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6話 ちぐはぐ

どうしてルウを盗賊にしたのか自分でも不明?

「怪我はありませんか?」

 アレクが助け出した女性に尋ねる。

 だが、尋ねてすぐに女性の背中に爪によって出来た怪我に気付く。


「セレン」

 アレクが声を掛けてくれて良かった。


 ……………それが無かったら自分は何をすればいいのか分からず途方に暮れていた。


 怪我を回復させようとその女性の傷に触れようとするが、それを水色の狐が止める。


 こ~ん


 狐が鳴く。


「ティル?」

 戦闘を終わらせたルウが近付く。


「ああ。そうか」

 教えてくれてありがとう。

 ルウがキツネの頭を撫でると狐はバタバタと尻尾を揺らす。


「サーシャ」

 ルウがサーシャを呼ぶ。


「………ありますね」

 サーシャが女性を見て告げる。

 あれ? 敬語?


「……来い」

 サーシャの声。


 その声に合わせるように、女性の身体から黒い靄みたいなのが出てくる。


「回復魔法」

 ぼそっ

 シャイアが告げる。


「あっ、はっ、はいっ!!」

 もういいんですね。分かりました!!


 回復魔法を掛ける。女性の顔色が少しずつ良くなってくる。


 それに安堵の溜息を吐いている視線の先。そこではサーシャが黒い靄を一瞥して、

「っ!!」

 苦しげな顔を浮かべて、耐えながら埋め込んでいく。そして、完全に埋め込んで取り込むと苦痛で歪んでいた顔が何もなかったように戻っていく。


 ルウが気を遣う顔になったのは一瞬。だが、すぐに、

「あっ!! 回復魔法してくれたんだっ!!」

 助かる。そうお礼を告げてくるルウに、

「いえ……これ位しか………」

 出来なかったので……。


「いや、助かるよっ!! 俺ら誰も回復魔法出来なかったし!!」

 そう告げて笑う顔は本当に助かったと書かれていて……悪意など全く見受けられない。


 足手纏いにしかならなかったのに。


「………聞きたいのですが」

 アレクが口を開く。


「君は本当に”盗賊”ですか?」

 にこにこと微笑んでいるが、その目は笑っていない。


 疑っている目。


「君の戦い方を見ましたけど、君の戦い方は盗賊と言うよりも……」

「……えっと……一応盗賊だけど」

「それにしては前衛での戦い方は盗賊としては綺麗すぎです」

「………」

 ルウは考え込み。


「綺麗?」

 そうかな~。

 と首を傾げている。


「もっと長い武器で……剣であればいいと思われる動きもみられました。なんで盗賊で登録したんですか」

 勿体ない。


「…………えっと」

 ルウが困ったようにサーシャとシャイアを見る。


 二人は目くばせし合い、サーシャがため息を吐いて、

「………ルウの戦闘スタイルに合う武器が見つからないんだ」

 と告げる。


「見つからない?」

「ああ。――剣の戦闘スタイルじゃないんだ。ルウの戦い方は」

 だから、剣士にはならなかった。なれなかった。


「ルウに合った武器が見つかれば、登録し直すだろうけど、今の段階では」

「盗賊。ですか……」

「ああ。一番近いのがそれだったんだ」

「そうですか………」

 その説明を聞いて、

「――そういう事にしておきましょう」

 ぼそっ

 そう。納得していないがそれ以上は”今”は詮索しないと告げる。


「お前……正規の魔術師じゃないな」

 今度はグレミオが口を開く。


「……魔法使いだって」

「そうだな。”魔法使い”なら”魔術師”とは違うな」

 …………どういう意味だろう。


「アレクさん? 意味、分かりますか?」

「魔法を使える者は幾つかの呼び方をされてます。魔法使い。精霊使い。そして、魔術師。精霊使いは精霊と契約を結んでかの存在の力を借ります。そして、魔法使いは精霊の力を借りず、自らの魔力とありとあらゆる自然の中にある魔力が強い者を媒介にして魔法を紡ぎます。――魔術師は、魔城と呼ばれる場所で学んで魔法を使えるようになった者達の呼称です」

「えっと、それが……」

 一体どういう事でしょうか。


「……魔術師はあらゆる国の中枢に入って政治に口出している者もいて、その者らは魔術師以外の魔法を使える存在を()()()()、悪しきモノとしているんですよ」

 それ故に、

「魔法使いや精霊使いは捕らえて役人に渡す事が義務付けられています」

「……国によるし、冒険者はその括りに入ってない」

 シャイアが口を開く。

「他人事ですね?」

「………精霊使いは魔術師が捕らえたくても見逃されているからな」

 神話のおかげで。


「…………神話」

 神殿で学んだ。


 この地に災い訪れる時。

 神は勇者を呼び。

 聖人は勇者を支える。

 

 精霊王が聖剣を持っており。

 精霊使いは精霊王と勇者の繋ぎを取る。

 

 精霊使いが居なければ聖剣はこの世に出てこないし、精霊王も表に出ない。


 そんな神話だ。


(汚泥の勇者……)

 神託にあった勇者。

 神託が下されたという事は勇者はどこかにいる。

 そして、勇者が居る限り、精霊王も聖剣もどこかにある。


「…………精霊使いは神話もあって、保護する必要がありますね」

「そうですね。――だけど、魔法使いはその括りには入らない」

「…………」

 グレミオさんが騒ぐわけだ。


「……くだらない」

 サーシャが呆れたように告げる。


「使える者なら使う。それが民のためになるなら。そう割り切ればいい。お堅い考えではうまく回らない」

 そう喚いてもいいが、冒険者でそれをするのは阿呆としか言えないぞ。


「それであんたの()()()の立場が悪くなるのも気にしないならしてもいいけど」

「ぐっ……」

 言い負かされる。


「グレミオさんが申し訳ありません」

 頭を下げると。


「いや、あんたが頭を下げる必要はない。あんたのフォローをするために派遣されたのに暴走してるこいつが悪い」

 はっきり告げるサーシャに。


「あたしの事でやっぱここでやるのは止めとくというのならやめていいけど」

 挑発。


「――いえ」

 微笑む。


「わたくしが世間知らずだったと痛感させられました。――足手まといになりますが、これ以後もよろしくお願いします」

 深々と頭を下げると。


「さすが、レンファ―レンの姫様」

「あら、何でわたくしの身分を」

「普通分かるから」

 サーシャの突っ込み。






「……”聖女”様だな」

 ぼそっ

 誰かが呟いた言葉は風により誰の声かも判断できずに、消えていった。

 



新月のメンバー

リーダー・ルウ(盗賊?)

     サーシャ(魔法使い?)

     シャイア(精霊使い)

     テイル(?)(使い魔) 


 になっております。

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