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百九十七話 第十三階層の中層域へ

 さあ、第十三階層の中層域だと、意気込んでダンジョンの中へ。

 外から第十一階層の出入口に出て、十三階層への順路を進んでいく。

 周囲に人影がないことを目視と空間魔法スキルの空間把握を使用して確認し、治癒方術のリジェネレイトを自身のかけて、さらに道を進んでいく。

 体力がついた上にリジェネレイトをかけているので、歩いているだけでは疲れようがない。

 だから移動時間短縮の狙いも含め、俺は自分の息が上がるほどの駆け足で移動することにした。

 最初はジョギング程度、それが平気だとわかったので長距離走の速さに。

 ここで初めて俺は、心肺機能もかなり鍛えられていることを自覚した。

 なにせ長距離走の速さで走っているのに、心臓が少し早めに鼓動しているだけで、息が切れてこない。

 それならと、少しずつ走る速さを上げていく。すると全速力より二段下ぐらいの力の入れ具合まで速度を上げたところで、息が切れ始めた。

 感覚的には、長く距離を走るためにセーブした走り方と、短距離でタイムを出そうとする全速力の、ちょうど真ん中あたりの強度の走りだ。


「長距離走る際の感覚は、身体が鍛えられる前のものだったんだ。今の俺の走りが、今の俺が長距離を走るのに適した走りってことだよな」


 そう結論付けて通路を走りつつ、通路の上にある罠を踏まないように気を付けながら移動し、モンスターと出くわしたら全速力で駆け寄って魔槌の餌食にしていった。

 そんな感じで移動して、十三階層の中層域に到着した。

 ここからは走らずに、慎重に移動していくことにする。


「さて中層域で初のモンスターは、なにかな」


 俺が魔槌を構えながら進んでいくと、通路の先にモンスター。

 その見た目は、この階層に至るまでに何度かみた、グールのもの。

 だがそのグールは、身体の何か所かに金属の板やパイプが組み込まれた姿をしていた。

 

「機械化グールか。あれはアンデッド系なのか、それとも機械系のモンスターなのか」


 そんな疑問を考えていると、機械化グールは背中から蒸気のようなものを噴出した。そして、それが戦闘の切り替え行動だったようで、こちらへと勢い良く走ってくる。

 俺が迎撃しようと身構えると、機械化グールの腕に組み込まれた機械から、刃がシャキンと伸び出てきた。


「格好良いギミックだな。だが無意味だな!」


 俺は魔槌を振るい、その刃が飛び出てきた機械化グールの腕を叩き潰した。

 魔槌の攻撃で腕の機械が壊れたことで、そこにあった刃も砕け散った。 

 これで機械化グールの攻撃手段を奪ったと思ったのだけど、そう甘くはなかった。

 機械化グールは口を大きく開ける。すると口内にシールドマシンの刃のような物があり、その口で噛みつこうとしてきた。

 もしも噛まれたら、噛まれた場所がズタズタになると直感し、俺は拳で機械化グールの横っ面を殴りつけることで、噛みつきを阻止した。


「身体の表面だけじゃなくて、体内も機械化してあるのかよ!」


 俺は苦情を言いながら、魔槌で機械化グールの頭部を殴りつけた。

 手に伝わってきた感触は、柔らかい肉の下に金属の硬さが伺えるもの。

 しかし、精密機械を下手に殴ると誤作動を起こすように、魔槌で殴られた衝撃で機械化グールの動きが一瞬止まった。

 その隙に、俺は一度距離を取ってから、魔槌を大きく振り回す。そして再稼働した機械化グールの頭に叩きつけた。

 首の骨が――いや、首の骨を置換した金属が軋み曲がる音がして、機械化グールは頭を傾けたままの状態になる。

 グールが相手なら、これで致命傷になる。

 しかし機械化グールは、頭部が急所ではなかったようで、首が曲がった状態で俺を攻撃しようとしてくる。


「弱点に見えた部分が実は弱点ではないってのは、ロボット物アニメのお約束だけどさあ!」


 ここでそれを踏襲する必要はないだろうと非難しながら、俺は機械化グールの何処を殴るかを考える。

 頭以外で弱点として有り得そうなのは、胸――いや、心臓が弱点のままにはしておかないだろう。


「弱点ではなさそうなところが弱点とするなら、狙うは腹だ!」


 俺は魔槌を思いっきり旋回させると、機械化グールの腹を殴りつけた。

 人間体の腹部というのは、骨がないので柔らかいものだ。

 しかし機械化グールの腹には、まるで丸い石を詰めているんじゃないかという、硬い感触があった。

 そして魔槌からは、その硬い感触を砕いた感触も伝わってきた。

 その直後、機械化グールは薄黒い煙に変わった。

 どうやら腹部に収められな何かが、機械化グールの弱点だったようだ。


「ドロップ品は、畳まれたテントかな?」


 丸められた状態でひもで縛られた緑色の布と、竿のようにしなる金属の棒が数本と小さめの杭が数本。どこからどう見ても、テントにしか見えない。


「機械化グールのドロップ品は、探索者向けの道具がランダムで出るんだったっけか。それにしても、テントかぁ……」


 某RPGゲームのように使うと負傷や状態異常を含めて全回復、なんて効果があれば使うんだけど。


「いや、例えその機能があっても、俺は要らないな」


 治癒方術を使えば解決なので、やっぱりテントを使う意味はないな。役所の買い取り窓口行きだな。

 テントを次元収納に入れると、中層域の奥を目指しつつ、次のモンスターを探して歩く。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 日記を読んでるみたいでワクワクがない
[一言] 機械化グールとは随分とファンタジーからSF気味な敵が出てきたもんで 魔法も機械もあるような文明が元なのかダンジョンの中で技術融合した物かどっちやろなあ
[一言] あれ?走っているけど、この辺りは罠はないのかな?それとも空間魔法で瞬時に把握できてる?
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