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ブンバボンバの神?3

「えーと……まずは……このお年玉の子供の厄を……」

宮子さんがもごもごとデータを見ながらつぶやく。データはパソコンもないのに目の前に写し出されている。


「お年玉の厄って何よ?」

花子さんが半分笑いながら尋ねた。


「お年玉がもらえなかったからお年玉くださいと願いに来た子供の気持ちが沈んで厄になったみたいですね」


「はあ?ちっさいわね。そんなんで厄になるわけ?」


「相当ショックだったみたいですね。夢の世界の方で、もやもやと大きくなってるみたいです」

宮子さんと花子さんが話していると黒い髪を短く切り揃えた少女人形桜子さんが話に入ってきた。


「宮子と花子ふたりで行くの?私も入れてよ!三人一組にしない?」


白いベレー帽を被り直して赤いドレスをなびかせた桜子さんは宮子さんと花子さんの間に入り込んできた。


「三人一組ですか。それはいいですね。他のドールも人数が合います」

「桜子!さっさと行きましょ!腕がなるわ!!」

花子さんはやる気満々で宮子さんと桜子さんを引っ張った。


「ああ!待ってください!では夢の世界へ行きましょう」

宮子さんは慌てて手を広げた。

手を広げた刹那、モヤモヤとモザイクがかかったような空間が出現した。


他のドールも同様にチームを作り同じ空間を作っている。


「あ!そうだわ!これ作らなきゃね!」

この空間は夢の世界や霊魂の世界とくくられる事が多い弐の世界である。


現世を壱の世界と呼ぶためこちらの世界を弐と呼ぶようになったのか。理由はわからないが想像物や妄想物なんかは楽々と弐の世界に入り込める。つまり、動く人形は弐の世界のものと言っても良い。


故に彼女達は弐の世界をこうも簡単に出せ、抵抗なく中に入れる。


「では、この子供の夢の中へ」

宮子さんが軽く息を吐くと花子さんと桜子さんも足を空間へ向けた。


「せーのっ!」

花子さんがふたりの手を掴み空間へ飛び込んだ。

世界が反転し、気がつくとロボットが沢山うごめいている機械的空間に宮子さん達は立っていた。


「おー!機械だ!かっこいー!男の子なの?その子は」

桜子さんが目を輝かせながらメタリックなドラゴンが羽ばたいていくのを見つめる。


「はい。男の子ですね。お姉さんと『お人形ランド!』に遊びに来た時にブン様の神社で手を合わせたようです」

宮子さんがデータでもう一度確認した。


「なんでお年玉もらえなかったのかしらね?」

花子さんがメタリックな建物を眺めながらため息をついた。


「それを解明しなければ厄を消せませんね……ん?」


宮子さんが辺りを見回していると巨大なドラゴンがこちらに飛んできていた。金属でできており、あちこちに歯車が見える。どこかのアニメの影響だろうかやたらとかっこいい。だが、敵意をむき出しにしているのでヒーローではなさそうだ。


