3話 月の話
説明回
じっくり考えろ。そう告げられてセレンはじっくり考えて(?)いた頃――。
「ルウ」
風車亭の一室でサーシャとシャイアはルウに詰問をしようとしていた。
「お前の気持ちは分かるが、相手が悪すぎだ」
先に口を開くのはシャイア。
「相手は王族だ」
シャイアの言葉に、
「王族?」
えっ? と意味が分からないと目を大きく開く。
「………平民は黒や茶色の髪が殆どで、神が金や銀なのは王族しか受け継がれない。王族に仕える貴族に金や銀が現れるのは王族が降嫁したからであり、ある意味王族に信頼されているステータスなんだ」
サーシャが説明する。
「あの子は金髪だったけど……」
「だから王族なんだ」
「………多分。レンファ―レンの末の姫が神の加護持ちで有名だからな。彼女が一人前になるための神託が下されたんだろう」
サーシャが説明するが、
「神託……?」
「神の言葉だ。神官。巫女は神託を得て、その神託で下された役割を果たして一人前になれるんだ」
「………神様が身近なんだね」
ルウがどこをおソロけばいいのか分からないとばかりに呟くと。
「………ルウの所は違うのか?」
シャイアが口を開く。
「俺の故郷では、神様は居ても迷信……実際に居るとは思ってない人が多いんじゃないかな。同じような考えで精霊も居ないと思われてるし」
ルウの言葉にシャイアが不機嫌になる。
シャイアは精霊崇拝と言うか精霊信仰だからな。まあ、それ以前にもいろいろあるけど……。
「…………あの姫君」
サーシャが思い出したというばかりに口を開く。
「サーシャ?」
「………かの姫君に限ってじゃないかもしれませんが、王族に神の加護を持つ者が生まれ、その時代に勇者と呼ばれる存在が出現する事があったら聖女または聖人と言う呼ばれ方をしたと思います」
聖女に聖人……。
「勇者を支える存在という事か…………それはともかく敬語」
「あっ⁉」
サーシャが敬語になっている。
「敬語はいらない。そう言ってあっただろう」
「ああ。悪い……言い慣れないからな」
本当はもっと砕けていいんだけど。
「難しいかな………」
「サーシャの言葉遣いは徹底的に仕込まれての敬語だからな。幼少期はもっと口悪かっただろう」
「育ちがな……」
敬語を言わざる得ない状況だったといわれて仕方ないと思うけど、
「言葉づかいでバレやすいんだから気を付けた方がいい。言葉の訛り、言い方。それだけで、人は相手を判断する事がある。気を付けるのは」
言葉を区切る。
「身分を偽りたい場合程。言葉は融け込まないと」
ルウの言葉に、
「気を付ける」
「そうして」
まあ仕方ないと思うけどと笑いながら告げる。
「でも、サーシャもシャイアもあのままじゃいけないと思ってるだろう」
ルウの言葉に、サーシャもシャイアも黙っている。
無言はどこよりも雄弁だ。
「まあ、前衛が欲しいのは事実だけどね。アレクって呼ばれた人? あの人出来るよ」
腕前がある。
「浄化できる人は欲しいし、前衛も欲しい。まあ、実地訓練? 研修だっけ? 今だけなんだし、協力してもらえばいいだろう」
その方が助かるし。
「ルウ……」
「んッ?」
シャイアが無表情に、
「実地訓練したパーティーにそのまま入る事が多いんだが」
「はいっ?」
意味が分からない。
「冒険者の初期の仕事は薬草採取や荷物運びと言うのが殆どだ。それをしなくても冒険者として名乗れるのはどこかのパーティーに加えてもらうのが手っ取り早い」
「えっ……?」
「つまり、冒険者としてカッコいい活躍するなら一人で頑張るんじゃなくて、最初からどこかの集まりに混ぜてもらってそこから独立する方が早いんだ」
その混ぜてもらうのは実地訓練した所が丁度いい。動きも癖も学んで動けるからな。
「あ~。それで」
それであそこまで揉めたんだ。
「決めるのは当事者なんだろうけどね~」
「その当事者が決めたのは新月だけど」
「はは……」
そう言えばそうだった。
「まあ、実地訓練終了したら丁重にお断りしますか」
「そうだな。王族なんて百害あって一利なしだ」
サーシャの発言にだいぶ敬語が抜けたなと思ってしまう。
それはともかく。
「シャイア。しゃべるの放棄してない?」
「してない。サーシャとルウが盛り上がっているのに混ざっても意味ないだろうしな。それはともかく飯頼むぞ」
その言葉にぐうぅぅぅぅぅと音が盛大に響く。
「………」
「サーシャ」
二人の視線はサーシャに向けられる。
「魔力を使うと栄養が欲しいんだ!!」
サーシャは顔を書赤らめてそう反論した。
「ところで……俺、薬草採取とか荷物運びの仕事ってあんましてない気がするけど……」
「それは薬草採取していた矢先に魔物に襲われて倒したからだろう」
「あれは一足飛びだった」
そんな事あったかもしれないが覚えてないな。
主人公はセレンです。(何度説明するかな)