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節分の夢2

「……で、ここがそうなの?メルヘンな感じだわねー」

「キャハハハ!」

りぅはじぅの笑い声を聞きつつ辺りを見回してため息をついた。まわりは花畑で蝶や鳥、小川が流れているきれいな世界だった。


「女の子でしたか。毘沙門天様に会いたいのは……」

きぅはピンクの花を触りながら微笑んだ。


「メルヘン少女?がなんで毘沙門天様?」

りぅは考えた。このきれいな世界に想像した「鬼」を出現させるのはなんだかかわいそうだ。きっと今は良い夢を見ているに違いない。


違う方法を考えていると隣にいたじぅが突然動き出した。


「え!?じぅ?どうしたの!?」

りぅが叫んだ刹那、重い金属音が響いた。


「ひぃい!?」

きぅは腰を抜かしている。

りぅはじぅが飛び上がった方向に目を向けた。

目の前に巨大な鬼がいた。誰もが想像する赤い鬼だ。

その鬼が振るった巨大金棒をじぅがつまようじで弾き返していた。


ドール達が使う物はなぜか硬度が増したり不思議な力を使えるようになったりとイレギュラーが起きるためつまようじが金棒を弾き返しても驚くことはない。


「てか、おにー!!」

りぅは反応遅く悲鳴を上げた。


「なんで鬼がこのきれいな世界に!?」

きぅは半泣きでりぅの後ろに隠れ、りぅはさらにきぅの後ろに回った。クルクル無限を描きながら徐々に鬼から遠ざかっている。


「てゆーか、じぅ!がんばりなさい!」

丸投げしたりぅは戦っているじぅを応援し始めた。

じぅは戦闘になると真顔で強力な技を軽く出す。かなり強いのだ。


「普段はずっと笑っているのにこの変わり様……妹ながら不思議ですね……」

きぅは震えながら形だけつまようじを構える。


「どうすんの?じぅにあれを倒させとく?」

りぅははじめから何もする気がないらしい。完全に傍観体勢だ。


じぅはつまようじを軽く振るっては鬼が持つ巨大金棒を弾いている。なぜ、拮抗しているか不思議だ。きれいな花の世界は鬼が暴れているせいで花が散ってしまい、鳥達は皆、世界から逃げてしまった。


「応援しましょう!がんばれー!じぅ!」

きぅが応援していると突然鬼が真っ二つになりホログラムのように消えていった。強烈な風がきぅ達を襲う。


「きゃああ!」

「ひいい!?今度は何!?じぅは倒してないわよ!」

りぅは目を丸くしてさらに顔を青くした。


「大丈夫か?人形……」

鬼が消えた場所から渋い男の声とともに甲冑姿の男が現れた。

手のひらサイズのきぅ達には巨人に見えたが人間の男性より少し大きい男だった。


「え……」

「弐の世界に落ちてしまい帰れなくて困っている。現世に返してくれ。『人の心に影響を与える』人形ならばできるだろう?」

「で、できます……けど?えーと……どちらさま?」

きぅは恐る恐る尋ねた。


「私はある地域の日本人が想像した毘沙門天だ」

「びしゃっ……」

男の発言にきぅ達は言葉を失った。


「ところで早く現世に帰してくれないか?かれこれ一週間近く神社に帰ってないのだよ。高天原の竜宮で七福神の会合後に弐の世界について調べていたら入り込んでしまい元に戻れなくなってしまった」


「そ、そうでしたか。こちらの世界は心毎に世界が違いますし、心に住み、生きた魂を導く霊魂達は姿形を変えて心を行き来して楽しんでますからね……。指標も目印も何もないです。私達のようにすでに想像物ならば感覚でこちらの世界のデータを読めますから対象の弐の世界、入りたい心に入れるのです」

きぅが自慢げに胸を張った。


「そういう機密をペラペラしゃべらない!お姉さま、なんだかわからないけどストーリー通りになったわ!さっさと帰りましょ」

りぅがきぅをピシッと叱り、手を横に広げた。すると世界を裂くように空間が割れ、『お人形ランド!』の床が奥に見えはじめた。


「キャハハハ!キャハハハ!」

じぅは戦闘が終わり、元の陽気に戻った。ケラケラ楽しそうに笑っている。


毘沙門天の男はりぅが出したホログラムのような空間を興味深そうに眺めていた。

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