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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

行商エルフ(仮題)シリーズ

行商エルフ(仮題)4

作者: まい

今回は帰郷して、過去に思いを馳せる場面が多いです。

「最長老様!お帰りなさいませ!」


「里の周囲は強力な結界装置を頂いた事もあり、のんびりしたものです」


「気は抜きませんよ!里の平和のため、最長老様の帰る家を護るためにも、我等は全力でこの里を守り抜く所存です!」


「最長老様が授けて下さった畜産・農業知識でほぼ安定して作物が採れるので、自給には問題が起きておりません!」


「それと貴重な薬草類も分けて頂いてますから、それをなんとか畑で増やして、効果の高い薬の備蓄も進んでいます!」


「独自改良のための実験をしたり、酒造に向いた品種の研究も――――」


「養蚕も順調で、我が里の主要産業になりました!」


「……その、里の女達が美しく着飾るので、えーーと」


「はっ!里の警備はお任せください!」




 今日は里帰りです。夫が生きていた頃より頻度は下がりましたが、それでもこの地には愛着がありますので、こうやって何年かに1度は帰るようにしています。


 ……しかし、何度聞いても最長老は心にキますね。これでも外見は20代、下手すればそれより前の小娘にすら見間違われる若さなのです。



 うるさい。えーえーそーですよ、私の実年齢は500を軽く越えるお婆ちゃんですよーだ。普通のエルフならとっくに鬼籍入り、ハイエルフだって同じ。


 そのくらい軽く生きられる超長命種にさせられたんですよーだ。

 なんだよ転生特典のスキル【絶対記憶】で、ちょっと見聞きするだけで何もかも簡単に覚えられる~って調子にのって、アレコレ勉強したら余計な称号を得て存在進化するなんて知らなかったんですよ!


 現在の私は古代(エンシェント)エルフで、病や傷や自傷等の寿命以外の死因しか死亡が確認されたことの無い種族にさせられました!

 なので年齢はお婆ちゃんかもしれませんが、いつまでも若いお姉さんなんですよ!解りましたか?解ったら年寄り扱い禁止!!



 等と内心でプリプリしましたが、それをおくびに出さず、目的地までに出会う里の者達とにこやかに挨拶。



 ……この里も大きくなりましたねぇ。私が外で行商人として認められるようになるまでは、この里はエルフのみでした。


 しかし私が古代エルフになった頃に、この里は1度選民思想に汚染されかけました。古代人類種になれる者がこの里から出た!我等こそ神に愛された種族なのだ~とかって。


 単一種しか居ない環境は不味いと判断し、選民思想の痛ましい被害者達を他国から連れ込み「お前らの考えの答えが彼等」と見せ付けて、危険思想の芽を摘み取ってやりました。


 その結果として、多種族で賑わう里となり、人口は5桁をゆうに突破。6桁は……しばらく無いですかね。



 にぱっと笑顔でぶんぶか手を振りながら「ちょーろーさまー」とか言って駆け寄ってくる子も時々交ざります。はーい、ちょーろーさまですよー。どうしたのかな~?おそとのお話?後でみんなにしてあげますよ~うふふふ。


 ああ、子供達はいつ見ても愛らしい。守りたい、この(無邪気な)笑顔。


 ……え?さっき年寄り扱い禁止と言っていたのに、子供は良いのかって?ええ、良いのです。可愛い子なら許せますよ!ただし生意気が過ぎて、悪意まで見せるク○ガキは例外。ウフフフフフ。


