二百二十一話 ドロップ品集め
俺はフレッシュゾンビのレアドロップ品を集めるため、十三階層中層域の奥深くへとやってきた。
十四階層とは違い、十三階層には探索者の姿は殆どない。
だから、俺は遠慮なく治癒方術を使い倒す勢いで使用していく。
「エリアヒール!」
六匹一組のモンスターに突っ込んでいき、治癒方術の範囲回復(攻撃)でモンスターたちを一網打尽にしていく。
十三階層中層域のモンスターは、重騎士スケルトン、機械化グール、フレッシュゾンビと、見事にアンデッド系ばかり。
だからエリアヒールでバッタバッタと倒していける。
時折、機械化グールが生き残ったりするけど、その際は戦槌で小突けば倒せるぐらいに弱体化するので問題ない。
どうして機械化グールが残るかは、たぶん機械化している身体の部位のお陰なんだろうと思う。
機械化グールは、頭部を破壊しても、急腹部の中に埋め込まれた機械を破壊しないと死ななかった。
そして、エリアヒールでグールの肉体にダメージは与えられるけど、機械部分には一切のダメージは与えられない。
それらを複合して考えると、エリアヒールによる身体の損傷が致命傷の域に達しなければ、機械部分は稼働を継続しているので生き残れてしまうんだろうな。
「なんにせよ、楽に倒せることはいいことだ。エリアヒール!」
六匹一組で来るアンデッド系モンスターたちを、範囲回復で倒しまくり続ける。
ドロップ品がどんどん集まっていくが、狙いのフレッシュゾンビの魔石矢はなかなか集まらない。
レアドロップ品だから出現率の低さは仕方がないけど、ここのモンスターの通常ドロップ品は余り旨くないんだよなあ。
「馬の装具や弩が沢山あってもなあ。機械化グールのドロップ品だって、キャンプ用品ぽいのがランダムだし」
どれも高値のつかないものばかりなので、換金目的をモチベーションを据えることはできない。
だから魔石矢を集めるためだけの、作業ゲーになりそうだ。
俺は覚悟を決めると、淡々と中層域を巡っていくことにした。
エリアヒール、回収、移動。エリアヒール、回収、移動。エリアヒール、回収、移動。
作業に集中する感じで、帰宅する時間までモンスターを狩り続けた。
「さてさて、魔石鏃の矢はどれぐらい集まったかな」
次元収納に意識を向けると、魔石矢の数は五本だった。
丸一日かけて目的のレアドロップ品が五つっていうのは、多いのか少ないのか。
通常ドロップ品の数を見ると、かなりの数があるから、多分少ないんじゃないかな。
「矢を集めるためとはいえ、ドロップ品を売るのも一苦労だよな」
俺は十三階層の出入口に戻ると、リアカーを出して、その荷台にドロップ品を載せていく。
一度で全部は載せられない量なので、嵩張る馬の装具だけを山積みにすることにした。
それでも、まだまだ次元収納の中には在庫が沢山ある。
「魔石矢を集め終わった次の日は、ドロップ品を売るだけの日を設けた方が良さそうな塩梅だな」
正直言って、一日中ダンジョンの中を駆けずり回った後に、ダンジョンと役所を何度も往復する気にならない。
とりあえず今日は、二往復ぐらいしたら終わりにしようと考えて、俺はダンジョンの外へと出た。
役所に大量の馬の装具を売り払った後、俺は自宅にて次元収納の中を検めていた。
目的は、機械化グールからのドロップ品を確認すること。
キャンプ道具っぽいものがランダムドロップなので、自宅で使えそうなものを確保していく。
「色々な形の包丁とナイフを一本ずつ、それらが収められそうな木製の包丁ラック。重たい蓋の鍋、そしてスキレット。長い足が畳めるテーブル。寝袋。毛足の長い小さい絨毯。ポシェット型の道具入れ。これらは残そう。小型暖炉とオイルランタンとスキットル、は興味は引かれるけど要らないよな」
焚火台、金属串、謎の複合調味料が入った瓶、パイプとタバコの葉が入った鞄、テント、燻製箱と木チップ、砥石も気にはなったが不必要な品だと判断した。
他にも色々なものが沢山あるが、俺が自宅に残そうと考えるほどのものじゃなかった。
「それじゃあ、早速使い心地を試してみるとしようかな」
テーブルの足を展開して台所に設置。料理台として使用する。
新たに入手した包丁で備蓄の野菜や肉を切り、それらの具材と少量の水とコンソメキューブを鍋に投入し、重たい蓋を閉めてからカセットコンロで温めていく。
重たい蓋のお陰で、具材の水分を鍋の中に閉じ込めたまま調理が出来るはずだ。
俺は使用した包丁を洗い、ステンレスっぽくないのでちゃんと水気を拭いてから、包丁ラックに収める。
そんな方付け作業の後、ニ十分ほど火にかけた鍋の蓋を開けると、くたくたに煮込まれた野菜と肉の鍋が出来上がっていた。
食べてみると味は大変に美味しくて、あっという間に中身が空になっていた。
機械化グールのドロップ品で、一層生活が豊かになったなと思いつつ、鉄鍋の洗い方をネット検索してから洗い物をすることにした。




