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受け継ぐ意志

重量が失われ、何かに体ごと吸い込まれ渦を巻くような感覚。

力もうとしても身体が脱力するとともに、思考が奪われなにも考えることができない。


順番に手先・足先・などの知覚・触覚が戻ってくる。

血が身体を巡る力を感じる。

最後に重量が戻り、体の重さを感じる。

身体を温かな体温で包まれているような気がしていた。


ゆっくりと目を開けると、心配そうな両親の顔が見える。

どうやらリリーの腕の中にいるようだ。


「ミラン!?大丈夫?」

「私の事がわかるか?自分の名前は言えるか?」

「お父様、お母様?」

大事な娘が目を覚まし、安堵している2人。

「私はどの位寝ていましたか?」

「墓標から光が現れて、ミランの意識がなくなったばかりだ。」

「...そうなんですね。」

(やっぱり時間は動いてないみたい)


ゆっくりとリリーから身体を離して起き上がる。

「急に動いてはダメよ?まだ意識が戻ったばかりなのだから。」


心配そうな母の姿を見て、ミランは安心させるようにこう伝える。

「体は大丈夫です。ただ、長い長い夢を見ていた気分です。」

「夢?」

「そうです!大切な人に会いました!」

「...?」

両親がきょとんとしているのは当たり前だ。ミランが寝ていたのは数分に満たないのだから。


「私、もっと強くなります!

助けに行くって約束したから!」


ぱっと立ち上がり、墓標の方へと走っていく。


「あ、ミラン!そっちは!」

慌てる両親を素早くすり抜け、墓標の目の前に立つ。


そして「ありがとう」と告げ、再び愛しの両親の元へ駆けていく。


ミランが両親と共に去ったあと、霞んで読めなくなっていた墓標の文字に光が宿った。

光が消えるとはっきりと字が読めるようになっていた。

そこにはこう書かれている。



初代聖女

シヴァール・ヴァーニー

ーこの地で安らかに眠る。


初代侯爵

アランネート・ポートミル


ディア・ヒメル




残りの休みはミランの体調に考慮し、遠出の予定はなくなった。

ミランは大好きな領地で、大好きな友達と心ゆくまで過ごした。


あっという間に楽しい時間は過ぎ、王都の邸宅へと戻りいつもの生活が始まった。

そして、ひと月が過ぎた頃王宮か封書が届けられた。

それ以降両親の様子がいつもと違っていた。


夜眠る前の部屋に、父親のロンネートが訪ねてきた。

ソファに横並びで腰掛け、最愛の愛娘の髪を撫でる。

そして静かに王宮からの封書を渡す。

「ミラン、これを見なさい。」

「私が見てもいいのですか?」

大きくゆっくりと頷かれる。


慎重に厳かな装飾の封書を開ける。


一枚の上質な紙が入っていた。


そこには、

時期王太子、ランリー・ブルーウィングの婚約者になるように。

と書かれていた。

国王陛下直々の捺印もなされている。

(え、どうして?婚約者?私が?)

(サラは?サラの気持ちは?)

気づけば少女の瑠璃色の瞳から涙が頬を伝っていた。


そんな娘をしっかり抱き寄せる。

「すまなかった。推薦されることになったとき、これを辞したのだ。」

「だが、他に令嬢がいないと...私が拒否するのなら...と。王命だそうだ。私には謝る事しかできない。」

どうやらロンネートが久々にとった休暇は、娘を婚約者に据えるために説得をしてこいという意味だったらしい。

もちろんロンネートにその気はないし、その意図を汲むような真似はしなかった。


ロンネートに抱かれ、泣きつかれ寝てしまうミラン。

愛娘をベッドに連れて行き、そっと寝かせ部屋を後にした。




翌日サラがポートミル邸を訪問してきた。

いつになく静かな2人。

2人とも視線を合わせるどころか、会話もまともにできない。

ミランの部屋に入り、人払いをする。

「サラ...あのね。」

意を決してミランは全てを告げようとする。

「大丈夫よ。わかっているわ。」

その一言で顔を上げると、深い紫色の瞳が目に映る。

今日初めてみる彼女の目は赤く、赤く腫れ上がっていた。


「王命だと、私もお父様から伺ったわ。私は身体が弱いから、陛下は却下されたようね。」


「サラ...。」


「何も、何も言わないで!

私ミランのこと大好きよ。親友だと思ってるわ!」

「だから、殿下への気持ちは全部ミランにあげる!」

「私は...そう決めたの...」

少女は瞳からポロポロと大粒の涙を流しているが、表情は柔らかく太陽のような笑顔だった。


2人で抱き合いわんわんと泣いた。

時が経ちやがて泣き止むと、2人で顔を見合わせ笑い合う。

「サラ、私もサラのこと大好きだよ!ずっと一緒に居てね!」

「えぇ!勿論よ。ミランには私が居ないとダメだわ。」


サラと過ごしたこの日は、一生忘れられない日になった。

それ以降ミランは王太子婚約者になるため、厳しい王妃教育を受けるため登城するようになっていった。

このお話で一章は終了になります。

次回からもよろしくお願い致します。

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