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優妃という女

 天野・優妃ゆうき

 二十八歳。

 階級は巡査部長。

 警視庁・刑事部・捜査三課・第七係からの左遷だ。

 捜査三課は主に空き巣や万引きのような、窃盗事件を扱う部署であり、組織の規模によっては業務が別の課に統合されるなどで、三課が無い警察機構もある。


 祖父、父が警察官の為、彼女も自然と警察官の道に進む。

 熱血漢のある刑事だったお祖父さんの影響で、どことなく言い回しが年寄りくさいところが見受けられる。


 父親の天野警部補と混同しがちで、紛らわしいから社内では下の名前で呼ぶ。


 彼女がこのサード・パーティーこと、代理店に来た――――――――いや、飛ばされてきた理由。


 ある暴行事件を現行犯で逮捕したことだ。


 彼女が非番の日。

 女友達と遊びに行くと通りでカップルが喧嘩を始めた。

 次第に男の方は頭に血が登り、ついに自分の恋人に手を挙げてしまう。

 それを見た正義感溢れる警察官の優妃は、男に抗議。

 すると頭に血が登った男は、あろうことか優妃にまで暴行を加えようとした。

 非番と言え男を危険人物と判断した女性刑事は、暴行の現行犯で逮捕。

 手を挙げた男を交番に連行する。


 その日は男の恋人の懇願もあり、それ以上ことを進めることは無かったので、男にキツイお灸を添えるだけで済んだ。


 それから数日後、優妃は警視庁で上層部による査問を受けることになった。

 理由は優妃が非番の日、現行犯で捕まえたカップルの男。


 何故、それが問題になったか?


 それは恋人に手を挙げた男は、とある大物の息子だった。

 野党でも時期総裁選の党首候補として、名高い代議士。

 しかも元警察庁のトップ。

 男は代議士の末っ子で兄である長男は、父の後を追うように政界に進出。

 選挙活動のまっただ中。


 そのさなか代議士の末っ子が暴行の容疑で警察の厄介になったなど、代議士一家の名に傷が付く。

 その為、優妃が男を捕まえたとう事実は、うやむやにされた。


 彼女はこれに対し激しく抗議した。

 別に事件として表沙汰になった訳でもない。

 熱くなっても仕方の無いことだが彼女が祖父、父から受け継いだ刑事魂が許さなかった。

 手を焼いた上層部は優妃に対して、しばし冷静に考えを見直す時間を与えるとの名目で、一ヶ月前に公安部のダミー会社ミズーリへ派遣した。


 とは言え期間を定めていないので、いつまで天野巡査部長がこのミズーリに居るかは未定。


 結果、左遷と変わらない訳だ。

 優妃が非番の日に男を捕まえなければ、このような事態にはならなかったかもしれない。


 運が悪い女と言うのか。

 だけれども彼女の性格上、小さな悪も見逃せない気質を持っている。

 代議士の一件が無くとも、恐らく別の問題で人事の異動を受けて居たかもしれない。


 その時は左遷だけでは済まず刑事を辞めざる得ない事態に、発展するかもしれない。

 長い刑事人生を考えれば、今回の左遷は彼女には良い経験だろう。

 当の本人は冷静になるどころか尻に火が付いて、上層部を見返す為、ここで手柄を上げることに躍起になっているが――――。


 人事異動は返って彼女の刑事魂を赤く燃え上がらせた。

 

 しかも刑事ドラマの熱狂的なファン。

 部下とはいえ刑事ドラマが嫌いな滝馬室には、好敵手以外の何者でもない。

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