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MTG=社内推理

 社内では外に聞こえるくらいの大音量で、クラシック音楽を流している。

 これは薄い壁から会議内容が漏れない為の予防策だ。

 

 そもそも、しっかりした防音のなされている物件に移れば良いだけの話だが、監視対象となる、カルト教団の拠点を張り込むのに適した物件が、このオンボロビルだった。


 社内に流している曲は楽劇王と呼ばれたドイツの作曲家。

 ワーグナー「トリステンとイゾルデ ~愛と死~」

 同オペラの序盤で演奏される曲だ。

 

 後の円卓の騎士トリスタンとアイルランドの王女イゾルデの、叶わぬ愛の物語をテーマにしたオペラ。

 愛し合うことへの喜びを静かで暖かみのある曲調で表現しつつ、その後、待ち受ける悲劇を低い音調でつづり、世界感に重みを持たせる。

 

 選曲に適している理由は二つ。

 一〇分を越える楽曲が会議での会話を、途切れることなく隠すことができ、音階が激しく上がり下がりすることなく、落ち着いた曲調である為、会議での伝達事項を妨げない。 


 営業――――元い、地取りして集めた情報をミズーリの社内で整理する。

 滝馬室のデスクから見て左手にある優妃のデスク。

 その席の後ろにホワイトボードが置かれ、優妃は情報を記入していく。


 ボードには詐欺に遭った世帯を被害を受けた日付で分けて、簡単なカレンダーのような形式を作った。

 それでいて各世帯の名前、住所、何時に詐欺の電話を受けたか、家族構成と家計に関するおおよその状態が書かれている。


 優妃はホワイトボードに情報を書きんだ後、解説をした。


「主に、この詐欺は共働きで比較的、家計に余裕がある世帯を狙っていると思われます」 

 

 よく整理された捜査資料だ。

 内容は、たいしたことを書いてはいないが見やすいという点だけは、高く評価しよう。


 滝馬室が優妃の情報に感心すると彼女の説明は続ける。

 

「巧妙ではあります。小遣い程度の収入を自動的に入ればいいと、被害者に未来的なビジョンを見せています。そして広範囲に渡り被害が出ているということは、電話でのみの犯行になりますから……」


「誰も犯人の顔を見ていない……」


 優妃は力強く頷き言葉を付け足す。


「そして声の特長が男性という共通点以外、どの世帯もばらばらで、高い声、低い声、学生風、会社員風、丁寧、荒いなど幅大きいです」


 滝馬室は冗談めかして返す。


「ほぉ~。つまり犯人は、腹話術師か、芸達者な役者……でなければ――――――――グループによる犯行?」


「はい。その通りです。ここに来る前、警視庁でも、この手の詐欺グループを内偵している情報を聞きました」


「優妃さんが左遷され――――」


 睨む優妃の顔色をうかがい、滝馬室は慌てて言い直す。


「い、異動する前だから、一ヶ月間以上前。被害を受けた世帯と時期が重なる。多分、警視庁で追ってる詐欺グループだな」


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