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百六十三話 オーガ戦士と再戦

 三日かけて、岩珍工房に納品するドロップ品の革を集めた。

 頑張ったおかげで、ホームセンターで買える段ボール箱の最大のものにオーク革とオオアルマジロ硬革を満杯に詰めて、それを十箱も送ることが出来た。

 あれだけの量あれば、しばらく革には困らないことだろう。

 革を集めた分だけ、俺はモンスターと戦うことになったのだけど、そのお陰で魔槌の扱い方も習熟した。

 どの程度使えるようになったかを確かめるため、俺は第六階層から十階層へと順繰りにモンスターと戦いながら進むことにした。

 その道の最終地点である、第十階層へ行くための階段に作られた待機列をへて、第十階層のオーガ戦士に挑む。

 オーガ戦士は、俺がオーガ戦士の頭骨兜を被っていることを見るや、以前と違って様子見せずに攻め込んできた。それも、闘技場に追加で現れた赤鬼と一緒に攻めてきたのだ。


「熱烈歓迎ありがとう、だなッ!」


 俺は魔槌を振るい、赤鬼の頭を粉砕する。攻撃力という点では、魔槌もメイスも変わらないので、使い心地に慣れさえすれば、赤鬼を瞬殺するぐらいわけないのだ。

 味方が倒されたことに、オーガ戦士は怒ったような様子を見せて、俺に攻撃してくる。

 今更ながらに気付いたが、オーガ戦士の得物は、以前戦ったときの二つの剣ではなく、某漫画の鉄塊の剣に似た大剣一本だった。


「挑む度に武器が違うのか。探索者を阻む壁って評価なのも納得だな」


 もし武器が固定なら、その武器のメタを張った武器や戦い方で勝利することができる。

 しかし武器が変動するのなら、メタを張る意味がない。

 そうした小手先の技術が使えないからこそ、このオーガ戦士を倒すには探索者自身の実力が必要不可欠だ。

 そして俺は、このオーガ戦士が持つ大剣の攻撃が苦手に感じている。

 なにせ俺の得物は、長柄にハンマーとジェットバーナーを組み合わせたようなヘッドがついている魔槌だ。大剣のように、リーチが同程度で魔槌のヘッドよりも重い武器となると、武器を打ち合わせたところで打ち負けるしかない。