 あ~~、故郷に帰って来た安心感からですかね?かぶっていた猫が、ずっと行方不明です。




「ようこそお帰り下さいました」


「いかがですかな?『行商宰相』様より預かりましたこの里は」


「有難うございます。お陰様で大禍(たいか)無く過ごせております」


「…………ええ、貴女様から授かった知識はしっかり根付き、順調に育っております」


「つかぬことを伺いますが、里の現状を誰の口から?」


「あやつめ……俺が言うから黙ってろと口止めしたはずなのに。後で仕置きを」


「え?『宰相』様が無理を言って聞き出したから、仕置きはダメ?………ぐぬぬぬ」




 里長(さとおさ)さんへ、帰郷の挨拶は終了。

 取り敢えず1週間は里で過ごす予定とし、色々見て回ったり本職(行商)をこなしたりするつもりです。


 里の目立つ景色は、木造住宅。


 ログハウスもあれば瓦屋根の日本家屋もあり、藁葺き屋根の屋敷もあれば合掌造りの家もあるのです。

 チラホラですが、木造2階建ての集合住宅(アパートメント)が建っているかと思えば、ツリーハウスなんて可愛らしい家も混在します。


 なぜ木造ばかりかと言えば、手軽に手に入るから。


 この世界の方々の魔法適正は種族的な差異も多少はありますが、生まれ育ってきた環境が強く影響します。

 いわゆるイメージ詠唱の魔法が基本ですので、育つ過程で慣れ親しんだ環境が大事なのです。


 結果として、森の中なので土や植物、生活に欠かせない水や気持ちいい木漏れ日。その辺が基本的な魔法適正となって現れます。

 森が防風林みたいに遮ってほとんど吹かない風ですが、だからこそ意識されて風の適正を持つ者も少なくないですね。


 そんな訳なので、住居に使う資材として植物を育てる魔法を使えばすぐ確保できる、木がよく使われるのです。


 誰が日本由来の家に関する情報を里へ流したのかは、言うまでもないですよね?


 ……お?私を見る大人達の中の何人かが、秘密の合図を出していますね。分かりました、夜に我が家へお越し下さいね。



 ようやく我が家へと帰宅です。

 場所は村の端ですね。里の拡張が幾度行われようと、村の端にある事を私が望んだ為。周囲は静かで過ごしやすくて、とても良い環境。


 外見はログハウス。私の子孫達が定期的に手入れしてくれているので、とても綺麗………じゃないですね。家の壁に小さい穴が空いてます。


 誰か子供がイタズラでもしましたかね?

 まあいいです。……はい、植物操作で穴の周りの木を成長させてふさぎました。



 家の内装もほとんどログハウス然としています。対面式キッチンとか桧のお風呂とか、私や亡くなった夫の好みが満載です。


 我が家に異変が無いかを確認しながら、窓を開けたり綺麗にする魔法で掃除したり。特に目立った異変は、家の壁だけだったと確認しました。


 (ひと)仕事を終えて、リビングでちょっと息抜き。



 ここに居るとどうしても思い出しますね。


 既にハイエルフへと進化していた私が、成人したら里を飛び出す事を止められないと理解した大人たち。特例で成人前に私の婚約者と結婚させて、子供を作れ……せめて忘れ形見だけでも置いていけ、となったのを。


 それでまんまと大人達の思惑にはまり、捨てるつもりだったこの里に愛着が湧いて、子供が成人するまでは~なんて1年に1度は帰郷して夫と子供に会って。


 気が付いたら2人目の子供を抱えて、再び乳離れが済んでも成人するまでは~と帰ってくる。


 子供が成人するまでに3人目はできませんでしたが。


 ちなみに1人目の時に夫へ、浮気しろ、他の女性と子供を作れ。その人と一緒に子育てしろ。そっちの方が絶対に良い、と言ってやったのです。


 なのにあの馬鹿(大切な夫)は生涯私以外と、所帯は絶対に持たないと返しやがって。


 本当に有言実行でしたよ。なので私も、何を言われようが夫は生涯であの馬鹿のほかに居ない、と貫き通しています。


 我が子達は寿命でとっくに逝っています。私の血族で今生きているのは、子孫達ですね。


 …………極めてどうでも良い余談ですが、ハイエルフから古代エルフになった際、夫に捧げた初めてが何故か再生しましてね?称号に【子供を産んだ処女】とか言うパワーワードが……。


