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最終話十二月だよ!クリスマスの夜3

神田の世界から戻ったブンちゃんはぼうっとしていた。


「ブンちゃん?嫁入り前の私をもっと見てよー!」

「ああ……神田と仲良くな……」

ピンクの鳥居の前でブンちゃんは気のない返事をした。

「さみしーのかなー?」

「寂しくねーよ……いつでも会える」

「認知されないのにー?」

みぃこの言葉にブンちゃんはため息をついた。


「そういうもんだ……」

「そうかー」

みぃこの返事を聞き逃しながらブンちゃんは羽織の袖からみぃこの人形を取り出した。


こちらは今動いているみぃこではなく、ブンちゃんが作った巫女さんのドールである。姿が見えない神が持っているのでドールも見えない。世界が辻褄を合わせるために人に見えない神が持ったものは神々のデータに括られるので見えなくなるらしい。


「神田……そろそろ出勤だな……」

ブンちゃんはつぶやくとみぃこドールをそっと『お願いボックス』の上に置いた。神田はいつも朝一でお願いボックス周辺の掃除をする。見つけてくれるはずだ。


しばらくして神田がやってきた。

あの夢のような格好ではなく、コートにマフラー、ブーツなどで暖かくしている。


「ふんふーん……」

下手な鼻唄を歌いながら近くにある掃除用具入れからガシャガシャと箒などを出していた。


「さあ……気づけ……神田……お前の心をみぃこに映し出せ……」

ブンちゃんが小さくつぶやき、神田を観察する。神田は箒とちりとりで軽くゴミを取ると拭き掃除を始めた。


「……あれ?」

神田が『お願いボックス』周辺を掃除し始めてから人形に気がついた。

「……この人形……」

手のひらサイズの人形はニッコリ笑っていた。


「わあ……かわいい!……誰かの忘れ物?けっこう質のいい髪をしてるなあ……」

神田が人形を隅々まで見ていると『お願いボックス』に紙が一枚だけ入ってるのに気がついた。


「……ん?」

拾い上げて読んでみると

……怪しくないからもらってやってください。

と書いてあった。


「……怪しくないからって……。まあ怪しいけど……じゃあもらおっと……。超かわいい!リカちゃん人形みたい。隠れドールコレクターの血が騒ぐわ!サンタさんからのプレゼントだ!!」

神田はみぃこを近くにいた従業員の男に自慢していた。男と神田はなんだか仲がとても良さそうだった。


「……ああ、そうかよ……」

ブンちゃんはひとりつぶやく。

「あいつにはもう男がいたのか……」

なんだか清々しい気分になった。これから神田はあの男に守られていく。これでいいんだ。


「みぃこ!神田を守れよ」

「もちー!」

みぃこはブンちゃんの肩によじ登ると元気に手を上げた。こちらのみぃこは霊体である。

ブンちゃんは去っていく神田を見据えながら

「ありがとう」

とつぶやいた。


「なーんだ!結局別れたんだ?」

ふとロクの声がした。嫌な予感がしたブンちゃんは後ろを振り向く。社前にドール達が集まっていた。


「……お前ら……」

「で?どこまでやったのよん!」

シャインが腕を組みながらイヤラシイ目を向けてきた。

「どこまでもやったんじゃないですかあ?」

いつよしくんが揶揄するように笑う。


「……あー!もううるせー!!また無駄に集まりやがって!」

真っ赤になったブンちゃんは鼻息荒く叫んだ。


「みぃこ、見てたんでしょ?どこまでやってた?」

花子さんがみぃこに期待の目を向ける。

「んー……途中で飽きちゃったからブラブラしてたー。だからわからんー」

みぃこの呑気な返答に花子さんはずっこけた。


「それより!クリスマスは終わりました!次はお正月です!またお願いが入ります!気合いを入れてください!」

宮子さんがブンちゃんに言い放った。横にいたきぅも声を上げる。


「それより皆でクリパしましょうよ」

「ゲーム何やる?」

りぅが口説こうとするイチを払い除けながら尋ねた。


「マリパ!マリパでござい!」

「マリカのがいいでごじゃる!マリカ!」

ムーンとリンネィがどうでもいい内容で戦い始め、ブンちゃんは頭を抱えた。


「何の戦いだよ……それ」

「あのー……私は桃鉄のが……」

流された宮子さんまで会話に参加を始めた。だんだんと人形達はクリスマスパーティーに頭がいき、なんだかわからないがすごく盛り上がった。


「クリスマスは終わったんだよ!俺の神社で遊ぶな!!俺は『お人形ランド!』を守る神、ブンバボンバ之神だぞ!!仕事だ……仕事をしろ!!」

「……まあまあ、ブンちゃんもやるー?マリカ」

はーちゃんがブンちゃんのやる気を削ぎ、変な方に修正した。


「ほれ、これ着けるよのさ」

雪子さんが素早くサンタ帽子をブンちゃんに被せる。


「んなもん被らせんな!!……たく!やる!やってやるぜ!お前ら全員、カメとバナナの餌食にしてやるからな!!覚悟しろ!」

「かかってきなさい!溝走りでカッコ良く決めてやるわ!紙コップの水なんて一滴もこぼさないんだから!」

ブンちゃんとりぅはなぜかにらみ合いを始めた。


「……あのー、溝走りもコップも違うような……」

きぅの控えめな声を丸無視し、ブンちゃん達は社内に入っていった。子供達がサンタのプレゼントに気がつく時間にブンちゃん達のクリスマスパーティーという名のゲーム大会が始まった。


「……ほんとは騒いじゃいけない日なんだけどなあー……クリスマスなら」

みぃこは遠くで苦笑いをしていた。


……俺はこれからも『ここ』を守るよ。俺はここで生まれた……ブンバボンバ之神だから……。


おわり。

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