9話 秘密
セレン出ません
どくんどくんどくん
草木も眠る丑三つ時――。
そんな表現が故郷にあったなと思いつつ、誰も起きてこないのを心配しつつ宿を出る。
街の外れ。
街を一歩出ると木々が生い茂る場所になる。
「――消化できた?」
そっと尋ねると木々に挟まれる形で横になっている者が居る。
「…………まだ。です」
答える声。
その声の主に額をそっと触れる。
「…………消化スピードが遅くなってないか」
以前は食事終了で消化も終わっていただろう。
「………神殿関係者なら」
神聖魔法を使える者が居れば負担が軽くなるだろう。
そう尋ねると。
「――説明しろと」
「うっ……⁉」
説明……。
「出来ないよな……」
「そうですよ。――だから、彼女に話を持ち込んだ時は驚かされました」
「………わりぃ」
「いえ……」
呼吸が少し落ち着いてきたようだな。
「そんな貴方の優しさに付け込んだのはこちらですので」
「…………」
申し訳なさそうにこちらを見てくる目。
「――俺もあいつも諦めてないよ」
彼女の体内に廻っている彼女の体をむしばむもの。
それは彼女にとって毒であるが、それは外に出してはいけない故に彼女は毒だと知りつつ体内に取り込む。
「お前を人間に戻す方法」
「………お人よしですね」
「そんな奴を選んで召喚したんだろう」
そう告げると。
「いえ……、私が選べるようなものではありません。貴方がこの世界に来たのは世界が求めた秩序でしょう」
ただ、早いだけで。
「――もし彼女達が信用できると判断したら」
告げる。
「俺は彼女を共犯者に仕立て上げる」
「…………」
「お前達の意見を無視して悪いけど……」
「………御自由に。そういう契約です」
「あいつはどういうかな……」
お前だけじゃ不安だ。
「………あの人もお人よしです」
何でこんな化け物を化け物だろ知りつつ受け入れるんでしょうか。
「***」
真名で呼ぶ。
「自分をそんな言い方をするな。お前の事を知って、それでも行動を共にすると決めた俺らを侮辱する事だ」
本当は命じる気はない。
だけど、そうしないと考えを改めない。
「***様」
「敬語はいらない。――もう大丈夫?」
「ああ」
そっと立ち上がるのを確認する。
「じゃあ、戻ろうか。――心配してるだろうから」
そう告げると宿に戻る。
――きっと宿には無口な彼が心配して待っているだろうし。
何を書けばいいのか……。




