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二十五話 再び第二階層

 今日も今日とて、東京ダンジョンへ。

 モンスタードロップ品で作った飯を食ってみて、いまモンスターと戦ってみたところだけれど、食べると強くなるという都市伝説的な効果は実感できなかった。


「鰯の頭も信心からっていうし、食費も助かるから、食べ物がドロップしたら積極的に食べるようにはしよう」


 第二階層の、湧き水のある小部屋に続く道で、検証のための戦いを終えて、さてどうするかと考える。

 この場所に出るモンスターは、魔具のメイスで一撃で倒せてしまえる。つまり苦戦する様な相手ではないから、戦闘訓練の相手としても魅力がない。

 小部屋にある湧き水――薬水を定期的に摂取すると身体能力に変化があるかが気になるところだけど、それを取りに小部屋に行くには、この道はモンスターと出くわす頻度が高過ぎる。

 事前に建てていたオリジナルチャートに従うのなら、二階層の奥へと行くべきだろう。

 新発見の要素である湧き水を利用するのなら、通路を先に進むべきだろう。

 湧き水の効果は判明してないし、職員から聞いた話じゃ、これから先の場所でも汲むところはありそうだ。

 それならチャートを進めるために、二階層の奥に行くべきだろう。

 そう決めて来た道を引き返そうとしたところで、この道に入ってきた他の探索者と出くわした。

 数は三人。年齢は俺と同程度の二十代。三人とも得物は日本刀。刀は、樋も入っていない、恐らくは機械打ちの量産品。服は、手縫製の服の中では安価で手に入りやすい、剣道着。

 その姿から、明らかに既存の攻略チャートに従っている、ライト層の探索者だと分かる。

 俺が警戒しながら見ていると、向こう側も俺を見つけて三人で内緒話をし始める。


「なあ、あの人って」

「ああ、そうだよな」

「じゃあ、聞いてみるか?」


 コソコソと相談しているので、対応を待っても良いんだが、しかし俺は他の探索者がいる場所ではイキリ探索者を装うと決めている。

 だから、内緒話に腹を立てた様子を演じることにした。


「おい! なにか俺に用事があんのか!?」


 大声で呼びかけると、三人組はビクッと反応してから愛想笑いを浮かべてきた。


「ええと、その。この道の先に、湧き水のある小部屋があるって、本当ですか?」

「小部屋ぁ? ああ、あるが、それが何だってんだ! 湧き水が普通の水だって知らなかった、俺を笑う気かああん?!」


 苛立ってますよと分かる演技で問いかけると、三人組は慌てて手を横振りして否定の意を示してきた。


「そ、そうじゃないんです。ただ、俺たち、その小部屋に行こうとしていて」

「二階層の浅い場所で、モンスター狩りを主にしているんで、拠点にしようって」

「湧き水のある小部屋は、モンスターが入ってこれないから、しばらく籠って戦って稼ごうって」


 口々に事情を話してくれたので、俺も苛立った演技を止める。そして今度は、馴れ馴れしい態度で接する演技をする。


「なんだよ、そういう事なら早く言ってくれなきゃよお。それで湧き水のある小部屋だよな。ああ、あるぜ。この道の先だ。突き当りの袋小路だから、辿り着けば直ぐに分かる」

「そ、そうなんですか」

「ああ、そうそう。この道、モンスターの湧きが多いようだから、連戦が多くて疲れるんだぜ。ま、モンスターを倒し回って稼ぐには、丁度いいんじゃね?」

「情報、ありがとうございます」

「いいってことよ。それじゃあ、ガンバレな。俺はもう、この道に用はなくなったしな」


 俺は、調子づいた演技をしながら、三人組と分かれる。この三人があの小部屋を使うというのなら、あそこまで行くというプランは自動消滅だ。なにせ俺は、他の探索者と関わり合いを持つ気がないんだからな

 そう考えながら歩いていき、ふと振り返ると、三人組は俺の態度がコロコロと変わることが不思議な様子で、その場に立ち止まったままだった。




 俺は第二階層の最初の分かれ道で別の道を選択肢て進み直し、中層域に差し掛かった。

 そして新たなモンスターと出くわす。


「レッサーじゃない、ゴブリンだな」


 現れたのは、緑色の肌を持つ、百二十センチメートルほどの背丈のゴブリン。

 レッサーと比べると、二回りぐらい大きい感じだな。

 そしれレッサーは素手だったが、ゴブリンは掌大の剣身がある短剣を持っていることも違いのようだ。


「ゴブリンには鎖骨があるだろうから、コボルドみたいな上下に振るだけの動きだけじゃないよな」


 俺が懸念していると、ゴブリンはその通りと教えるように短剣を振り回しながら近寄ってき始めた。

 天井に浮かぶ光を受け、ゴブリンの短剣の剣身がギラリと光る。

 その危険な輝きに、俺は思わず腰を引いてしまう。


「いや、待て待て。こっちの方が、武器のリーチは長いんだ。怖気づくな」


 俺は心を静めて、メイスを振り上げる。

 そしてゴブリンが間合いに入ったらメイスを振り下ろす事だけを意識する。

 俺が待ちの体勢でいると、ゴブリンは俺が怖気づいたと勘違いしたのか、顔中に笑みを浮かべながら更に近づいてくる。

 普通、敵が武器を振り上げていたら警戒するものだと思うが、どうやらゴブリンの思考回路では違うらしい。

 まあ、その思考回路のお陰で、俺は待っているだけで攻撃の機会が得られていいけどさ。


「せいいい!」


 俺は気合の言葉を吐きながら、メイスを力強く振り下ろす。ここまで何匹ものモンスターを叩き潰してきたんだ。メイスでの当て勘は確立出来ている。

 ゴブリンは、俺が攻撃してくるとは思っていなかったのか、急に驚いた顔をすると短剣を持っている方の腕で頭を防御した。

 その腕に、俺が振ったメイスが命中。腕の骨が砕ける感触が、メイスの柄を通して俺の手に伝わってきた。

 ゴブリンは腕が折れたことで、唯一の武器である短剣を落としてしまう。

 これはチャンスだと、俺はもう一度メイスを振り上げ、今度はゴブリンの頭の骨を粉砕した。

 この一撃が致命傷で、ゴブリンは薄黒い煙と化し、ドロップ品で紐のようなものを落とした。


「ふぅ。この紐は、ゴブリンのミサンガか」


 なんとなく腕に当ててみると、結ぶのにちょうどいい長さだから、ミサンガで間違いない。

 しかし単なるミサンガだから、大して値段がつかなさそうなドロップ品だ。


「第二階層では、レアドロップ品だと高く売れるんだったっけか」


 普通の探索者なら、通常ドロップ品は捨て置くと、調べた情報にはあった。

 しかし俺には、レベルアップした次元収納があり、容量には多くの余裕がある。

 塵も積もれば山となるというし、このミサンガは次元収納の中に確保しておこう。


「さて、次々と行こう」


 俺は、まだ見ぬモンスターを警戒しつつ、二階層の中層域を進んでいった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] そしれレッサーは素手だったが、 何かの誤入力かと思いますが、ヨクワカランです。 [一言] ダンジョンのごとく、誤字、誤変換、脱字を仕掛けてくる。 気が抜けませんな。
[一言] 21行目の3人冒険者と遭遇時の、「樋」これ、ひ?雨樋のとい? 何と誤字ったのかわからないけど意味が通じません。 銘?鞘? ダンジョンが出来てから2年くらい経過してましたっけ? その期間…
[良い点] ハルバードも使ってくれ
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