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孤児院の勇者Ⅱ  作者: ぴっぴ
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4章 ギルドマスター


こうして俺達は毎日ギルドで薬草集めのクエストを受けて地道に冒険者をやっていた。


 「おめでとうございます、連続7回クエスト達成です。ランクアップですよ。」


 「えっ、そうなの。」


 「お~、我感動!」


 「はい、Eランクの冒険者として真鍮のタグが送られます。」


 俺達は首からEランクのタグを付けてもらった、受付嬢はこの時とばかりに俺に胸を圧しつけてくるが別に何とも思わない、訳ではないけど、顔には出さない様に頑張った。魔王は首が太すぎて入らないので手首に巻いていた。魔王の手首は普通の人間の首位の太さが有るのだ。腕なんか受付嬢の胴体位の太さなのだ。

 最初は魔王に震えあがって、俺達が受付に行くと逃げ回っていた受付嬢なのだが、毎日色んな物を狩って来て大金を稼ぐ俺達が優良物件に見え始めたのか、最近は受付嬢達が俺達にとても親切なのだ。なんとなくだが獲物と思われている気すらしている。女性ってたくましい。


 「あ、それと今日はグリフォンの買い取り頼むわ。」


 「今日は、Aランクモンスターのグリフォンですか?」


 「ああ、薬草を探してたら急に出て来たから。こいつが倒したんだよね。」


 「うむ、我もそう思う、たまたまだと思う。」


 最初は驚いていたが、流石に毎日偶然が重なる事に皆慣れてきた様だ。今では俺がギルドを出ると俺の代わりに薬草集めのクエストをする為に初心者冒険者達が待っているのだ。魔物を買い取りする連中とも顔見知りだ。


 「よう、坊主ども、今帰りか?」


 「あっ、勇者様。ご苦労様です。」


 「うむ、出迎えご苦労である。」


 「あ、魔王様もお疲れ様です。」


 最近ギルドで魔獣を金に換えた後、子供達に魔獣の料理を作ってやってるので。腹を減らした子供達が寄って来るのだ。そして、ギルドで折角作った偽名は魔王が全然使わないので、正体が既にバレていた。


 「今日はグリフォンのカレーだぞ。今から作るからな。」


 「我、楽しみ!」


 「あっ、それから俺の事はぴっぴと呼ぶように。ギルド名はぴっぴだからな。そしてこいつは魔・太郎だ  からな。忘れるなよ。」


 「分かりました、勇者様。大人の事情ってヤツですね。」


 「まあそんな所だ。」


 子供達に手伝わせて、カレーを作る。小学校のキャンプみたいな感じだな。子供達も今は20人位に増えた。何処からともなく集まって来るのだ。たまに大人が混じるが、魔王に森に捨てに行かせる。働かないクズは要らないのだ。病気怪我以外の大人はお断りなのだ。


 「美味しい!でも辛い!」


 「わははは、ガキ共よ。辛いのを我慢して食うのが良いのだぞ。」


 「我も、辛い!」


 俺は辛いのが苦手なので、バーモ〇〇ドカレーのルウを使って辛くないのを作ったのだが、香辛料を知らない子供達には刺激が強すぎた様だ。


 「無理して、食うなよ。駄目なら残せよ!」


 「嫌だ、全部食う!」


 「我も、頑張るのだ!」


 結局皆残さず食った様だ。魔王は何食っても平気だから良いが。やはり子供に刺激物はマズイ様だ、残念だオデンに辛子を付けて食べる日本文化が教えられないではないか。まあいい、魔王に辛子の醍醐味を教えることで我慢しよう。いや、ギルドの受付のお姉さんなら、オデンに熱燗の良さが分かるかも知れない、今度誘ってみよう。


 「ご馳走様でした。」


 「おう、気を付けて帰れよ。」


 子供達に余ったカレーとパンを持たせて帰した後。俺と魔王は街の外に出る。最近儲かったので、俺の召喚が使える様になったのだ。俺の召喚は現金が無いと使えないが、金が溜まるほど強力なスキルになるのだ。最も今は別段戦う相手が居る訳でもないので、日用品しか出してなかった。


 「じゃあ、プレハブ出すぞ!ちょっと下がってろ。」


 「ぷれはぶ?」


 「うお~!なんじゃこれは!」


 「これが、プレハブだ。中に住めるぞ。」


 「ほえ~、勇者の魔法は凄いの。」


 プレハブと布団を出して、ここで寝る事にする。宿屋は人の出入りが激しいので落ち着かないのだ。ついでに発電機とゲーム機を出して、魔王と遊ぶ。海中戦のあるチョット古いあの狩りゲーだ。


