器
「光の...神力?」
祝福を頂けることになったが、司教から告げられた事は青天の霹靂と言っても他ならない。
司教のユアイソンは少々興奮気味にこう続ける。
「えぇ。光の神力とは、まさに私たち神官が持つ力です。
神様からの祝福を頂戴し、それを発現した力が光の神力です。」
「では、祝福を頂いた人々は皆光の神力が使えるのではないのでしょうか。」
ミランの言葉に対し、静かに横へ首を振る司教ユアイソン。
「祝福を授けられたもの全員が、光の神力を行使できるわけではないのです。」
跪くミランへ背を向け、女神像へ身体を向ける司教。
「ポートミル侯爵ご夫妻へ祝福をお授けした経緯はあれど、お嬢様への祝福は今が初めてです。」
「恐らく推測でしかないのですが、その器を持って生まれた可能性があります。」
「人々それぞれに個性があるように、限られた人々でのみ発揮される、神の力。
私たち神官は女神様に使命を授けられ、生を受けた。
...と、そう考えています。」
少しの間を空けて、ミランへ向き直り優しく話し始めるユアイソン
「人智を超えた何者かにより、与えられた使命があるのでしょう。」
(光の...神力。)
ミランは己の両手を見つめる。
そして顔を上げ、力強い瞳で司教を見る。
「お願いが、ございます。」
「ユアイソン司教様や神官様のように光の神力を扱えるようにしたいのです。
どうか、ご教授願えませんでしょうか!」
ミランの力強い瞳を見、しばし思案の後ゆっくりと深く頷く。
「よいでしょう。
ポートミル侯爵ご夫妻にも、多大なるご恩がございます。
お断りする理由などありますまい。」
「ありがとうございます!
ユアイソン司教様。」
精一杯の感謝を伝えると、満足そうにユアイソン司教は大きく笑顔でゆっくりと頷く。
「ですが、この力は紙一重。」
「時に、闇の魔力を纏いし悪きものたちへ振るう。」
「時には、力なきものたちへの慈悲の光。」
「時には、死が寄りしものへの安寧と違うことのない道標に。」
「そして...、振るうべき力を未誤り神の意思に背き時。
術者の魔力や魂は、全て神の慈悲により元の場所へと帰す。」
「このように、古より神殿では守らねばならぬ教えがあります。」
「ポートミル侯爵令嬢様。
この誓約は、これより反故にする事はできません。
この地を守護する女神へ誓い、一生を献身のために捧げる覚悟はありますか?」
この問いに対し堂々とした態度、力強い表情でミランは応える。
「無論です。
この力で守るべきものたち、救わなければならない人々。
力のない私の助けを、約束のため懸命に生き、今まで命を繋ぎ待つ人がいるのです。」
「私には果たすべき使命があります。」
「ポートミル侯爵家の家紋へ誓い、この誓約を違えることはありません。」




