七夕花火大会3
ブンちゃんの社に三人はため息混じりに帰宅した。
「あーあー……」
「こりゃ、終わったでござい……」
依頼主の親に直接話ができなかったことが三人を落ち込ませていた。
「あー、お前らか!おかえりー!なんとかしたみたいだなあ!ははは!」
その時、楽観的なブンちゃんの声が聞こえた。
「……え?」
落ち込んでいた三人が顔を上げた。
「なんとか……なったのかしらん?」
シャインが疑惑の目でブンちゃんを仰ぐ。
「なった。なった。それよりこの笹を支えてくれ!倒れる!」
「笹だけに……支えるでごじゃるな。態度が投げやりすぎて疲れたでごじゃる……」
リンネィはため息混じりに手を振って去っていった。
「あ、おーい!」
「じゃ、なんとかなったなら私達も行きましょうかしらん?」
「行くでござーい!」
「あー!ちょっ……」
シャイン、ムーンもなんだか安心しつつ、特に確認もせず、あっという間に去っていった。
「そっちはなんとかなったがこっちはなんとかなってなーい!!冷たいぞ!お前ら!ドライすぎるぞ!お前ら!」
ブンちゃんが慌てて叫んだ刹那、笹の中からみぃこが顔を出した。
「あー、ブンちゃんー、飾りの半分ー、おたきあげしといたーよー」
「なんで!?まだ七夕来てないじゃねーか!お前、みぃこだな!」
「うんー、ブンちゃん困ってたからー」
「……はあ、なんかナナメ上だよな……お前……」
みぃこの言葉にブンちゃんはため息をついた。
「いえーい!これで軽くなったーパチパチー」
ぼんやり棒読みなみぃこにブンちゃんはさらにため息を重ねた。
※※
「あー!!あー!!」
私は楽しかった夢から連れ戻されて大泣きしていた。
いつもの布団の上だったが朝ではなさそうだ。真っ暗。
暗いのはあまり好きじゃない。
とりあえず、また重ねるように「ぎゃー!ぎゃー!」
と泣いてみた。
隣で寝ていたパパとママが慌てて駆け寄って私を抱き上げてくれた。
二人とも私のせいでいつも寝不足だ。なんだか毎日眠りのバランスがわからなくて同じ時間に泣いてしまう。
私はまだ言葉を持たない。
ママもパパもなんで私が泣いているのかわからないみたいだ。
言葉で言わなきゃわからない。
わかってる。
だから言葉をしゃべる勉強をしてるんだ。
ママとパパはどうやって話せるようになったんだろう?
どうやればあのきれいなお花が見られるのか……。
伝えられない苦しみでまたイライラしてきた。
私には泣くことしかできない。
「なんで突然?夜泣き?」
パパが寝ぼけ眼でママを見ていた。
「怖い夢、みたのかな?なんか怒ってるし……」
「な、なあ、実はまーちゃんが花火を見て笑ってる夢をみたんだよ」
「……今、その話?とりあえず泣き止ませないと!」
ママは焦った顔でこちらを見ている。でも、泣き止まないよ。
パパ……。もう一回だよ。さっきの……もう一回言って!
「でも、すっごい印象的だったんだよ。あの夢。花火見に行きたいのかな……。うん!まーちゃん、花火見に行こうなー」
「もー!呑気に関係ない話しないで!泣き止まないじゃない!」
「泣き止んだけど……」
私はとっくに泣くのをやめていた。願いが叶いそうだからだ。
「ええ!?なんでまた突然に泣き止んだの?……やっぱり花火……」
ママも気がついたのでパチパチと拍手をしてみた。
これ、上手にできたときにするんでしょ?
「おー!上手!上手!ってやってるよ」
「ほんとかしら……。まあ、花火見るくらい何とかするわ……。わかった……いきましょ」
ママが私を抱っこしながら頭を撫でてくれた。
満足だ。
えーと……お礼はなんて言うんだったかな……。
ああ、そうそう……。
「あにあろ」
「ん!?」
「いま、しゃべった!?ありがとって言った!!!言ったよね??」
「言った!言った!まーちゃん、もう一回!」
パパがおねだりしてきた。
大丈夫。
これは覚えたんだから何回でも言えるよ。
「あにあろ!あにあろー!!」