 「む~!コヤツ生意気な!」


 「だから、無理やり突っ込むんじゃねー!!クソ魔王!」


 「勇者!何とかしてくれ!我、死にそう!」


 「だから、自分で少しは回復しろよ!」


 結局次の日の朝までやってしまった。俺は魔王同様負けず嫌いなのだ。徹夜でゲームをした時のやっちまった感が半端ないが渋々ギルドに向かう。ああ、太陽が眩しいぜ。


 「われ、悔しい!」


 「俺だって悔しいんだよ!なんで海の中はあんなに動きが鈍いんだよ!」


 物凄く不機嫌な顔でギルドに行くと、受付のお姉さんに呼ばれた。


 「お二方、ギルドマスターがお呼びです。」


 「めんどくさい、パス!」


 「我は、ちぇんじ!」


 俺達が帰ろうとしたので、お姉さんが足にしがみつく。そのままでも歩けるが世間体が悪いので仕方なくギルドマスターに会いに行く事にした。


 「我は、ゲームしたい。」


 「俺は、かえって寝てーよ。」


 「あなた達って本当にフリーダムですよね!」


 「うむ、チーム名はフリーダムで決まりだな。」


 3階のギルドマスターの部屋に案内された。結構立派な部屋だ。色んな物が飾られていた。ギルマスは収集癖が有るようだ。俺の自宅の押し入れのプラモを見たら喜ぶかもしれない。俺の収集癖も大変な物なのだ。


 「マスター、お二人を案内いたしました。」


 「うむ、入れ!」


 偉そうなおっさんが、机に脚を載せてふんぞり返っていた。


 「お姉さん、俺コーヒーね。」


 「我も、我も!」


 偉そうにふんぞり返っているギルマスの前のソファーにどっかり座り俺も机に脚を載せる。本来こんな行儀の悪い事はしないのだが、しょうがない。折角ギルマスが挑発しているのだから、ここは空気を読んで挑発に乗らなくては行けない。俺は空気を読むナイスガイなのだ、魔王も当然俺の真似をする。


 「き!貴様ら!無礼だぞ!誰が座っていいと言った!」


 目の前の40歳位の若造がわめいているが気にしない。阿保が大声出して驚くのは子供だけだ。大人は聞こえない振りをするのだ。


 「煩い!黙れ!」


 「うむ、我も煩いと思う。」


 「お、お前ら駆け出し冒険者のくせに!俺に逆らうと、どうなるか分かってるのか!」


 「どうなるんだ、やってみろ!」


 「うむ、やってみるのだ。」


 目の前のギルマスは机から脚をあげて立ち上がってプルプル震えていた。俺達は余裕で座ってるので、なんか勝った気がする。良い気分だ。


 「こう見えても俺は元Bクラスの冒険者だぞ!覚悟しろよ駆け出し!」


 「おお嫌だ、嫌だ。昔の話を持ち出して人を脅かすなんて、最低だな!」


 「そうだ、さいてーなのだ。」


 そこにお姐さんがコーヒーを持って入って来た。


 「失礼します。コーヒーお持ちしました。」


 「ありがとう、お姉さん。」


 「ありがとう、なのだ。」


 「こんな奴らにコーヒーなんか出さなくていい!」


 「え、でも・・・」


 「なんだ、ここのギルマスは礼儀も知らない様だな。ああ、嫌だ!」


 さんざん挑発したのでギルマスは俺に殴り掛かって来た。勿論おれは避けずそのまま殴られる。ついでに派手に壁際まで吹っ飛んで見せた。


 「うわ~!物凄く痛い!ギルマスに殺される!これはもうしょうがない、反撃しないと殺される!」


 俺はギルマスに思いっきり笑いかけてやった。ここでやっとギルマスにもどちらが本物の悪党なのか分かった様だ。


 「や!やめて下さい!勇者様、私まだ今週分のお給料もらってないんです!」


 「なんだ、お前、本当に最低だな!」


 そして俺は自分の身を守る為に仕方なくギルマスをボコボコにした。そして反省するようにギルドの入り口に紐で縛って逆さまにぶら下げた。てるてる坊主を逆にする感じだったのだが、ギルマスはおれのブラックジョークが気に入らなかった様で、ギルマスを辞めて街から出て行ってしまった。


 「勇者様、ギルマスいなくなりましたよ、どうするつもりですか?」


 「どうするって言われてもな~、俺関係ないし。」


 「関係アリアリです、怖くて次の成り手が居ないんですよ!責任取って下さい!」


 「責任?俺達まだやってないよね?」


 「そっちじゃ有りません!ギルドの方です!」


 「分かった、俺も男だ、逃げも隠れもしない。こいつが次のギルマスだ!」


 「え!何!我がやるの?」


 「そうだ!偉大な魔王が平の冒険者等許されん!ギルマスこそ魔王にふさわしいのだ。」


 「お~、我感動!」


 こうして異世界初であろう魔王と勇者がギルマスをする冒険者ギルドが出来てしまった。魔王はノリノリで尻尾を振り回している。嬉しい様だ。



 


 


 

 


 

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