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ハロウィンの恐怖1

十月。

秋の虫が鳴き始め、涼しいというよりも寒くなってきた。


ここ、お人形ランド!ではハロウィンの準備が行われ始めている。


「おー、カボチャ……」

なんだかおどろおどろしいカボチャを見上げながらブンちゃんは柿をかじる。

お人形達もハロウィンだからか魔女の帽子を被らされたりオレンジ色の服を着させられたりなどハロウィンの餌食になっていた。


従業員の努力なのかなんなのかわからないが最近、少女だけではなく夕方近くにはカップルもよく見かけるようになった。


カップルはブンちゃんの神社の横にある人通りがほとんどない従業員用の階段付近でなぜかだいたいイチャイチャする。


ここ最近のブンちゃんはカップルがキスやらの健全な行為に及んでいる目の前で柿を食うのがブームだ。ブンちゃんは人間に見えないので当たり前のようにこれを始めた。

悲しいブームではあるが。


ハロウィンからクリスマスにかけてカップルも多くなると予想されている。

もちろんブンちゃんの神社の賽銭箱……もといお願いボックスにもカップルからのお願いが投げ込まれることも多くなってきた。

ブンちゃんは柿を食いながら片手間でお願いを読む。


「……」

……あのこのピーにピーできますように。

……おにぎりひゃっこたべたい。ピーもなめたい。

……夢でもいいからピーしたい。

……ピーの世界でピーしまくりたい。

……ピーからピーへ受け流したい。


「……」


ブンちゃんは柿を食いながらそれらをそっとお願いボックスに戻す。

ほとんどがイタズラみたいなお願いだ。なんだか最近は卑猥なものも増えている。一部の心が汚れているカップルの仕業のようだ。


「ピーからピーへ受け流したいってどういうことだ??最近はませたガキのカップルもよくここに来やがるからそいつらか……?」


ここお人形ランド!は格安だ。少し高めなテーマパークに行けない子供のカップルが主に来るらしい。もちろん大人のカップルもいるが彼らは一通り流してきているためこんなヘンテコな願いは入れない。こんなことを書くのはまだ経験のない青臭い子供だ。


「それに比べてこっちは……」

ブンちゃんは違うお願いを取り出す。


……かなえとの第一子が授かりますように。

……たか君からプロポーズされますように。

……お受験合格!

……パティシエになる夢が叶いますように。

……田中先生と結ばれますように。

……世界が平和になりますように。


「……最後は重いな!!縁結びかもわからない曖昧な神に世界中の縁を結べと言うのかよ!……たく」

ブンちゃんはこちらのお願いは大事そうに手で包んだ。


「ブン様?カムハカリには行くのー?」

ふと下から声がかかった。

いままで何度もあったが下からの声かけはつくも神のように動くドール達だ。


案の定、ブンちゃんが下を向くと銀髪の男の子ドール、ロクが微笑みながら手を振っていた。


「ロクか……カムハカリにはいかねーよ。俺が行ってもわからん話になりそうだからな」

「ほー……行かないんだ?」

「行かない」

ブンちゃんの言葉にロクは再び「ふーん」とつぶやいた。


「それよかな、俺、いいこと思い付いたんだよ」

ブンちゃんは邪悪な笑みをロクに向けた。


「え?何々?」

「今、カムハカリに行ってる神が多いなら少々ハロウィンやっても平気だ」


「はい?」

「つまりだ……この酷いイタズラな願い事を書いたやつを懲らしめてやんだよ。神は祟る奴もいるってことをこいつらは知らない。なめてやがる。道を踏み外す前にちょいとお叱りをな」


「ブン様、でもそれさ、上から怒られるんじゃ……?ブン様のデータにはそっちの方面は皆無だから」

ロクは首を傾げた。


「……だから、カムハカリだろ。いねーじゃん?」

凶悪な笑みを浮かべるブンちゃんにロクはイタズラっぽく笑った。


「なるほど。おもしろそう!乗った!」

「なー!なー!なんか楽しそうだな!俺も混ぜろォ!!」

ふともうひとり銀髪の少年ドールが現れた。


「あ、兄貴……。兄貴も行くのかよ」

ロクはため息混じりにつぶやいた。もうひとりの銀髪の少年はロクと対になっているドールのイチだ。一応、ロクの兄である。


「仲間外れはよくないぜぃ!俺も行くー!!」

「行くって言っても特定のカップルがわからんとなあ……」

「あ?これ、全員同じやつじゃねーの?字が一緒じゃんよ」

イチはブンちゃんが捨てた卑猥なお願いを再び拾い上げた。


「ふむ。確かに同じだねー」

ロクもお願いの文字を照らし合わせて唸る。


「同じやつだったのかよ!!くっそー!!えー……誰だ?今日は来たかな……」

ブンちゃんは必死に思い出す。

印象に残らなければ神も思い出せない。


「思い出せねー……ガキのカップルはいた気もするが……って……そいつらか!!」

「そいつらだね」

思い出したブンちゃんにロクはすぐさま答えた。


「でもよー、ヤるにしても恐怖を与えすぎたらブンちゃんが祟り神っぽくなっちゃうんじゃね?」

「……ヤるとか言うなよ……。こえーよ……。じゃあ今回はお前らに任せるよ。上手くやってくれ」

ブンちゃんはイチとロクを交互に見て頷いた。


「今回はっていつもじゃねーか」

「まあ、そう言うなって……」

「それよりさ、宮子さんが言うには三人一組が理想なんでしょ?ブン様が入らないならもう一人スカウトしないとさ」

ロクが辺りを見回した。


「あー、それならそこにみぃこが……」

「ん?」

ブンちゃんが指を指した先で黒髪長髪の巫女さん衣装の少女ドールがこちらを向いてにたぁっと笑っていた。


「みぃこ……おい、このチームで大丈夫か?」

イチは顔色を青くしながらロクに目を向ける。

「ま、まあ……懲らしめる感じなら多少ヤンチャしても……」

「変な事はすんなよなー……」

ブンちゃんは不安げな顔を向けた。


「んじゃ、ちょっくら行ってくる」

不安げなブンちゃんをよそにイチは悪そうな笑みを浮かべ、例のカップルの世界を出した。

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