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営業=地取り(2)

 何も警察手帳が無くとも、事件の究明は出来る。

 警察官が非番の時、警察手帳を自分が所属する警察署や警視庁に預けていても、明らかな犯罪行為があった場合、事件の追求、犯人の確保は出来る。それは警察以外の一般人も同じ事だ。


 例えば行方不明者の捜索。

 チラシを配り情報を集め捜索する行為や、コンビニ強盗を店員が捕まえたりするケース。

 さらに現行犯であれば、一般人でも相手の拘束は可能だ。


 それは、一般人による、社会貢献や捜査協力と言いう範囲での話だ。

 警察は一般人と違い、捜査権と逮捕権を与えられている。

 捜査権があるから、個人情報を聞き出せるし、逮捕権があるから、疑いのある人物を連行し取り調べる事が出来る。


 しかし、今の滝馬室と優妃は警察手帳はおろか、潜入任務の為、警察官の身分も偽っている。

 二人の事で、警察に問い合わせても、警察官だと証明する物がない。

 あまり、首を突っ込むと、二人は法に触れてしまう可能性がある。

 故に、警察に属する身分でありながら、一般人以上の行動は出来ない。 


 荒川区に到着後、ミニバンを空きのあるパーキングに入れて、二人は住宅を見渡す。


 優妃は、スマートフォンで荒川区のマップを出すと、指で十区画を囲み、滝馬室に見せ言う。


「それじゃぁ、この区画を”地取り”します」


「広いな……」


「行きますよ」


「……はい」


 抵抗しても無駄だと思い、滝馬室は短く返事すると、彼女の後を渋々付いて行く。


 地取りとは――――。

 聞き込みが、事件に関わる情報を範囲を決めず、人物に対して聞いて回ることを指し。

 地取りは、棲む地域を限定して、その区画にのみ、事件情報を収集する作業だ。


 優妃はミネラルウォーターの営業をかけた後、それとなく、水を売る詐欺が、多発していることを、伝えて注意を促す。

 この作業を、地域ごとに繰り返すことで、詐欺に関する情報を得ることが出来る。


 インターホンを押す――――反応無し。


 本当に出かけているのか、居留守なのか、少なくとも、入り口の上に設置された、電気メーターの、回転すう円盤部分は、目で追うには疲れるほど回転している。


 一昔前なら、円盤部分の回転の速さで、居留守かどうか推測し、潜伏している犯人が部屋から出てくるまで、遠くから張り込んだものだ。


 中から人が出て来ても、返って来る答えは「水は間に合ってます」

 詐欺について警鐘を鳴らすと「そうなの?」と、無関心、無警戒の反応。


 また別の家では、「これから外出するので……」など、この手の返しを、七、八世帯は聞いた。

 毎回、訪問したタイミングが外出前というのは、よほどこちらが間が悪いと、反省すべきなのだろうか? 


 かくいう自分も、非番の日に新聞の勧誘が来たとき、これらの受け答えをしたが、せめて、ウチの飲み水は買ってくれよ?


 返事の是非とは別に、優姫はトリーバーチの黒いハンドバッグから、A四サイズの紙を取り出す。

 紙の見出しには、大きく「水の詐欺にはご用心!」とかかれ、怪しい儲け話や強引な売りつけに気をつけるよう、注意をうながすチラシだ。


 早朝に出社したのはこの為だったのか。

 ここまで準備しているのは関心だが、付き合わされるこっちは気力が追いつかん。


 優姫は、訪問して顔を合わせた世帯には、チラシを手で渡し、留守の世帯には玄関のポストに投函した。


 この方式を繰り返して行く内に、次第に話が浮上してくる――――。

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