0話 表
裏もあります
その日――。
その国ではとある儀式にみな心を躍らせていた。
そうその国――この世界で一番歴史が古く。その世界で一番の大国。
レンファ―レンでは。
「セレンティーナ・カルディア・エリス・レンファ―レン」
「はい」
王の娘であり、神の加護を持つと言われている神子姫候補――もっとも後にも先にも彼女の身だが――が神子としての神託――そう。神子姫と名乗るには神による神託を持ってすべき事を課せられてそれをしてから出ないと神子姫――いや、神の使いと呼ばれる巫女や神官とは名乗る事が出来ない。
その神託を受ける日であった。
「心の準備はいいか?」
「――はい」
神官長――すべての神官を束ねる方に聞かれてセレンは答える。
覚悟など生まれた時からあった――。
神の加護を持って生まれた王族。
見習いとしての修行の日々。
すべてすべて、神に仕える者になるため。
神子姫になるため――。
その為の神託だ。
決められた場所に立ち祈りを奉げる。
どれくらい時間が流れたのか。
最初に感じたのは光。
次に音楽。
大量の光の帯がこの世界のありとあらゆる言語の文章を書いている。
音楽もありとあらゆる言葉で歌われている。
それが神託。
かつて、神の言葉を偽って修行を終わらせようとしたものが居たのでこのようにすべての者に伝わる言葉に改変されたと歴史書には書かれてる。
冒険者となれ。
冒険者として衆生遍く者を救え――。
そして――《******》。
途中の言葉が何かおかしかった。
「神官長さま……」
「……内容は把握していますね」
その言葉に頷く。
「――成程」
神官長の目が光の帯に向けられる。
「………神はよほどあなたに期待しているんでしょうね」
「神官長さま……?」
神官長は答えない。
「神託は下された」
宣言。
「あれが神託だと……」
ざわざわ
「姫に冒険者などと……」
あんな野蛮な輩に姫の御身に何かあったら。
慌てる者達の声が大聖堂に響き渡る。
「セレンティーナ」
「――はい」
「あの文章の後半部分は恐らくあなたしか知る事が出来ないでしょう」
後半部分――。
「それは貴女に与えられたお役目はとても重要な物であり酷く険しい内容であるから」
重要なお役目……。
「はい…」
分かっています。
「ですが、その役目。貴女なら果たせるでしょう」
頑張りなさい。
その言葉に。
「神の名に誓って――」
そう告げた。
冒険者になるという神託だが、すぐに冒険者になれないだろう。
王族が上級階級曰く野蛮な冒険者になるにはしばらく揉めるだろう。すぐにでも動きたいこちらの想いを裏切って。
(それにしても――)
誰にも聞いてはいけないのだろう。相談したいが。
――汚泥に包まれて足搔く勇者とその勇者の側に居る者達を救済し、行くべき道光の道を歩ませてあげるのです。
と言う内容など――。
一応セレンが主人公です




