品を持ち込んでくれるようになった。
それが、役所としては有り難いらしい。
そういった事情を職員が語ったのは、俺にもっとドロップ品を持ってこいという意思表示なんだろう。
俺の本心としては、自分のためにやっていることなので、そっちの事情なんて知ったことではない。
しかし偽っているイキリ探索者として考えるのなら、ここは調子に乗っておく場面だろうと判断した。
「おうよ。有り難がってくれていいんだぜ。まだしばらくは、これで稼がせてもらうだろうしな! だから買い取り額には色を付けて欲しいだけどよお?」
「残念ながら、規定料金でのお取引になります。お嫌でしたら、ご自身で販売路を確保して頂くしか」
「ええー、いいじゃんかよ。少しオマケしてくれたってよお。ダメ? 本当に? ちぇー。他に売り込みに行くなんて勘弁だし、ここで売ってやるよ、仕方ねえなあ!」
自分勝手な論理を展開しつつ、職員が足し出してきた整理番号を奪うようにして手にいれる。
そしてリアカーを引きつつ、売却代金を受け取るための窓口近くのソファーに座る。
スマホでネット小説を漁っている間に、整理券の番号が呼ばれ、整理券と引き換えに売却代金を受け取る。
今回は、約六十万円。骨槍が一本十万円の買い取りで、収入が跳ねた感じだ。骨槍がないと、一日で二十万円ぐらいが平均だ。怪我を負いながら戦って、大量にドロップ品を売って二十万円は、報酬として多いのか少ないのか。少ないと感じる人が多いからこそ、納入する人が少ないんだろうな。
ちなみに、この骨槍は攻略の最前線でだと投げ槍に使っているらしく、納入後は直ぐに売れてしまうという。某インターネット掲示板のダンジョン攻略スレッドにも、俺が骨槍を売り始めた頃から、骨槍の数が確保できて遠距離攻撃手段が増えたことを喜ぶ書き込みが散見されるようになったぐらいだしな。
そんなに骨槍が欲しかったのなら、自分で取りに行けばいいのにと、俺はつい思ってしまう。
でも前線組ともなると、最前線で倒したモンスターのドロップ品を売って、その金で骨槍を買った方が、時間と費用の効率がいいんだろうな。きっと。
俺もさっさと最前線で戦える実力が欲しいと願いつつ、六十万円の収入を手にする。
その後、リアカーを持って東京ダンジョンに入り直し、次元収納にリアカーを入れてから、売らずに残していたレッサーオークの肉をバッグの中に入れ、旧皇居外苑へ舞い戻る。
この十キログラムほどの肉の使い道は、今日の夕食に三百グラムを肉野菜炒めに使い、五キロほどを煮豚にし、残りはスライスや角切りにしてから冷凍庫への予定。
これでしばらく、食事で肉に困ることはないだろう。
帰宅中にスーパーに寄り、カット野菜と煮豚と一緒に着けるための卵を購入し、足取り軽く自宅へと帰っていった。