 この事実から苦手に感じているわけだけど――もちろん、俺には打開する術がある。


「ちょっと、チートっぽいけどな――魔力球」


 俺は片手をオーガ戦士に向け、魔力球を発射する。

 魔力球はオーガ戦士に当たると、少し位置を押し退かせる。

 さらに魔力球を連続発射すると、オーガ戦士は押し返されることを嫌がり、大剣で魔力球を斬り捨て始める。

 そうしてオーガ戦士が対処に時間を使っている間に、俺は基礎魔法を使っている方とは逆の手で、魔槌の柄の中央部を使ってバトンのように片手でくるくると回していく。

 やがて魔槌の回転が十九回になったところで柄を握り、二十回目の一振りを行う。

 ジェットバーナーの起動準備の二十回の振り込みが終わり、バーナーに火が灯る。

 ゴーっと激しい音を立てて、魔槌が勝手に前へ前へと進もうとする。

 俺はその魔槌の勢いを、手と体を使って方向性を与え、俺が扱いやすいように操っていく。

 魔槌の危険度が上がったことを、オーガ戦士は気付いたようだ。

 オーガ戦士は、魔力球を身体に食らいながらも、膂力で無理矢理に押し退かされることに抗い、そして突破した。


「だが、判断が遅い」


 俺はバーナーから火を噴く魔槌を振るった。オーガ戦士は、手の大剣で魔槌を防ぐ。その直後、魔槌が大剣の剣身に当たった瞬間に、爆発を起こした。

 爆炎と爆音が発生し、大剣とオーガ戦士を飲み込む。

 その炎と音が止むと、大剣は真ん中から弾け飛んでいて、オーガ戦士の身体には大剣の破片が幾つも突き刺さっていた。

 オーガ戦士は、武器が折られたことと身体が激しく傷ついたことが理由か、俺から距離を取った。

 俺は、魔槌に再びジェットバーナーに火を灯すための空振りをしながら、オーガ戦士の様子を見る。

 オーガ戦士は、身体に刺さった金属片を抜き、大きな破片の一つを手に握った。オーガ戦士の傷ついた体は、弱いあ回復能力があることから、徐々に傷が治っていっている。

 俺の魔槌のバーナーに火が入るのと、オーガ戦士が折れた大剣と金属片とで構えるのは同時だった。

 俺は推進力を得た魔槌につられるようにして、オーガ戦士は確固たる戦う意志を見せて、お互いへと近づいていく。

 お互いの距離が縮まり、オーガ戦士が先に攻撃してきた。手に握った金属片を、俺の顔に目掛けて投げてきたのだ。

 破片とはいえ、危ない光を放つ金属片。しかもオーガ戦士の膂力で投げられたもの。

 危険性を感じ、俺は頭を横に振って攻撃を食らわないようにした。

 そうして俺が行動を消費した瞬間、オーガ戦士が折れた剣で斬りかかってきた。

 体勢を崩した俺には、その攻撃は避けきれない。

 でも避けられないのなら、避けずに済む方法を取ればいい。

 バーナーに火が入ったときの魔槌の性質は、ハンマー部に物が当たると爆発するというもの。

 この爆発は、ハンマー部を当てるだけでよく、振る必要は必ずしもない。

 だから俺は、魔槌を突き出して、ハンマー部をオーガ戦士の胸元へと当てた。

 その瞬間、爆発が起きて、オーガ戦士を後ろへと吹っ飛ばした。

 これで再び二十回空振りしないと、同じ効果を魔槌が発揮することはない。

 しかし、爆発で吹っ飛んで舞台上に転がるオーガ戦士の追撃に、爆発の効果を乗せる必要はない。

 俺は魔槌の柄を両手で握ると、転がり終わって立ち上がろうとしているオーガ戦士まで走って近寄った。


「これで止め!」


 思いっきり魔槌を振り下ろし、半兜で覆われているオーガ戦士の頭を殴りつけた。兜がべっこりとへこみ、その内にあるオーガ戦士の頭も同程度にへこんだ。

 これが致命傷になったんだろう。オーガ戦士は薄黒い煙に変わり、ドロップ品と宝箱を残して消えた。


「ふう。今回のドロップ品は、ちゃんと財宝だな」 


 オーガ戦士の通常ドロップ品である財宝は、一抱えほどの木箱の中に乱雑に入れられていた。

 中身を確認すると、混ざって詰められた銀貨、金貨、宝石たちに、剣や槍やサンゴなどの宝物が突っ込まれている。

 その扱いの雑さを見ると、この木箱の中身についてオーガ戦士は、宝物と思ってなくて戦利品だと思ってそうだなという印象を受ける。

 ともあれ、一財産になりそうな財宝を、俺は箱ごと次元収納に仕舞った。

 では宝箱の中身はと見ると、一抱えほどありそうな魔石が一つ入っていた。


「これは魔槌の強化に使うべきだな」


 宝箱から魔石を出し、そして魔槌のヘッドで叩き壊す。

 壊れた魔石から光が溢れ、その光は魔槌に吸収されていった。

 これほど大きな魔石なら、一つだけで進化するんじゃないか――と思ったが、そう甘くはないらしい。


「うーん。なんとなくだけど、魔石の量が進化するまで足りていない感じがあるな」


 魔槌が進化するまでの魔石を得るため、オーガ戦士詣でをするべきだろうか。

 そう考えて、俺は首を横に振る。

 宝箱から魔石を得ようと考えるのなら、オーガ戦士と戦い続けるより、十一階層へと進んで通路の奥を探すべきだろうな。


「戦闘技量的には、オーガ戦士より強いようだしな、いまの俺は」


 俺の目的は不老長寿の秘薬を得ることだから、ドロップ品が財宝なオーガ戦士と戦い続ける必要は薄いしな。

 俺はそう結論付けて、十一階層へ行くべく、闘技場の出入口に出現した黒い渦の中へと入っていった。

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― 新着の感想 ―
[一言] もうすっかり慣れちゃったようで トレーニングにはいい相手ですし今後もお世話になるんかなあ
[気になる点] 3日もダンジョンに篭り魔槌で暴れまわっていたのに役所に10層突破した報告やら突破できない雑魚に向かってイキり散らかしたりしていないのか [一言] 見られているのをお構いなしにドッカンド…
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