おばあとの思いで
おばあちゃんはよく、ご飯を作ってくれた。
「あんたには、なんでも、たべさせてあげたいんや。食べたいものあるか?」
これが、口癖だった。
からあげ、ハンバーグ、すき焼き、味噌汁、にくじゃが…
そのなかでも、私が一番好きだったのは…
私は20歳になった。おばあちゃんは遠くにいってしまった。
学生を卒業して、社会人になった。一人暮らしだ。
働くところは、いわゆるブラックだった。
毎日の上司からの叱責。小さな失敗で、長時間のお叱り。サービス残業は毎日2時間。勤務形態は、早番遅番の繰り返し。起きたら暗いのに、仕事終わりも暗い。
「あれれ~、いっつも夜なのかな、おっかしいな~」なんて。
勝手に涙がでてきた。
なんのために働いているのか。
「しんど」
このまま、電車に飛び込んだら楽になれる?
このまま、車にひかれてみるか?
このまま、あの看板が落ちてきたら終わるか?
転職も考えたが、なにもやる気が起きない。
こんな私が仕事ができるのかという思いでいっぱいになった。学生のときは、コミュニケーションはある程度とれると思ってたのになぁ。
毎日叱責されてたら、自信も無くすかもなぁ、でも自分に問題があるのか…
すっかり自信をなくして、それでも電車に乗って仕事先に向かっていた。
大人になってからのメンタル回復は誰も助けてくれないし、小説みたいに運命の人が現れてなんでも解決してくれない。
「ほんと、世知辛いな。」
重いからだを起こして休日に散歩にでた。
この状況をどうにかしたくて、行動した結果だった。
太陽はいつも輝いていて、まぶしい。
植物は光合成をして、動物や人間は太陽のエネルギーを得るために植物を食べる。と、どこかで聞いたことを思い出した。
人間は太陽から動かされてるのか。
ベンチに座った。
人がたくさん仕事をするために動いてる。
「みんな、すごいや。」
何かしら、給料をもらうために、人のために働いてる。すごすぎる。
まだ、若いからどうにでもなると、周りの人は言うけど、どうにかする意識があるから行動して、どうにでもなったから、言っている。何がいいたいかというと結果論ではないかということ。
早くおばあちゃんになりたい。年金暮らししたい。
「年金積み立ててないけど」といって一人で笑った。
帰ってご飯をたべた。
「もう九時かねなきゃな」
呟いてから、仕事のために生活をしていることを実感し、嫌になった。
その夜も眠れなかった。