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アジェンダ=逆探知?(5)

 ズレた眼鏡を指で押し上げ、加賀美は作業を続ける。


「まず、非通知番号を解析して、相手の市外局番を割り出します」


 そう言うと加賀美は、パソコンのキーボードを軽やかに弾く。

 滝馬室が素朴な疑問を言う。


「非通知の解析って、そんな設備、ウチの班にはないぞ?」


「警視庁から、こちらの班へ移る時、サイバー犯罪対策課の技術調査係。及び科学捜査研究所から、解析ソフトを借用しました。公安部のように、水面下で行う作業には、こういった設備は必要にようになると、予想出来ましたから」


 感心する滝馬室を他所に、加賀美の講釈は更に続く。


「次に、解析した番号を、ネットから拾った、アプリにかけて、発信していた基地局を見つけます」


 加賀美は、スマートホンとパソコンをケーブルで繋げて、操作解析を始めた。

 滝馬室が目を見開き聞く。


「そんなアプリがあるのか?」


「誰が、何の目的で作ったかは知りませんが、大方、弁護士がストーカーの居場所を特定したり、私立探偵が、浮気の現場押さえる為に使う物だと想います。おかげで、詐欺グループの拠点を特定出来ます」

 

 加賀美は黙々とタイプを進める。

 滝馬室と優妃は、加賀美の側へ行き、両脇からモニターの画像を覗き見る。

 加賀美は気を利かせて解説する。


「今、おこなっている作業は、このミズーリに送られた電波をたどり、通信

をしていた基地局を検索しています」


 モニターには、東京都の地図が移し出され、幾つもの青い波紋が、まばらに表示される。

 その内の一つの波紋が、黄色く変わり、地図がその波紋へズームされる。


 優妃の問いに加賀美は答える。 


「渋谷区? でも、範囲が広すぎるわ」


「電話は一つの基地局から、相手に電波を送信している訳ではありません。複数の基地局を経由、利用して送信しています」


 次に画面に映ったのは、黄色い波紋を補助するように、二つの黄色い波紋が現れる。三つの波紋の中心が線で結ばれ、三角形が地図の上に表示される。


「この三つの基地局を結ぶと、三角形に繋がり、この三角形の中に、通話相手がいる可能性が高くなります。更には、三つの波紋が交わる場所。そこが、通話相手が電波を発した場所になります」


 三点の波紋の外円部が、三角形の中心で交わり、赤の点滅を現した。

 優妃が注意深く見た後に言う。


「桜ヶ丘二十……範囲が狭まった」


「この周辺に、詐欺グループの拠点がある可能性が高いです」

 

「加賀美さん、ありがとうございます。社長、行きますよ」

 

 滝馬室は優妃の顔を、不思議そうに見つめて言う。


「何で俺も行くんだよ?」


「捜査のマニュアルでは、原則、行動する警察官は二人一組。加賀美さんには、引き続き、会社で情報を集めてもらいます。なので、この中で、広範囲に及ぶ調査が可能なのは……」


「外回りを担当する……俺か?」


 優妃は力強く頷く。

 滝馬室は、それを上回るように、更に強く返す。


「よし、解った――――――――断る!」

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