 この称号が消える時は、記憶持ちで転生した元夫と出逢えた時でしょうね。

 記憶持ちでの転生自体が滅多に有りませんから、私が死ぬまで付いて回るでしょう。



 そうそう、転生繋がりでもうひとつ。

 少し前に語った、里が選民思想にやられかけた話の詳細。


 ソレの扇動者が流れ者で、なんと地球からの転生者で男性エルフ。称号を見たら笑いましたよ。


【真性エルフスキー】

 転生特典は成長チート系スキルでした。


 神に愛されたエルフ達の楽園を作るとか言っていましたが、本音はエルフハーレムを作りたかったそうで。


 手当たり次第に女性エルフをナンパして、私には特別イヤらしい目で見たり「エロフキターーー!!」とか「激レア爆乳エロフさんやーーー!!」とか叫んだり、ボディタッチで済まずに押し倒そうとしたり。もちろん撃退して大事には至ってませんよ?


 進化の度に、身体能力と魔力と容姿とボディラインとが格段に強化されるのですから。成長チート持ちでも、素エルフでは相手になりません。


 他の男性へは見下したり、密かに里から追い出そうとしたり、裏で直接暴行を加えたり。


 その頃には既に最長老となっていた私は、証拠を集めてこの迷惑者の追放を宣言。本人以外はあまり異義を唱えず。

 どうしようもない奴発案のエルフの楽園と言う甘い夢は、それでも根強く芽吹こうとして、前述の方法で潰して、鎮圧されました。


 迷惑者への罰は、罪人へよく使われる呪いの紙を使いましたね。


 契約と罰の神様の名の下に振るわれる呪い。○○をしてはいけないと言う命令が多いです。


 それで「悪意や獣欲で女性エルフに接触してはいけない」と縛りました。違反した時の罰ですか?神様からの罰です。その縛り方なら、不能か恐怖症か……最悪“もげる”とかですかね?


 今はどうしているか、ですか?知りませんよそんなの。素エルフのままだったならば、寿命(人間種の倍)がきている位昔の事ですから。




 なんて過去に思いを馳せていた時、ふと危機を感じとりました。


 里の結界の外。狩りをしている者達の近くに、狩人達では簡単には倒せない危険な魔物の存在を感知しました。



 最長老様!すみません、オレ達じゃあ敵いそうもありません!

 緊急時だから普段は封印している転移魔法で駆けつけると、狩人達の代表者(獣人)がそう言って下がりそうになるので、引き留めました。


 普通のヒト達でも、協力すればあの大物(超大きい魔猪)を狩れる手段を伝授しましょう。


 そう言って見せてあげました。いくら大きな魔物だろうと、相手は突進しかしない猪型なら簡単ですよ。


 突進を誘う。

 土の魔法で前半分を落とし穴にはめる。

 はまったら後ろに回り込む。

 倒すことが第一、素材は第二。内臓類は諦める。

 猪が混乱して何もできない内に。

 手に持った得物や魔法で全力を出して。



 掘れ。



 掘り抜けて、突き抜けたなら私の勝ち。

 ね、簡単でしょ?


