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月夜のイケメン3

ヘロヘロで『お人形ランド!』に戻ってきたブンちゃん達を迎えたのは何も知らないいつよしくんだった。


「やあやあ、皆、ご苦労だったな!うまくいったぜ」

「……お前は上手くいったかどうか人形だからわからないだろうが……」

ブンちゃんはじろっといつよしくんを睨み付けた。


「ブンちゃんのモノマネですよぉ!で?なんか疲れてますけど大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃない……」

抜けているいつよしくんにブンちゃんは頭を抱えた。


「まあ、うまくいったんじゃない?神田は喜んでた!」

うるこが隣で手を叩いて爆笑していた。


「ブンちゃん、上手くいったか確認するよのさ」

雪子は呆れた顔のまま大きく伸びをした。なんだかどうでもよくなったようだ。


「ああ……上手くいったみたいだな……。俺の醜態が良かったのか……?」

「それよかブンちゃん、なんか変な羽織着てますけど。袴はいいとして……」

いつよしくんはブンちゃんが羽織っているお人形ランド!の羽織を指差した。


「ま、まあ……一応和服はゲットしたんだ……神田から……」

「かんだ?」

ブンちゃんが眉をぴくつかせていつよしくんから目を離した。


「あ!」

突然、うるこが声を上げた。

「なんだよ……」

ブンちゃんが機嫌悪そうに振り向くと目の前に神田がいた。


「う、うげ!!神田!」

神田は人間なので現実世界ではブンちゃんは見えない。

無茶苦茶近くに神田はいた。


「ま、待て待て!もう従業員はいないはず……夜の十時過ぎだぞ!」

「はあ……明日のお月見イベントの準備してたら寝ちゃったわ……。帰ろー。っと、そういやあ、ここの神様が……」

「近い近い近い!」

神田はブンちゃんが見えない。

ブンちゃんと神田は肌がふれ合うギリギリだった。


「……あれ……なんか……あったかい……」

神田は不思議そうに目の前の空間を触っている。


「ちょっ……」

目の前にいるブンちゃんは顔を真っ赤にして神田から離れようとしていた。


「あーあ、お似合いよのさ……」

「ブンちゃん、お幸せに!!」

「あー!ちょっ……行かないでー!助けてー!」

雪子は呆れたまま、うるこは目を輝かせたまま去っていった。ブンちゃんは悲鳴をあげつつ二人に助けを求めたが二人が振り返ることはなかった。


「きっとここにあのイケメン神が!!」

神田は顔を赤らめてそこにいるであろう神様に身を寄せる。


「いや……あの……だ、誰か!」

「いーじゃないですか。もっふもふですよぉ」

焦るブンちゃんにいつよしくんはクネクネ不気味に動きながら興味津々にワケわからん言葉を発していた。


「ちくしょう……突き放すわけにもいかねーじゃねーか……」

ブンちゃんは神田を引き寄せ、神田の気が済むまでそのままでいた。

やがていつよしくんがイビキをかいて寝始めた頃、神田が我に返った。


「もう帰らなくちゃ!イケメン神を妄想してる場合じゃない!!」

「あ、神田……」

神田はブンちゃんから離れると近くに置いていたバッグを肩にかけて歩き出した。


「こんな夜遅くに女がひとりで……ちっ……送ってってやるか……」

ブンちゃんは羽織をなびかせて神田を追った。

お人形ランド!を出ると満天の星の中で大きな真ん丸のお月様が輝いていた。


「いい月夜だなー!いい月夜にイケメンの神様!最高じゃん!明日は休みだしリアル彼氏でも探すかあ……」

神田は微笑みながらスキップしていた。誰もいなかったからだ。


「……だよな……。俺は見えねぇからな」

神田の後ろには少しせつなげなブンちゃんが月夜に照らされながらユラユラと歩いていた。


……こんな羽織だったけど神田がいてくれて感謝するぜ。


ふと神田のバッグから一枚の紙が落ちた。ブンちゃんは慌てて拾う。


「……」

その紙にはこの羽織に袴を着た自分がそのままに描かれていた。

「はっ!」

ブンちゃんは軽く笑う。


神田……。

ありがとよ。

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