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二百二十五話 確認作業

 十五階層を越えて、十六階層へ。

 このまま十六階層を探索してもいいのだけど、俺以外に十五階層のエクスマキナを突破できていないので、急ぐ必要はないと判断した。

 俺は十六階層の白い渦に入り、東京ダンジョンの外へ。

 まだ日の高い時間帯だけど、今日はもう自宅に引き上げることにしよう。

 そう考えながら東京駅に向かって歩こうとして、ダンジョンに入るための待機列にいる探索者の目が俺に集中していることに気付いた。

 どうしてなのかと観察して、彼ら彼女らの視線が俺の身体全体に向けられていることに気付く。

 どういうことかと自分の身体を見下ろして、納得した。


「焦げ焦げだな」


 エクスマキナとの戦いで、赤熱化した大剣を避ける際と水の矢と雷の矢を使った自爆技を行ったことで、俺が着ている革の全身ジャケットの至る部分が焦げて黒くなっていた。

 特に電気が通ったと思わしき部分は、枯れ木を焦げ跡で表現したのかと言いたくなるような、特徴的な模様になっている。

 見た目からして激戦の後だと分かる姿をしていれば、注目を集めても仕方がないな。

 そして、いま俺が取るべき態度も理解した。

 俺は、モンスターに敗北したイキリ探索者っぽく見えるように、無理して平静を装ってますよって感じの態度で、待機列の前を横切っていく。

 待機列の人達はコソコソと、俺がモンスターから逃げ帰ってきたんだろうって噂をしている。

 あの人達の中に、俺が十五階層にいっていることを知っている人は少ないだろう。

 でも俺が逃げ帰ってきたって噂は、俺が十五階層へ向かったと知っている十四階層に屯している探索者たちに届くはずだ。

 その噂を聞けば、十四階層の探索者たちは考えもしないはずだ。俺が十五階層を突破したなんてことは。

 そして突破者が居ないと誤解したままで居てくれるのなら、彼らは十五階層へと無理に挑んだりしようとせず、今までと同じで実力を伸ばそうとし続けるだろう。

 そうなれば、俺が十六階層から先の場所で、不老長寿の秘薬の存在確認を誰の邪魔をされることなく行うことができる。


「それでも、長々と隠し続けることはできないだろうけどな」

 

 俺が十六階層から先を活動場所にしたら、俺がダンジョンに入っているはずなのに何処にも見かけてないと噂になるはずだ。

 その噂が立った段階で、俺が十五階層を突破したと看破されることになるだろう。

 その未来が訪れたら、十四階層で足踏みしている探索者たちは、急いで十五階層を突破しようとするはずだからな。

 まあ、その時期が来るまで、俺は先に行っている優位性を活かして、不老長寿の秘薬を探し回るだけだけどな。



 エクスマキナを倒した翌日、俺は東京ダンジョンの出入口から十一階層に入った。

 今日の目的は、新しく入手したスキル――傀儡操術の使い勝手の調査だ。

 傀儡操術の効果対象は、無生物系のモンスター。

 十一階層から十四階層までのモンスターだと、第十一階層のガードゴーレムと半壊ロボット、十三階層の弓マネキンとバウンドボール、十四階層のアタックゴーレムが該当するはずだ。

 そう言えばアンデット系モンスターは、無生物系のモンスターに区分されるんだろうか。

 その確認もしないとだな。

 そんな予定を考えながら通路を進んでいき、十一階層の順路上でガードゴーレムと相対した。

 周囲に人影はない。空間魔法スキルの空間把握でも確認して間違いなく人は近くにいない。


「じゃあ早速。傀儡操術!」


 俺が左手を突き出してスキルを宣言すると、俺の手指の先から細い糸のようなモノが発射され、ガードゴーレムの身体にくっ付いた。

 ガードゴーレムは傀儡操術に抵抗するように、身体を捻ったり腕を振り回したりする。

 ガードゴーレムの行動を見ながら、俺は手指の先にある糸に触れようとする。しかし触れられない。どうやら魔力的な糸なようで、実体があるわけじゃないようだ。

 そんな確認をしている間に、ガードゴーレムは抵抗を止めて大人しくなっていた。


「これがモンスターを配下にできたって実感か」


 俺の手指から伸びる糸から、ガードゴーレムを自由に操れるっていう実感が伝わってきている。

 俺は、メタルマネキン人形を動かしたときと同じ要領で、ガードゴーレムを動かしてみた。

 するとガードゴーレムは、俺の意志通りに動き始めた。

 俺は操作を止め、ガードゴーレムを次元収納に入れる試みを行い、それは実現された。

 では逆にとガードゴーレムを次元収納から出そうとしたところ、ガードゴーレムに傀儡操術を使うか否かが選択できる感じがあった。

 俺は傀儡操術を使った状態で、ガードゴーレムを次元収納の外に出した。


「あとは、傀儡操術を止めたらどうなるかだな」


 俺は傀儡操術を止めると、俺の左手から伸びていた糸が消え、それと同時にガードゴーレムは薄黒い煙に変わって消えた。ドロップ品は何も落とさなかった。


「なるほど。傀儡操術をかけられたモンスターは、撃破扱いなんだな。ドロップ品を落とさないのは、傀儡操術を悪用した金稼ぎができないようにしたんだろうな」


 無生物系限定とはいえ、傀儡操術で操ったモンスターは、スキルを止めれば撃破扱いになって消える。

 これは、傀儡操術でモンスターを操った直後にスキル使用を止めれば、簡単にモンスターを倒すことが出来るってことでもある。

 もし、この方法で倒したモンスターからドロップ品が出たら、ロクに戦いもせずに簡単にドロップ品を乱獲できてしまうことになる。

 そんな楽な方法を許すほど、ダンジョンは甘くないってわけだ。


「検証を続けよう」


 無生物系のモンスターに出会う度に、俺は傀儡操術の使い勝手を試していった。

 結果、いまの俺が操れるのは一体までだけど、スキルがレベルアップすれば複数体を操れそうな間隔があると分かった。

 他には、操ったモンスターで他のモンスターを倒したらそのモンスターからはドロップ品が出たし、アンデッド系には傀儡操術が使えないことも分かった。


「となると、傀儡操術で暫定的に仲間にするべきなのは、弓マネキンかアタックゴーレムかだな」


 弓マネキンは遠距離攻撃が可能で、俺の援護役として適任だ。

 アタックゴーレムは、俺と肩を並べて戦える。

 しかしどちらにも、欠点が存在する。

 弓マネキンが初期に所持している矢には限りがあるので、俺が弓矢を補充する必要がある。

 アタックゴーレムは長時間戦闘稼働させると、ある時点から急にパワーダウンを引き起こす。時間を置けばパワーは復活するけど、戦闘時間に気を配る必要がある。


「無生物系のモンスターといえば、十五階層のエクスマキナも該当するけど」


 一応、後で試してはみる気でいるけど、流石に中ボスは仲間にできないだろうな。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 傀儡化が完了するまでの最中に攻撃して倒したらドロップする?
[気になる点] 技術かスキルが発展すれば 傀儡操術で支配したモンスターのエンジンや装甲を 組み換えることは出来るのだろうか? 出来る場合、破壊との境界が気になる。 スキルレベル1で一般のモンスター…
[良い点] スキルが具体的 [気になる点] エクスマキナ [一言] 合体?
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