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百三十九話 ダンジョンの不思議

 自分の実力が伸びたことを確信してから、第八階層の深層域の解明に戻ることにした。

 まずは、四匹一組でモンスターが現れる区域を、詳しく調べるところからだ。


「んで、俺が特訓に使っていた場所の直ぐ近くに、湧き水がある部屋があったなんて」


 もう少しだけ区域の奥に進んでいれば、この部屋で休憩しながら特訓することができたのに。

 そう残念がりつつ、湧き水を次元収納に入れっぱなしになっていた空のペットボトルに詰め、持っていくことにする。


「そういえば、この湧き水――薬水って、ダンジョン内なら弱いながらも体力回復の効果があるって感じだったよな」


 俺の肉体の筋肉が発達してきている理由は、モンスターとの戦闘と治癒方術リジェネレイトの合わせ技だ。

 薬水の効果を弱めのリジェネレイトだと考えると、モンスターと戦った後に薬水を飲むと、普通よりも早く強く成れるんじゃないだろうか。


「湧き水のある部屋を拠点にしてモンスターと戦うのは、理に適っているってことかな?」


 確証はないが、未検証事例としてネットの探索者向けの掲示板に書き込むのはアリかもしれない。


「でもそうなると、この薬水の価値が高まりそうだな」


 低階層にある湧き水の部屋では、探索者たちで取り合いになりそうだな。

 そんなことを考えながら歩いていると、モンスターたちと出くわした。

 俺は敵を確認するや、駆け出してからの全力の攻撃で、モンスターたちを駆逐した。

 モンスタードロップ品を次元収納に入れ、ふとした思いつきで、先ほど入れた薬水が入ったペットボトルを取り出した。そして、戦闘終了した直後だと、どれほどの効果があるんだろうと興味を抱きながら、薬水を飲むことにした。


「んぐんぐ、ふー。さてさて」


 四回連続の全力攻撃で、俺の体は多少痛みが出ている。そしてリジェネレイトをかけているので、徐々に痛みがなくなってくる。

 ここ最近では常に感じていた感覚だ。

 その感覚が、薬水を飲んだ直後から、少し変化があった。

 いつもより、痛みが消えていく感触が早い感じがした。


「うーん。気のせいとも言えない感じだけど……」


 詳しく調べるのなら、リジェネレイトの効果が切れた後、モンスターと戦ってから薬水を飲めばわかるんだろうけどね。


「そこまでする必要はないか。薬水が手に入る部屋があったなら利用する、ってぐらいの心持ちの方がいいよな」


 俺にはリジェネレイトがあるから、薬水の効果が必ずしも必要というわけじゃないしな。



 モンスターが四匹一組で現れる区域から、五匹一組で現れる場所へと移った。

 では五匹一組になった第八階層のモンスターたちは、どんな戦い方をするのか。

 それを、初対面の直後に、俺はすぐに理解できた。


「二匹が拘束しにくるって!?」


 オークマッシャーと蔓人が一匹ずつ、俺に突っ込んで来ながら、両手を広げている。

 まさか、二匹が犠牲になりに来るなんて。

 しかし有効な戦術であることは間違いない。

 片方のモンスターを探索者が相手している間に、もう片方が確実に拘束する。そして拘束してしまえば、後は数の暴力でモンスターたちが探索者を倒すことができてしまう。

 特に俺のようなソロの探索者だと、このモンスターの戦法は凶悪だ。

 なにせ拘束されてしまったら、誰の助けも望めないまま、嬲り殺されるしかないからな。


「けど、鍛えてよかった、一撃必殺! 二撃必滅!」


 俺は渾身の力でメイスを連続して振るい、近寄ってきたモンスター二匹を瞬殺した。

 こうして即座に三匹組となったモンスターはというと、今度は蔓人一匹が俺を拘束しに動く。

 

「二匹くると思ったけど、一匹だけなのか」 


 これが第八階層の五匹一組のモンスターの戦法なのか、それとも他のモンスターが盾恐竜という四つ足のモンスター二匹で拘束に向いていないからか。

 ともあれ、俺はメイスの一撃で蔓人の胴体にある核を粉砕した。

 あとは盾恐竜二匹だが、今の俺は盾恐竜の頭蓋を真正面から叩き壊す実力がある。

 なので、あと二回メイスを振るうだけで、戦闘に勝利した。


「おっ!? 魔石と甘葛がドロップしてるよ。儲け儲け」


 俺の目的は不老長寿の秘薬とはいえ、メイスの強化に使う魔石や、高く売れる甘葛が嬉しくないわけじゃない。


「やっぱり、三匹より四匹、四匹より五匹が組む区域にいるモンスターの方が、レアドロップ率が良いみたいだな」


 そして、それらモンスターたちを突破した先、通路の奥には宝箱が期待できる。

 レアドロップ率の上昇と、良い物が入っている宝箱。

 それらを鑑みると、ダンジョンの意思としては、探索者たちが通路の奥に行くことを推奨しているように感じるな。


「階層を上がっても、換金率の良くないドロップ品を落とすモンスターもいる。それを考えると、階層を先に進むよりも、階層の奥へ行く方を推奨しているのか?」


 ダンジョン攻略を足踏みさせる策にしては、効果が期待できない仕組みだ。

 逆に攻略を進めさせようとしているかというと、そんなことはあり得ない。なにせ次の層へ行く順路は、モンスターが一匹しか出ない場所で繋がっているんだしな。

 うーん、ダンジョンの仕組みには謎が多い。


「ま、俺の目的には関係のない謎だから、考えるだけ無駄だな」


 俺は謎については諦めて、未探索通路の解明に戻ることにした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 150話連載おめでとうございます!これからも楽しみにしてます!
[良い点] 握力だけ見ると男子平均40kg、主人公が60kg、伝説のプロレスラーが120kgで世界記録が192kgだから、まだまだ伸び代あるな。 その先はレベルとかが影響してるのかどうか。
[気になる点] へ〜一匹しか出ない区間で次の階層に行けたんだ 最前線はクソ強いモンスターに阻まれているって事なのかな
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