2章 森の小道
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魔王が鼻歌を歌いながら歩いている後ろを俺は重い足取りで歩いていた。魔王の尻から生えている尻尾が左右に揺れているのが何故か気になる。時折背中の羽も動いていた、何だかとてものどかだ。
「うん、勇者よ。何か来るぞ。」
「何かって何?」
「人間が5人じゃな。」
ひやっは~!! 森の中から盗賊が現れた。汚い恰好をした5人組だ。
「有り金全部おいて行け!」
凄い盗賊だった。見るからに怪しげな魔王を見ても全然怯まずテンプレを言い放ったのだ。
「わし金持って無い、勇者は?」
「俺も金持ってネ~ぞ!」
「何だと!お前ら、俺達盗賊をなめてんのか!殺すぞ。」
「ワハハは!ナイスジョークじゃ!人間のくせに面白いヤツじゃ。」
何故だか魔王は盗賊のセリフに大笑いしていた。結構笑い上戸なのかも知れない。しかし、この盗賊達凄く目が悪いのか頭が悪いのか・・・それとも両方なのか、まだ魔王相手に商売をしようとしていた。
「やっちまえ!」
ぼこ!どす!がん!ぐしゃ!おげ!
「へ~結構もってるな~。」
「何をしてるのだ?勇者よ。」
「財布取ってるんだ。俺金もってね~から。」
「そうか、なら我も。」
盗賊をボコボコにした俺達は、二人で盗賊の財布をあさっていた。勇者と魔王が盗賊の金を盗んでいるのは結構珍しい光景だと思う。多分この世界で初めてだろう。カッコ良く言えば史上初って奴だ。
「おい魔王。これ腰に巻いとけ。」
「何だその小汚い布は?」
「お前裸だろ。ブラブラさせとくとみっともないぞ!」
そうこの魔王さっきから裸なのだ。尻尾の反対側もブラブラ揺れてるので凄く気になっていたのだ。魔王本人は全然気にしていない様だが。
「我は裸が良いのだ。ズボンをはくと尻尾が痛いのだ。」
「我慢しろ!人間の町に裸で入ると変態と思われるぞ!」
盗賊5人から8万程手に入れた俺達は、町へと歩いて行った。
「わし、腹減ったな。チラ・魔王何か食べたいな。チラ・チラ」
何か魔王が俺にアピールして来ているが完全に無視する。なにせ俺は勇者なのだ鋼の精神力を持つ男なのだ。魔王ごときの何か食べたいアピールなどに全く動じる事はないのだ。
「そうか、我慢しろ!」
そして俺達は街に着いた。結構大きな街らしく城壁に囲まれている。高さ5メートル程の石の壁に囲まれた城塞都市だ。入り口は一か所しか無い様で大勢の人が並んでいた。
「勇者よ、何か顔が怖いんだが?」
「俺はな魔王、並ぶのが大嫌いなんだ。」
「ふ~ん、我は大人だから平気だ。」
今丁度前に100人ほどの行列が出来ている、ノロノロとしか進まないので後1時間程かかりそうだ。結構厳格な入場審査をしている、きっと優秀な兵士と領主なのだろう。だが、俺には迷惑だった。
「おい魔王、魔王の威圧出せるか?」
「勿論出せるぞ?」
「出せ!全力でぶっ放せ。」
「うむ、お主がそういうなら出すか。」
魔王の身体から物凄い魔力がほとばしった。魔王が持つ固有スキル魔王覇気だ、レベルが低い生物は完全に金縛りにあい、全身を恐怖が支配する強力なスキルだ。勿論俺は勇者だから平気だ。
俺達の周りの人間が泡を吹いてバタバタと倒れてゆく。恐怖で腰を抜かしている者もいるようだ。そして意識のある人間は恐怖の瞳で魔王を見ていた。
「んじゃ行くぞ魔王。」
「えっ、良いのか?」
「いいじゃん、空いたじゃん。」
行列が消滅したので俺達は列の先頭へ歩いて行った。そこで番兵の審査を受けるのだが、俺達が近づくと番兵が逃げるのだ。これではいつまでたっても街に入れない。仕方ないので走って番兵を捕まえた。
「おい、お前。俺達を審査しろ!直ぐにだ!」
「ひいい~!どうかお助けを!」
「助けてやるから、さっさとしろ!」
「はひいいい~!」
俺達は直ぐに街に入れてもらえた。中々話の分かる番兵だった。本来なら入るのに金がかかるらしいが、番兵は何故か俺達に有り金残らずくれたのた。きっと貧乏な俺達に同情したに違いない。
「勇者よ、中々大きな街ではないか。我は気にいったぞ。」
「そうだな、ここなら食い物屋位有るだろう。」
「食い物屋か、我は楽しみだのう。」
行列の出来ていた食い物屋が有ったので、魔王の威圧を使ってスイスイ入り込む。行列が出来るのだから旨いのだろう。皆俺達に金を差し出そうとしていたが、順番を譲って貰った上に金までもらうと悪いので断った。なんせ俺は勇者だからな。
「お姉さん、定食3人前ね。」
「我のは?」
「俺が1人前でお前が2人前だよ。足りなかったら又頼んでやる。」
「我は幸せ。」
魔王はそれから定食3人前を追加注文して食っていた。まあ、あの身体だったら仕様がないな。大体5人前位食う様だ。
「のう勇者、これから我達はどうするんだ?」
「まずは金を稼がないとな、飯食わないと死んでしまう。次に住むところだな。」
「世界は救わないのか?」
「どうやって?」
「???」
「取りあえず、俺達が生き残るのが大事だ。死んだら世界を救えないからな。」
「おう、それもそうで有るな。」
そういう訳で俺達は生活費を稼ぐために冒険者になる事にした。さて冒険者ギルドに行くか。