No1 二人目の住人
エルフ耳というのは書いて字のごとく、エルフのように耳の上部に高く伸びている耳のことである。主にファンタジーの物語に存在しており、種族全てが美形というもの。
他にも魔法に卓越していたり、潔癖症という特徴を持っているしく、ドワーフとの仲が悪いとも聞く。
なぜエルフ耳の話をするかと言うと、宇宙船が墜落した翌日、私以外存在するはずのない街の学園にエルフ耳の転校生がやってきたからである。
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墜落した宇宙船を発見した翌日。学校があるので登校した。当たり前のことであるが、一応明記しておく。
私以外に生徒がいないというのに、無駄に並べられた机と椅子たち。
学級崩壊でもしたのかと疑われても仕方がないが、これには歴とした理由がる。私一人のためとはいえ、学園で生徒が勉強する以上、閑散とした教室は良くないという考え故のもの措置なのだが、これはこれで堪えるものがあると思う。
その影響とうか尊い犠牲というか、本来の存在理由を失った資材たちだが、今日日その日、その一席がついに埋まるときがきた。
そう、転校生である。
「こんにちは! 今日からこの学園で学ばせてもらいます、ヴィカ=ラララと言います。宜しくお願いします!」
そう言ってエルフ耳の少女は元気よく挨拶をする。先生であるロボットは彼女の元気の良さを誉め、それに対しエルフ耳の少女は照れた仕草をする。
いや、なんでやねん。
心の突っ込みは届くことなく、ロボットの先生はエルフ耳の少女を私の横の席に座らせ、一限目の授業を始める。
「……教科書、一緒に見る?」
「わあ! お願いします!」
手元が寂しいエルフ耳の少女は、元気な声で喜びながら返事をする。裏表のない、元気で明るい性格。これが普通の転校生だったら喜ばしいことなのだが、彼女にはエルフ耳だけではなく、宇宙人ではないかという疑いがある。
「えへへ~。学生なんて何年ぶりだろう」
おおっと。その意味ありげな発言はなんだー? エルフだから長命ですっていう伏線なのか。いや、そもそもどこの生まれから問わなければならない。
ゲームでは空気の良い恵みのある深き森なのだろう、私は普通に囚われれない女なので、大口で粘着性の高い沼地と見る。
その美貌は泥パックと見たわけだが、以外と当たっているのではないかと思う。ファンタジーに逃げない私。現実を見ている。
ぜひ真偽を問いたいところである。しかし、今日来た転校生に余り不躾な質問は失礼に当たると思うし、私にそこまでできるコミュニケーション能力はない。
当然だ。これまで私が会話してきたのは、全て非生命体。ましてや少年漫画のヒロインのような少女と話せるわけもない。男子よりもマシだが、だからとはいえ、雌であればなんでもいいというわけでもない。
え? どうしてエルフ耳の少女が女性だと分かったかって? 服が女性用だったからである。スカート履いているし、髪は長いし、イヤリングしているし。
これで男であれば事情説明があるはずだ。何の心構えもなく直面しては、お嬢様どころか、対人スキルがほぼロボット会話に振られている私は気絶してしまうだろう。
うん? 昨夜の宇宙船はカウントされないのかだって? あれはもうファンタジーの世界である。現実の域で話しても進まないことは明白。
まあ、男か女以前に。どうやって話しかければ分からない。エルフ耳の少女から何度か話しかけられるも、アンニュイな言葉しか返せていないのである。
まだ夕日も出てきていないが、今日のオチである。
こうしてエルフ耳の彼女の挙動に次々と疑問を浮かばせるも、その謎を問いかける勇気もなく、悶々とした気持ちを抱えたため、その日の授業は全く耳に入らなかった。
ちなみに、彼女は肉や魚もいける口だった。だが、先生にお酒の帰る場所を聞くのはアカンだろう。どこまでいける口なんだろうか。
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「あれ? ヤマクちゃんの他に知的生命体っていない感じ?」
「他、機械というか。彼女のために街が動いている感じ?」
「もしかしてもしかして~。これなら、侵略も楽勝な感じ?」
疑問が止まらないのは、彼女だけではないようだ。