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魔獣と装備合成

 あれから一年が経ち、イモラの魔境にある採掘ポイントが一つ枯れた。俺一人が採掘した所で大して減る訳が無いだろうと思うだろうけど、採掘ポイントまで道を作り、荷車を走らせることに成功し、一日に四回から五回も採掘する事によって、長い事と利用してきた場所からは鉄鉱石が取れなくなった。お詫びにと別の採掘ポイントを見つけておいたので、俺に対して誰からもお咎めは無しという事になった。良かった。

 そうこうしている内に魔鉄装備は増産に増産を重ねた。今日も今日とて魔鉄装備の生贄の儀式ですよ。


【魔鉄の両手剣を取り込みました。スキル装備8がレベルアップしました。これ以上のレベルアップには魔銀装備が必要です】



 んん?今のでスキル:装備が9にレベルアップしたんだよな。それで、10に上げるには魔銀装備とやらが必要なのか。魔銀装備って何。鍛冶屋の親父に聞いてみよう。


「親父さん、親父さん。魔銀装備って何の事が知ってる?」

「んだでよ。ミスリルのことだでなぁ」

「出たよミスリル」


 通常の銀に魔力を込めるとミスリルになるらしいが、銀が取れる所なんてイモラの魔境には無いぞ。つまり、他の魔境に向かわなければならない。


「この辺の魔境だとガルゴの魔境だっけ」

「んだでな。あそこは魔獣が多いだでなぁ…取れる事は取れるが、危ないでな」

「大丈夫。俺は傭兵だからな」

「アホなこと言ってないでな。欲しいならパーティ組んでいった方が良いだでな~」


 いつものように祝杯を傾ける鍛冶屋を余所に、俺は次なるステップに心躍らせていた。しかしその前に、キッチリと傭兵らしく魔境を攻略してからにしよう。イモラの魔境に潜むという梟を狩る。



 ◇◇



 夜。冬の短い季節にしか出ない青い月の光を頼りにいつもの山道を進んだ。風も無く、蟲の音すらしない森は不気味を通り越して恐ろしさを感じさせる。そんな中で微かに聞こえた葉の擦れる音。両手剣を振り被りつつ、音のしたほうへ振り返ると、既に目の前にソレは迫ってきていた。

 暗闇に浮かぶ青い両目と銀色に輝く爪。ゆったりと、しかし素早く迫りくる梟を見て俺は思ってしまった。コイツの攻撃を食らったらどうなるんだろう、と。振り被った両手剣の動きを止めて、片腕を爪に差し出す。レベルアップによって重さの無くなった全身鎧に爪が立てられた瞬間、つるりと撫でるように梟は全身鎧の表面を爪で滑っていった。

 この梟。最早、雑魚だ。

 バランスを崩してフラフラと飛ぶ梟の背中を追う。魔鉄装備の強化によって何故か膂力が上がった俺の足は、容易く標的の背中に追いつき、その翼を一刀両断した。


「ギュイキャエェェェ」


 素早く剣を返して、もう一つの翅を切り落とす。勢いあまって転がっていく梟に追い縋り、その首を一刀のもとに切り落とした。


「……ふぅぅぅぅぅ」


 毎日鍛錬しているとはいえ、まともな殺し合いはこれが初めてだ。無事に倒せたというのに未だに両手が震えて止まらない。無理矢理に剣を地面に突き刺し、固まった手を剣の柄から外した。

 深く深呼吸し、獲物を見る。うん。確かに倒した。俺は勝った。魔獣を狩ったのだ。どうだやってやったぞとシスターに自慢したい気持ちだ。しかし今は、やるべき事をやろう。

 落ち着いてきて指の自由が戻って来たのをグーパーして確認し、腰のナイフで獲物を解体していく。爪クチバシ眼球そして大量の羽毛。素早く回収して袋詰めにしてサンタよろしく背負う。

 周囲に新たな獲物は居ないな。よし、退散。大汗を掻きながら俺は街へと帰還した。その汗は緊張のせいだったのか、興奮のせいだったのか、はたまた恐怖のせいだったのか。いつか思い出した時に解る事だろう。



 ◇◇



 はい。ココでひとつお知らせがあります。闇梟と死線を交わしたお陰なのか、俺の全装備の中に入っている装備が全て進化していました。魔鉄装備から魔銀装備へと変化していたのだから儲けものである。ただ、通常装備していた表面上の全身鎧は何も変化が無かった。どういう事だってばよ。俺が装備してた期間プラス闇梟討伐による加算だとしたら、こいつは装備期間が一番短い。という事は放っておけば進化するのだろうか。

