4話 結成
準備前が遅いよな……
からんころん
カウベルの音に反応して、食堂で食事をしていた人々が入り口に視線を向けてくる。それにちょっと怯えつつ、進んで行くと、奥の方に目当ての人物達を見つける。
「おはよう。一晩考えて考え変わらなかったんだな」
ルウが声を掛けてくる。
空いてる席にどうぞと勧められて、空いている席――ルウの隣に腰を降ろす。
その際、グレミオが女性が男性の隣に座るなどと危険行為ですと注意をしてきたのだが、アレクが『セレンをこのままん立たせるのも妙な話でしょう』と告げた事で無事に移動もなくそのまま座る事になった。
「すごい皿ですね」
アレクが視線を向ける先には、殻になった皿が積み重ねてある。
そして、食事が終了してのんびりしているルウとシャイアはまだ食事中のサーシャを待ちながら食後のコーヒー――ルウはカフェオレだが――を味わっているのだ。
「サーシャはたくさん食べるからね」
いつもの事だよとルウが告げる。
「――魔力を使うとたくさん食べないと持たない」
シャイアが説明する。
「そういうモノですか?」
アレクとグレミオに尋ねるが、二人とも魔法使いの知り合いが居ないのでと分からないと言われてしまった。
「食事中のサーシャは何を言われても答えないから。俺が聞くけど」
「………ルウの考えを俺らの意見と捕らえると不安があるがな」
「そう思うならシャイアはもうちょっとしゃべって………」
「…………………考慮する」
ルウの言葉に難しいという様に返事をするシャイアはしゃべるのが基本苦手らしい。
「まあ、前提条件で話しちゃうけど。……俺らの所で実地訓練で合ってる?」
確認。
「はい。貴方方の能力は協会でも折り紙付きだったので」
そのまま進めさせてもらいたいです。
そう告げると、ルウは少し考えて、
「俺はいいと思う」
人手が足りないのも事実だし。
「…………俺らのリーダーはルウだ。好きにしろ」
「と言うのが、こっちの意見。歓迎するよ」
サーシャが食べていてしまりが悪いけど。
そう笑顔で歓迎されたのだが……。
「君がリーダー?」
「若造が⁉」
アレクとグレミオが信じられないと凝視する。
ぎろっ
食事に集中していたはずのサーシャとシャイアが二人を睨んでいる。
「――気に入らないのなら入るな」
フォークを置いてサーシャが告げる。
「なっ…⁉」
サーシャの冷たい言葉に、グレミオが文句を言おうとするが、サーシャの空気――敵意に近い視線を真っ向から向けられてしまいそれに飲まれて言葉を失う。
「サーシャ!!」
ルウが叱るように告げるとサーシャは視線に宿していた敵意を抑え込んで食事を再開する。
「ははっ。すみません」
乾いた笑い。誤魔化そうと必死だ。
「謝る必要はない」
「シャイア!! 何でこういう時は口が滑らかになるのさ。普段は言葉足らないくせに……」
「………言葉は苦手だ」
「うん。それは知ってる。だから無理にしゃべらせないけど。言っていい事と悪い事があるでしょう?」
「…………」
「そこで黙らない」
「……………………事実だろう」
「そう認識するのは仕方ないだろう。俺らの中じゃ一番見た目で舐められそうだし」
「…………………………………そんな事」
「ないとでも言いたい? 事実あるから。俺の方が二人よりも若く見えるし、話してみると俺の世間知らずぶりが露見しちゃうから俺はリーダーとして向いてないと思うんだよ。だから、客観的に俺がそうだと言われても信用しないでしょう」
「………………見る目が無い」
「第一印象って大事でしょ!! そんなんだから他の所からやっかみを受けやすいんだろ!!」
叱り付ける口調に。
「性格的にルウが一番適任だ」
食事を終了した。口元を上品に拭きながらサーシャが告げる。
「食事中だから口を開けなくて悪かった」
そう謝り、
「ルウが判断したからお前達を歓迎する」
「上からだな。このお方を……」
「グレミオさん」
わたくしの身分を言おうとするのを止める。
わたくしが王女である事も神子姫になるための試練中だというのは公にしたくない。
「……………」
アレクが何かを言おうとして視線を向けたけど結局黙っているのが視線の端に映ったが、あれはどういう意味だろうか。
………バレてますよ。そう告げているような……。
変装は完璧だと思うのに。
「………髪でバレてるんだが」
「それでバレていないと思っているんですよ」
サーシャとアレクが何かを話しているのだが、どういう事だろう。
「まあ、ともかく」
にこり
「よろしく」
ルウが手を差しだしてくる。それを繋ごうとするが、
「お嬢様に気安く触れようとするのではない!!」
とグレミオがその手に触れようとする前に払いのけた。
グレミオめんどくさい(都合がいいけど)