「あいつ、襲ってくるよ!」

桜子さんの叫びに宮子さん、花子さんはすばやく手から魔法の杖を出現させた。この世界は弐の世界なのでなんでもありの夢の世界だ。


「あのドラゴンが少年のアバターだわよ。たぶん」

「では、聞き出しましょう!戦いつつですが……」

杖を構えた三人はドラゴンが吹いた炎を結界のようなシールドで防いだ。


「どうやるの!?」

「話しかけましょう!相手は当たり前ですが相当怒っています!」

桜子さんに宮子さんは必死に答えた。


『ウガー!!なんでお年玉ないんだよ!!じぃちゃん、ばぁちゃんちにいけないなんてありえねーし!』

少年の声のドラゴンがご丁寧に話してくれた。


「ああー……祖父母のお宅に行けなかったのですか……」

「おじいちゃん達はお年玉じゃないわよ!!」

花子さんがドラゴンに向かって怒鳴りつつ電撃の魔法を放ってみた。しかし、飛んでいった電撃の玉はドラゴンにさっと吸収されてしまった。


「あ……吸い込まれた!!じゃあ次は……」

「待ってください、まだなんか話してます」

杖を構えた花子さんを宮子さんが止め、ドラゴンを指差した。

ドラゴンはボソボソとなんか言っていた。


『わかってるよー!雪でじぃちゃんちに行けなかったんだ!じぃちゃん達に会いたかった!』

ドラゴンは暴れて再び火を吹き始めた。


「祖父母に会いたかっただけのようですが、大雪で行けなかったみたいですね」

宮子さんはシールドで炎を抑えながら残りのふたりに説明した。


「とにかく攻撃をやめてもらう!」

桜子さんは水流を杖から発してドラゴンに攻撃した。


「電気がダメで炎を使うなら水に弱いっしょ!少し大人しくさせたる!サビにも弱いはずだし」

水流はドラゴンの腹部を直撃した。機械ドラゴンの動きがゆっくりになった。


と同時に黒いモヤが水蒸気のようにのぼり、煙のように消えていった。


「あ!厄が出た!」


「あの厄は厄除けの神が処理するとして……少し怒りが飛んだでしょうか……」

三人が見守っていると少年と思われるドラゴンがゆっくりうなだれた。


『皆でワイワイする正月が良かったのに……最後にお年玉もらってじいちゃん、ばぁちゃんと一緒にオモチャ買いにいく予定だったのに……なんでかわりに人形見に行かなきゃならないんだ!』


少年の怒りに宮子さん達は「あれ?」となった。


「なんか怒りが私達に向いてません?」

「なんか違う怒りになったわね……」


「でもこれは好機!だってブンちゃんの神社は縁結び!お人形ランドに来たからお年玉も祖父母にも会えたってシナリオにしたらいいっしょ!」

桜子さんの言葉に宮子さん、花子さんも「おー!」と拍手をした。


「とりあえず怒りの根元と厄が出ていったので後は結びつけるだけですね。戻りましょうか」

宮子さんは軽く微笑むとモザイク空間を再び出し、さっさと空間に足を入れた。


あっけなく壱の世界、現世に戻り、なんにも変わっていない「お人形ランド!」の鳥居前に帰ってきた。

目の前に建つブンちゃんの社前に立った三人はブンちゃんを呼んだ。


「ブン様!」

「ブンちゃん!」

「なーんだよ!忙しいっての!」

ブンちゃんはすぐに返事をしてきた。


「ブン様!縁結びのお仕事です!この少年の厄を払いましたのでお年玉とおじいちゃん、おばあちゃんがこちらに来るように縁を結んどいてください」

宮子さんがやや雑にデータをブンちゃんに送る。


「……わかったよー……。頑張るよー……だから縁結びなんてやったことがないんだよ……」

ブンちゃんは渋々納得した。


「これでひとまず私達の仕事は終わりました。今回はちょろかったですね」

「まあ、なんか荒い気もするけど……」

宮子さんに花子さんがため息混じりに呟いた。


「まだまだ沢山あるんだからこんなもんで次に行こうよー!」

桜子さんはやる気満々でにんまり笑った。


※※


朝、変な夢を見た。人形が自分の話を聞いてる夢だ。


あんなわけわからない人形が展示されている施設なんて行ったからだ。実際に少し不気味で怖かった。歩いて行ける場所にあるのは知ってたけど小三じゃあ行かないよ。しかし、あの人形にねぇちゃんは喜んでたな。


変な神社まであったし、俺はなんであんなわけわからん神社にお参りしたんだろうか?


しかもあれが初詣になってしまった……。


そもそも、雪が降らないこの地方で雪が降ったことが問題だ。雪が降らなければいつも通りのお正月だったんだ!


まあ、パパとママが雪道の運転ができなかったから仕方ないんだけど……。


でも……なんか……。


「まさゆきー!って、え?なんで泣いてんのよ?」

「うるせー!!ノックしろよ!!」

なんか三つ上のねぇちゃんが部屋に入ってきた。最悪だ。見られた……。


「じぃじ、ばぁばがうちに来たよ?」

「うるせーよ!!」

って……

ん?


「ねぇちゃん……今何て言った?」

「はあ?だからじぃじ、ばぁばが来たよ。正月遅れちゃったけど雪が溶けたからタクシーでうちに来たんだってさ」


「え!マジ!!ぃやったー!!」


こんなことがあるのか!!

喜びの間でお年玉に掠れて縁結びという文字が浮かんできた。


あ……。


まさか、あの神社でお参りしたから……。


嘘だ!

なんか気持ち悪っ!


まあ、なんだかんだ言って最高のずれた正月になった。

とりあえずあそこの神様にお礼言っとく。

「ありがと」

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