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プロローグ1

 20XX年6月20日(火)


 煌々と照らす太陽は私から容赦なく体力を奪っていく。やはり、夏休みが近くなると太陽もテンションが上がるのだろうか。


 もう故意的なものと疑うしかない、過剰すぎるフライング。

 時期尚早すぎるだろう、太陽よ。


山來ヤマクさん。余所見してはいけませんよ』


 機械的な声――というかロボットが私に注意する。


「はい、すいません」

『判れば宜しいのです』


 ロボットはそう言い、再び黒板に向かい板書を始める。その達筆な筆使いならぬチョーク使いはノートを取る自分の字が恥かしくなるほどの腕前だ。


 ロボットが教師になるとは、おかしな時代になったものだ。

 便宜的な理由は判る。五人の教師が五強化づつ担当して教えるよりもロボット一台が五教科分担当する方がコスパがいい。


 だが、やはり。人間とロボットとの間に壁は存在し、そこに弊害が存在するのだ。


「先生」

『はい、山來さん。何か判らないことでもありましたか?』

「冷房をつけましょう」


 今も汗がノートに染み込み、綺麗に書いた字がボヤケテいく。先生が黒板に赤いチョークを使うから、こちらも赤いボールペンで対応しなくてはならないというのに。


 しかし、そんな気持ちを全く知る由もない先生は、やはり機械的な声で答えた。


『冷房は7月7日からと学校で決まっています。それに、若いときから冷房に頼ることは良くありません。将来的に体に支障を来す恐れがあります』


 せっかくの文明の利器を、その最先端そのものに使うことを禁止された。

 

『汗を掻くことも若者の仕事ですよ』


 ブラックじゃないか。

 だが、何を言っても論破されること間違いなにので心の中で思うことだけにした。知識量で次元が違う。どう頑張ってもスーファミじゃ勝てないよ。





「やれやれ。やっと今日が終わった」


 一日の労いの言葉を言いながら、山來は道路の真ん中を歩く。

 彼女には罪悪感はない、どうせ車の一台も通らないのだ。


『キケンです、キケンです』


 カタツムリという生物をモチーフにしたらしい清掃ロボットが注意を促す。


『キケンです。道路ではなく歩道を歩いてください』

「判ってますよ」


 少女はこのやり取りは100回を超えてから数えるのを止めた。既に1万回は超えているだろうが、今後も彼女は同じよううに道路の真ん中を歩き、ロボットに注意されるのだろう。


 彼女がどうして道路の真ん中を歩くのか。

 その理由を彼女は持っていなかった。


 あるとすれば、自分以外に使うことのない夕日に照らされた道路に寂しく感じているからなのだが、当人はそれを無自覚にも共感していた。


「さて。この晴れやかな天気が夜まで続けばいいんだけど」


 山來の趣味はとても幅広い。ある一つ条件というものが必要になるものの、彼女はそれを苦とはしなかった。むしろ、限られているからこそ、彼女は条件をクリアできる多岐の分野に手を染め、自分の性にあったものを趣味として継続している。


 特に己でも気づかなかった好みを発見したときは、感動を覚え指が震える。以来、彼女は自分の個性やキャラクター性から好き嫌いを決めつけることを止めた。


 ≪数打ちゃ当たる≫。そういうことわざもあるが、彼女とは少し異なる部分がある。


 山來は期待も失望感も抱かず、弁当に総菜を詰めるだけの流れ作業のように行った。そうでなければ先入観が働き、彼女は自分の新しい可能性に気付くことができなかった。


 人間の可能性とは、そこまで多角的で拡散的なものなのだ。

 

 無意識に、無防備に。そうして出会った彼女の意外性の一つが天体観測であった。

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