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アジサイと点滴3

「ふー……」

宮子さん達は同時にため息をついた。

なんとかブンちゃんの社まで帰ってくることができた。


「今回は……うまくいったのでしょうか……」

「……みいこのあれ、いた??てんてきまん」

心配そうな顔の宮子さんに花子さんは首を傾げた。


「いらなかったかもしれないなあ」

桜子さんが苦笑いをしながら答えた。


「てか、みいこは?」

「どっかに行ったのではないですか?」

「けっこうザックリだね……」

三人がホッとしつつ、不安げに会話をしているとげっそりしたブンちゃんが社の脇から出てきた。


「あー、お前らかー。ま、なんとかなったみたいだぜ……」

「あー、そう……。それよりなんでそんなゲッソリ?」

桜子さんが疲れがたまった顔をしているブンちゃんに尋ねた。


「キノコの発生が止めらんねーんだよー!ちなみにこいつはシメジじゃなくてシメジみたいな毒キノコらしいし……」

ふと見ると雨漏り現場にはどっかのホテルで使われてそうな風呂桶が置いてあった。「なんとかヤ」とか書いてあるが古いものなのかかすれて読めない。


たぶん、鳥さんが関係するホテルだろう。


そんなものがなんでここにあるかわからないが雨漏りを必死で食い止めているようだ。


「これから大雨注意報だぜ!お前ら……俺を助けてくれ!俺のお願いを聞いてくれよー!」

「あー、ごめん。ムリ」

「私は秘書なので……」

「いやよ。食べられないキノコの世話なんて!」

ブンちゃんのお願いは三人にそれぞれ捨てられて終わった。


「雨漏りが滝になっちまうよぅ!!えーん!」

それぞれ去っていく三人にブンちゃんの目にも大雨注意報が出たのだった。


※※


「あゆちゃん、ごめんね……。遅くなった!」

「あゆみ、今日は退院だな!」

小児病棟の一室でぼんやりしていた私はママとパパの声に振り向いた。


今日退院なので点滴は外してもらった。元々、ちょっとヒビが入った左手を放置していたため念のための入院だった。


「ぱぱ……まま……」

「ごめんな、気がつかなくて……お姉ちゃんになろうとしたんだよな……。だから言わなかったんだろ?」

パパが私の頭を撫でてくれた。


私はちょっと泣きたかったけど我慢した。今日退院なのにお外と同じジメジメはやだったから。


「大事なことはちゃんと言っていいんだよ……。ごめんね。ママも悪かった」

ママに優しくそう言われたらなんだか我慢できなくなっちゃった。

大泣きにはならなかったけど、ママに抱きついて泣いちゃった。

ママはぎゅっと抱きしめてくれた。

なんだかホッとした。


あ……!聞かなきゃいけないことがあった!!

昨日の夢でお人形さんから言われた言葉。


「ねぇ、ママ……。ママは大丈夫?」

鼻水と涙で声がおかしかったけどママは軽く微笑んでくれた。


「なあに?ママは大丈夫。あゆちゃんが入院して心配で寝られなかったんだけどみぃちゃんが珍しく大人しかったから、面会に来ることができた。みぃちゃんもあゆちゃんを心配してたんだよ。でも、ほんとに無事で良かった。色々悪い方ばかり考えちゃって退院まで私、ごはんも食べられなかったよ。ほんとは毎日でも来たかったんだけど……」


「……そっか。私はやっぱり」


……愛されてたんだ……。


ママの答えに涙が止まらなくなった。


「おいおい、泣くなよ。退院なんだからジメジメした話はやめて皆でおうちに帰ろう」

パパがこっそり親指を上にあげた。


「うん!」

「明日はつかの間の晴れみたいだからアジサイ見に行こう!」

ママの言葉に私は「おー!」と病院だから小さい声でギプスをしていない方の腕を上に振り上げた。


そういえば昨日の夢は……とても大切だった気がする……。


神様へのお願いが届いたのかな?


きっとそうだ!

お礼を言おう!


「ありがとうございました!」

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