 この世界のエルフはゲームバランスとか言う調整が無く、よく言われている特長の他に、身体能力だって人間種と同等かそれ以上。だいぶ恵まれた種族なのですよ。


 あとは落とし穴に、水の魔法で血の水分を操作して、私が浴びた返り血もまとめて全部流し込んで穴を埋める。


 この大きさなら持ち帰って解体して、食べられるようになるには明日でしょうか?そう言いながら狩人達へ顔を回す。


 …………おや?みなさん、なんで腰が引けた上でお尻を手で隠す動作を?しかも顔が真っ青で、歯の根が合わずガチガチガチガチ。


 まあ良いです。この猪さんは私が【無限収納】で先に持ち帰りますから、みなさんはこの後も狩りに励んでくださいねー。


 と救援に出ていたら、ずいぶん暗くなって来ました。後でたっぷりお話すると約束していた子供達には、悪いことをしてしまいました。明日こそ沢山お話してあげます。




 猪を里のヒトに引き渡してから家へと帰りついて、夕飯の支度です。今日は……しょうが焼き丼でしょうかね。

 さっきの猪で、つい食べたくなりました。



 はふぅ。美味しい物というのは、やはり幸せになれますねぇ。

 満腹感でまったり気分な私は、ヒトの目が無いのを良いことに、だらしなくお腹をさすりながらグデっとリビングのソファでだれていました。



 コンコン。


 おや、来るのが結構早いですね。

 皆様は覚えていますか?大人達の秘密の合図。悩みがある夫婦はその合図を出せ。昔とある夫婦へ言ったのですが、みんながそれを知って以降常態化。

 少し言いたいことも有るのですが、里の為に出来ることなら、してあげたいのも事実です。


 姿勢を正して、装いも確認して、はいどうぞ。エルフの夫婦がやって来ました。


 来るなら夫婦揃って、が大前提です。片方だけ来て、里で変な噂を流されたら双方大ダメージですからね。徹底させています。


 相談の報酬はマチマチ。お金を始め、それぞれのお仕事で得られる余禄を頂く事も多いです。



 ………ふんふん。いくら愛し合っていようが、どうしてもマンネリしますよね~。

 ならばコレでしょうか?


 夜の基本支援セット~。

 ご夫婦の気分を盛り上げるべく、何かに成りきってはしゃぐ為の定番レプリカ衣装一式です。

 おまけで女性へ()()()()するオモチャ数点と、男性向けに蝶ネクタイと小さい腰エプロン。


 夫婦で仲良く、楽しみあって下さいね~。



 次はどなたですか?


 ……おう。小人族の男性と巨人族の女性のご夫婦ですか。

 合法おね○ョタ夫婦。ファンタスティック。


 お悩みは?………あーはいはい。当たった気がしなくて、子供が出来ないのが不安なのですね?


 ひとまず簡単な保健体育の授業をして、顔を揃って真っ赤にした辺りを狙って、邪道かもしれない物をご提案。


【身体強化】と【身体操作】の2つを付与した男性用特殊魔道具。

 魔力を流すと、望みの形状になるブツです。

 難点はチョーカー型で、身に付けた見た目で好みが別れる所。

 それと魔力を要求するので、効果時間の問題も出てきます。


 これを作った魔道具職人は女性。余程ストレスが溜まっていたのでしょう。




 3人でしないか?とかふざけ過ぎた男性相談者は、その男の嫁と一緒になって蹴り飛ばして里の広場で晒して、何事かと見物に来たヒト達を震え上がらせた他、ちゃんとした方々の相談もキチンとこなしました。


 今日のお仕事は終了です。お風呂にも入り、改めて魔法で全身と寝具を清めておやすみなさい。



 ……寝ます。


 ………眠る。


 …………おやすめない。



 ううぅ、毎回帰郷初日の夜はこうなんです。


 原因は分かっています。家に居ると、脳裏で夫の姿がチラつくのです。帰ってきたらまず、愛していた夫と愛し合っていた記憶が溢れるのです。




 はぁ(ため息)……明日は少し寝不足でしょうね。

~狩人達


「デカい猪の狩り方を、最長老様から教わりましたが……」


「ムリムリムリムリ、あれは無い」


「だよなぁ、男としてやりたくない」


「でも効果的なのは事実」


「オレ、たまにだけど嫁にシてるんだよなぁ」


「「「…………」」」


「いやいや、ドン引くなって。最長老様から、安全で正しい楽しみ方を教わったから」


「「「…………」」」


「嫁の方から求めてくるんだよ!」


「「「胡散臭いです」」」


「口を揃えて言うんじゃねぇ!」


「いや……」


「でも……」


「だって……」


「「「なぁ?」」」


「お前ら連携バッチリだな!?」

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[良い点] おうっと! 待った甲斐が有りましたぜ! そうですか純愛ですか。 生涯夫は一人とは! [気になる点] 流石にもう慣れたでしょうけど、自分より先に夫や子供が逝くのはきついですねぇ~。 [一言]…
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