1話:目標のない人生ってなんか張り合いないよね
肩慣らしで書いたので頭緩くしてよんでください。
昔1章まで書いて放置してた作品の供養です。
輪廻転生という言葉があるのをご存知だろうか?
噛み砕いて言えば生まれ変わりという意味なのだが、まさか本当に実在するとは思ってもみなかった。
最初はふわふわとした、夢のような感覚だった。
だけど年齢を重ねるにつれて己の意識がはっきりと自覚できるようになり、それが完全に覚醒した時に俺は生まれ変わりを確信した。
前世の俺は結構なクズで、女を泣かせるのは当たり前、むかつく事はなんでも暴力で解決していたし、直接、間接問わずに人を殺した事だってあるくらい結構とんでもない奴だったんだが……どうしてそんな俺が地獄に落ちずに転生をしたのだろうか?
まあ、そんな事をいちいち悩んでも答えが出る訳でもないし、俺はすっぱりと割り切ると今度の人生は真っ当に生きようと決意した。
差し当たって前世同様に身体を鍛え始めた。どう鍛えれば効率がいいかなんて事は知識や経験からすでに学んでいたのでそれほど苦ではなく、むしろ日を追うごとに強くなっていく肉体に楽しさすら感じていた。
だが、それらが根底から覆される衝撃に俺は出会ってしまった。
「今日から皆と一緒に過ごす事になった新しいお友達でーす…さ、自己紹介して」
眼鏡を掛けたやる気があるのかないのかよく分からない優しさだけが取り柄ですみたいな先生の言葉に一歩足を出す少年が居た。
ツンツンとした短髪にメンチをくれてるのか如く鋭い眼光。まだ若いというのにも関わらず捻くれたような顔つき。
「堂万勝重です……よろしく」
そいつを見た時、ぶっちゃけ白目を剥きそうになった。
俺、どうやら寝取られゲーの主人公に生まれ変わったようです。
前世に存在したエロゲーである『僕が気付かない内に大切な家族と幼馴染達が染まって変えられていく~』の主人公である柳達郎に生まれ変わったのだと気付いた小学3年生の春だった。
正直、それ以前から少しだけ違和感があったんだよな。
親父は妹が産まれてすぐに事故で他界したし、母親は妙に色気むんむんだし。
妹は可愛いし、2人いる幼馴染は両方ともとんでもなく可愛いし。
名前も何処かで聞いたことあるような名前だったけど、二度目の人生なんだしそんなこともあるよなーって軽く流してたんだよ。
だが転校生である堂万勝重が小学校に転校してきた時点で完全に思い出した。
この世界が前世に存在するエロゲーの世界だという事に……。
いや、ただのエロゲーの世界ならまだマシだった。
だけど寝取られゲーって、おま、まじで?
誰が転生したがるんだよ。そんな作品の主人公に……
作品の中の堂万勝重を思い出すとたしかこんな感じだった筈だ。
堂万 勝重
寝取られゲーの寝取り男
達郎の小学校の同級生で小学3年生の頃に転校してくる。
小学6年生の時、里山(通称ゴリ山)に虐められてる達郎を助けて、その時から交流が始まる。
達郎は彼に友情を感じていたが、勝重は達郎の事をていのいいパシリだとしか思っていなかった。
そして高校生になったある日、達郎の家に遊びに行ったとき達郎の妹である日和や母親である日向を見た事で手に入れたい衝動に駆られる。
そこから勝重は不良を達郎や日和に手向けて、それを自分が庇う事でマッチポンプを演出する。
最初に日和に手を出して、それをネタにして母親の日向にもその魔の手を伸ばす。
そして日夜調教を重ねて柳家の女を完全に支配する。
とかだったような気がする。
はっきり言って大分胸糞が悪くなるような話だ。
そして妹や母親が調教を受けていても尚、その現実を認識せずに自分に都合のいいように解釈して逃避し続ける達郎にもイライラした。
母親や妹がすぐ隣の部屋で嬌声上げてるのに風邪でも引いたのかな?なんてのたまうのは流石にありえねぇだろ。確認しろよ確認。
もし仮に俺が達郎の立場だったならば、勝重を血祭りにあげて親子兄妹の絆よりも肉欲を優先した母親と妹の両方にも多少の制裁を加えていただろう。
多少過激かもしれないが、少なくとも俺が達郎の立場ならばそうしていた。
そして現実問題として、今の俺は達郎になっている。つまりこれから先の未来ではその悪夢が現実に起こりうる可能性があるという事だ。
そんな未来は御免だ。誰が好き好んでM奴隷のような人生を歩みたいと思うんだ。
それに俺が転生した時点で原作主人公である達郎とは既に別人だ。
ならばどうすれば回避できるのかを考える。その答え自体はシンプルで非常に簡単だ。
単純に関係を深めなければいい、それに尽きるだろう。
しかし、それだと負けた気がするので俺はとりあえず鍛えることにした。
肉体を今まで以上に強靱に、より強固に鍛え上げていく!!
如何なる苦難や困難、苦境が待ち構えていようが生前と同じように俺は力でねじ伏せる
優しさだけが取り柄の男が何を出来るというんだ?
男にとって必要なのは【力】圧倒的なまでの暴力だ。
弱い男なんて存在する価値がない。
どんなに優れた男だろうが、女を守る力が無ければ無力だろう。
だからこそ女は本能的に強い雄に惹かれるのだ。
ただ、力と言っても肉体だけの力では足りない。
頭脳、権力、あらゆるものを兼ね揃えなければならない。
俺に与えられたチャンス、第二の人生。ならば生前に得る事ができなかったモノを今生で掴み取りたいのだ。
たとえ肉体をどれだけ鍛え上げたとしても所詮は個人、いずれ限界に行きつく事は前世の経験から既に学んでいる。
知力はどうしようもない。だけど知識や応用力を高める事は出来る筈だ。
単純に学べばいい。分からない事や知りえない事を貪欲に学び、知識として蓄えていく。
そうしていけば知力も上がっていくだろう……たぶん。
権力に関して言えば、将来的に見据えておく程度でいいだろう。
所詮は個人の力で得る事ができる権力などタカが知れているのだから、上を目指すのであれば第三者の協力は必要不可欠だ。
当面の目的はただ一つ、他の誰よりも強くなる。
理不尽に対抗する手段は同じく理不尽な手段だ……だから俺は決意した。
肉体を鍛え上げ、生前の肉体を超える事で俺自身が理不尽な存在になってやる。
暴力で総てを解決するなんて事は言わない。だが、肉体を鍛え上げれば必ず自分の糧になる。
どれだけ綺麗事を口にしようが、人間なんて所詮は獣と同類だ。
食欲 睡眠欲 性欲の3つがあれば生きていける。
前世の俺が途中で挫折し中途半端に満足した結果、昇れきなかった頂点を今度こそは目指す。
この世界の元が寝取られゲームだとかそんなものは関係ないのだ。
「やってやる。やってやるぞ!!」
二度目の人生で今度こそ夢を叶えるのだと俺は誓った。