 一瞬、進化した奴を生贄にしてスキル:装備をレベル10にしてしまおうかとも思った。しかし、それをすると何が起こるか分からないし、もしかしたら外見まで変わってしまう可能性がある。余波で表面上の外見である魔鉄の全身鎧まで進化してしまわないだろうか。

 この世界、全身鎧なんて高級外車みたいなのを身に着けているのは貴族くらいのもので、傭兵でそんなものを使っているのはこの街で俺だけだ。ただでさえ目立っているのに、いきなり魔銀になってたら更に目立たないだろうか。悪目立ちするだろうなぁ。という事は、今後は表面上は革装備にして、中身は全て全身鎧で良いかもしれない。うん。全身鎧着て全力疾走してるんだから、アレも悪目立ちする一因だったのだろう。それを解消出来るのだから革装備に変えるとするか。孤児院の自室に帰り考え込んだ挙句、その答えに達した。


「魔銀装備を生贄にスキルレベルをドロー!レベル10を召喚だぜ!」


 などとアホな独り言を自室でしつつ、出来立てほやほやの魔銀両手剣を生贄に捧げた。


【魔銀の両手剣を取り込みました。スキル装備9がレベルアップしました。装備合成スキルを派生獲得しました】


 何か来た。装備の合成と言えばあれだろ。不思議なシリーズに出て来る、ツボに入れちゃうと二つが一つになったりするやつだろ。詳細はどうしたら良いんだろう。あのゲームは強化値と特殊能力を追加加算する様式だったが、別ゲーでは属性値とか限界強化値とかあった気がする。こういうのはコンソール画面が欲しいな。

 と、願ってみても出てくるわけもなく。やはり感覚でやるしかないらしかった。レベル10で出てきたのだから魔銀装備以上でしか出来ないとかそういう縛りもあるかもしれない。試しに魔銀ベースに魔鉄装備を合成してみるか。


【魔銀全身鎧に魔鉄全身鎧を合成しますか。Yes/No】


 イエスだ。


【同じ系統でなければなりません。または魔力値が足りません。魔鉄全身鎧を進化させてください】


 おお、そこまで教えてくれるんだ。優しいな。凄い親切じゃん。じゃあ、サクッと魔銀全身鎧同士で合成してみよう。ポイっとな。


【魔銀全身鎧に魔銀全身鎧を合成しますか。Yes/No】


 イエス、イエス、イエ~ス。


【合成に成功しました。魔金全身鎧に進化しました】


 まさかとは思ったが、進化するのか。進化しちゃうのかよ。これ…、魔金同士を合成したらどうなるんだろう。ちょっと魔が差してきましたよ。という訳でやってみましょう。


【魔銀全身鎧に魔銀全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔金全身鎧に進化しました】

【魔金全身鎧に魔金全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔星銀全身鎧に進化しました】


 なんて…?


【魔銀全身鎧に魔銀全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔金全身鎧に進化しました】

【魔金全身鎧に魔金全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔星銀全身鎧に進化しました】


 聞き間違いじゃなかった。魔星銀って国家予算クラスの硬貨に使われるアレじゃん。庶民が見た事ない金属の代表格じゃないか。と、とりあえず室内に展示してみよう。

 ガサゴソとベッドの上に並べてみると、その妖しい輝きを放つ鎧が並べられた。なんだこれ、駆け出し傭兵が身に着けて良いものじゃないだろう。駆け出しどころか駆け抜けて死ぬ系の装備じゃないのかコレは。

 一応気になるから、もう一段階上のランクも確かめよう。


【魔銀全身鎧に魔銀全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔金全身鎧に進化しました】

【魔金全身鎧に魔金全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔星銀全身鎧に進化しました】

【魔星銀全身鎧に魔星銀全身鎧を合成しますか。Yes/No】

【合成に成功しました。魔星金全身鎧に進化しました】


 うぉほぉおおおおおおおおお!?


 国宝クラスの鎧になっちゃったよ。どうしよう、驚き過ぎて変な声出た。隣の部屋はシスターの寝室だけど、まだ昼間だから表で作業中の筈だ。きっと問題無い。と、とりあえずお蔵入りって事で、このまま全装備の中で眠らせておこう。使い続けたらこれも進化するんだろうか。

 なんだか胃が痛くなってきた。小市民には刺激が強いぜ………。


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