呼応する力
ランリーのエスコートにて、馬車から降りるミラン。
今まで何も思わなかったランリーの手を取る所作は、どうしてもぎこちなくなってしまう。
(で、殿下は本当に、突然な、何をお考えなの...?)
(まるで顔から火が吹いて爆弾でも破裂しそう!!)
淑女の笑みは張り付いているが、内心は決して穏やかではない。
ランリーの手を取り、教会入り口へ向かう。
入り口付近で神官やシスター達が来着を待っていた。
「! まさか王太子殿下にもご足労頂けますとは。」
1人の神官が目を丸くしている。
「私は彼女を送りに来ただけだ。司教へ案内を頼む。」
驚いた様子の神官に対し、声色を変えずに言うランリー。
そんなランリーに酷く恐縮した様子の神官は、
「しょ、承知いたしました。
ポートミル侯爵令嬢様こちらへご案内いたします。」と腰を低くしている。
「ええ。ありがとうございます。」
神官にお礼を伝え、ランリーを振り返る。
「殿下、行ってまいります。
こちらまでお見送りに来てくださり、ありがとうございました。」
あくまでも内で騒ぎ続ける感情は出さないようにすると、意図的ではないが棒読みになってしまう。
そんな姿に、ランリーはフッと一瞬だけ顔が緩んだようにミランは感じた。
(気のせいかしら?..今、笑った?)
ランリーは、呆気に取られているミランの右手をとった。
あえてミランの視線に合わせるように屈んで、いつもより柔らかい表情でこちらを見ている。
「ミラン。私は先に城へ戻るが、帰りは迎えの馬車を送ろう。」
火種がついていくように、ミランの体の中心から四肢末端に至るまで徐々に熱くなる感覚を覚える。
「あ、ありがとう、ございます...!」と言うのが精一杯で、顔も真っ赤に染まっていることにミランは気付かない。
周りの2人を見ているシスター達も、ミラン同様顔を赤くして頬を押さえている姿が見える。
ゆっくり手を解放され、「護衛には、騎士をつける。」と言われた。
「騎士?」と思っていると、ランリーの後方から聞き慣れた声。
「お嬢様の護衛はお任せください、殿下。」
邸宅に残してきたはずのハウエルが居た。
「頼んだぞ。アドルフ卿。」
「承知致しました。私の命に代えても、必ずお嬢様をお守りします。」
相変わらず芝居がかっているが、ランリーは全く気にしてないようだ。
「では、これで失礼する。」
ランリーが足早に馬車は向かって行ったのを、ただ呆然と見ている事しか出来なかった。
「さぁ、行きましょう?お嬢様。」
一際嬉しそうな顔をしているハウエルのお陰で、現実に引き戻される。
「えぇ。そうね。ア・ド・ル・フ・卿?」
(そうだった、忘れてた!)
(ハウエルは王族専属の近衛騎士だった。先の戦でも武勲をあげたらしい。なんで余計に私の所に帰ってきたのか...。
というか、今の彼からは近衛騎士だったことの想像がつかないわ。)
「では!早速参りましょう。」
いつになくテンション高めでご機嫌な騎士と共に、神官の案内で辿り着いたのは、教会内部の個室だ。
「司教様、ポートミル侯爵令嬢様がおいでになりました。」
「ご足労いただきありがとうございます。この教会を守っている司教のユアイソンと申します。」
先ほどから会っている神官に比べると、魔力量が桁違いな事がよくわかる。
「ありがとうございます司教様。領地でとれたお野菜を持参しました。教会でのお役に立てますように。」
「なんと...!
いつもありがとうございます。
ポートミル侯爵夫人様にもよろしくお伝えください。
お礼にとは言えませんが、ポートミル侯爵令嬢様へ祝福をお授けしたいと思うのですが...いかがですかな?」
「願ってもない事です。
ぜひよろしくお願いいたします。」
案内されたのは国の中で、1番の大きさを誇る大聖堂だ。
国を守護している大きな女神像が祀られている。
ミランは聖なる女神像の前に跪き、両手を握って祈りを捧げる。
「この地を守護せし女神に代わり、汝へと光の祝福を授けん。」
司教の手掌からぽわっと柔らかな光が発現し、ミランの頭部へその光を放つ。
すると、ミランの体全体がその力に呼応するかのように司教と同じ柔らかい光を放った。
「こ、これは...!」
司教が驚嘆の声をあげると、ミランもその異変に気付き目を開いた。
すると身体から放つ光は途絶えてしまう。
「もしや光の神力が使えるのですか?」




