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前編

   

 俺が辿り着いたのは、郊外のショッピングモールだった。

 かつては笑顔の買物客で賑わっていたのだろう。

 しかし今ではすっかり寂れてしまい、入口に設置されているガラス製の自動ドアも、もはや機能していなかった。

 開閉機構が故障してしまったのか、あるいは、電気が停まってしまったのか。

 俺がドアの前に立っても、スライドする気配は皆無だった。

 それでも問題はない。ガラスが大きく割れているから、そもそも『ドア』の意味がなくなっているのだ。

「……」

 今さら気にする必要なんてないだろうが、一応はガラスのギザギザで体を傷つけないよう、残骸であるドア枠をゆっくりと跨いで……。

 俺は店内へ入っていった。


 モールの外から中へ。

 世界が変わる瞬間、首を回して、追跡者の存在を確認する。

 今のところ、誰の姿も見えない。

 追ってくる奴らも。

 そして当然、仲間の姿も。


 そう、もう俺には仲間なんて残っていない。

 俺一人になってしまった

 みんな奴らにやられてしまったのだ!

 こんな環境になる前は、むしろ俺は孤独を好むタイプだったが……。

 今では奇妙な仲間意識を感じていた。本能的なレベルで。

 そう、本能的な欲求だ。「仲間の仇を取りたい」という気持ちも絡んで「奴らに立ち向かいたい」という衝動がある。

 しかし……。

 冷静に考えれば、俺は逃げるだけで精一杯だった。

   

 奴らは意外と狡猾だ。俺の足跡を追って、いずれこのモールにも辿り着くはず。

 ここまで見た感じ、走って追って来たりはしない様子。

 きっと警戒しているのだろう。じわじわと俺を取り囲むつもりなのだろう。

 だが俺自身も、足取りは信じられないほど重くなっている。もはや走ることは不可能だった。


 それでも必死に、トボトボと逃げる。

 モール内の一画にある映画館が、ふと視界に入った。

 なんとなく懐かしさを感じて、そして逃げ隠れる場所としても最適と思えて、自然と足がそちらへ向かう。

   

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