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第4話 キミの真価を解き放とう


「あ、あの、ありがとうございます……私なんかを拾って頂いて……」


 ヴィリーネはまだ落ち着かない様子で、俺の後ろを歩きながらお礼を言ってくる。


 俺たちは冒険者ギルドを出た後、街の中を歩いていた。

 時刻はまだ昼間で、人通りも多い。


 幸いにもサルヴィオたちが意趣返しに追ってくることはないみたいだ。

 流石に、白昼堂々街中で人を襲ったりなんてすれば冒険者ギルドから永久追放されることくらい、彼にもわかっているらしい。


「気にしないで。ヴィリーネちゃんのお陰で、俺も踏ん切りがついたんだから。それにキミが有能なのは本当だし」


「は、はぁ……ところで、貴方様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」


 ヴィリーネちゃんこちらの名前を聞いてくる。

 そういえば自己紹介もまだだったな。


「おっと、自己紹介が遅れたね。俺の名前はアイゼン・テスラー。これから雇い主になるワケだけど、よろしく頼むよ。キミの本名は……ヴィリーネ・アプリリアちゃんでよかったかな?」


「はい! ヴィリーネと申します! こ、これからよろしくお願いしみゃす!」


 微妙に噛んだ。

 語尾の方で。

 可愛らしいなぁ。


 おっちょこちょいな部分もあるが、性格は真面目で素直。

 少なくとも人として問題があるようには見受けられない。

 強いて言えば、謙遜が過ぎるというか自分に自信が持てていないくらいだろう。


 いい子じゃないか、彼女となら上手くやっていけそうだ。


「アハハ、よろしくねヴィリーネちゃん」


「ど、どうぞ私のことはヴィリーネと呼び捨てにしてください! ちゃん付けなんて恐れ多い……!」


「いや、でも――」


「ヴィリーネでお願いします!」


 ……そんなに、ちゃん付けで呼ばれるの嫌かな?

 まあ、そこまで本人が言うなら……


「わかった、これでいいかい、ヴィリーネ?」


「はい! なんなりとお申し付けください!」


 ぱああっと明るい笑顔を俺に向けてくるヴィリーネ。

 まるで子犬みたいだ。


「――ところでアイゼン様のギルドは、一体どういったギルドなのですか? 私はなにをすればいいのでしょう!」


「ああ、それなんだけど……実はまだなんのギルドかも決まってないんだ」


「……え?」


 なんならギルド化の申請もしてないしねぇ、と俺が笑うと、彼女の表情が固まる。

 そして直後にはウルウルと目尻に涙を浮かべ初め、


「も……もしかして、私は騙されたのでしょうか……? 新興ギルドと偽ってスカウトする、新手の詐欺のような……!」


「ち、違うから! ちゃんとギルドにするから安心して! ただキミがきっかけだったっていうか、その……!」


 俺は一旦呼吸を整え、順に説明する。


「……俺は、追放者を集めてギルドを作ろうと思ってるんだ。本当は無能なんかじゃないのに、理不尽な理由でパーティから見捨てられた冒険者は世の中に数多くいる。ステータスが絶対だなんていう世の中に、彼らの価値を理解してほしいんだよ」


「追放者のギルド……追放者の価値、ですか……?」


「俺の目はね、他人の〝隠しスキル〟が見えるんだ。だからステータスが低い冒険者には、数値じゃ評価できない能力があることもよく知ってる。ヴィリーネみたいにね」


「ふぇ? わ、私ですか?」


 驚いた感じで、彼女は目を丸くする。

 やはり、自分のスキルに気付いてなかったようだ。


「そうだ、ヴィリーネには【超第6感】っていう特別なスキルがある。ダンジョンでモンスターの出現位置やトラップの配置を予知できるんだ。身に覚えはないかい?」


「そ、そんなこと言われても……私はただ、パーティの皆の前を歩いていただけで……」


「ふむ、聞き方を変えよう。ヴィリーネはこれまで、モンスターの不意打ちに会ったことやトラップに引っ掛かったことはあるか?」


「……ない、です……」


「たぶんなんだけど、キミはダンジョンを進む時〝なんとなく嫌だな〟と感じた方には進まず、無意識に避けてきたはずなんだ。他にも――キミは、実はモンスターの弱点が見えるんじゃないかな?」


「! ど、どうしてそれを……!」


 お、こっちは自覚があったか。

 しかし、それならそれで疑問も浮かぶ。


「ホラやっぱり。でもどうして隠してたのさ、それを彼らに言えばもっと活躍できただろうに」


「いえ……サルヴィオたちは私に発言権なんかないって、初めから聞いてもくれなくて……」


 なるほど、傲慢な彼ららしい。

 ステータスの低い奴の言葉なんか信じない、そもそもステータスの低い奴に人権などない。

 そう思っているくせに、本当は無能とバカにしている者に助けられている。

 道化ここに極まれり、だな。


「そうか……でも、もう隠さなくていいし、遠慮する必要もない。今まで我慢してた分、これからは思う存分能力を生かしてくれ。絶対に、俺がキミの真価を解き放ってみせる。だから――一緒に来てくれるか?」


「は……は……はいっ!!! 私は、アイゼン様に付いていきますっ!!!」


 両手の拳をきゅっと握り、大きく頷いてくれるヴィリーネ。

 同時に何故か頬を紅潮させて、うっとりとした目でこちらを見てくるが……まあ、ギルド創設に立ち会う気になっただけでもよかったと思おう。


 ――さて、まだギルドの名前も具体的な方針も決まっていないが、だからといってなにもしないでいては明日の飯にも困ってしまう。

 それに、せっかく有能な追放冒険者が仲間になってくれたのだ。

 彼女に自信もつけさせてあげたい。


 案ずるよりも生むが易し――まずは行動することから始めるか。


「それじゃあ、さっそく行こうかヴィリーネ」


「? 行くって、どこへです?」


「決まってるだろ? ギルドの初仕事を貰いに行くんだよ」


※【第6超感】→【超第6感】に変更致しました!


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ほぼ初対面の女性を「ちゃん」付けで呼ぶのも、それを「恐れ多い」と言うのもおかしいと思います。 「さん」付けなら分かりますが。
[一言] そんな人は、現れなければ良いけど、今後隠れスキルを開発して貰ってから裏切る人。そう言う人が、出ないと良いね。
[一言] これって他人が見えない情報を独占出来るだけで、能力主義では同じ穴の狢じゃない?って思ったらすでに感想欄に書かれていた。これから作者さんがどんな風に料理するか楽しみ(。・ω・。)
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