16章 世界は平和になった
「おっちゃん、何造ってるんだ?」
「魔王のねーちゃんが地元料理のちゃんぽん作るって言うから対抗して俺は団子汁を作ってる。」
「へ~、本場のチャンポンって美味そうだな。」
「何でも家毎に味が違うらしい。皆自分の家のちゃんぽんが一番美味いって言ってたな。」
「大変です!また勇者が攻めて来ました~!」
「鬱陶しい連中だな、ヒメ今度はお前の番だろ?入場料取ってこい。一人100万。」
「分りましたわ、おじ様。」
「お金取るんですか?」
魔王が不思議そうな顔で俺にたずねた。
「当たり前だ、あいつらタダだと思って気楽に魔王討伐に来るんだ。金取ったら少しは減るはずだ。」
「何かテーマパークみたいですね。」
「テーマパークで良いじゃねーか、挑戦者から金取って。ついでに観客も入れて儲けようぜ。」
「ひえ~!そこまでしますか。」
「家の連中が戦うからお前は美味しい物でも売って儲けたら良いんじゃないか?」
「殺さない様に手加減して、治療費もがっぽり頂こう。」
「ふひ~、本物の悪党です~!」
「わはは~、こ奴こそ本物の魔王なのだ!吾輩が保証する。」
「なに言ってるんだ、殺し合いからスポーツに換えた功労者だぞ!」
「確か旦那って向こうじゃ賢者って言われてたよな?凄く悪知恵が働くから。」
「レビン、お前だけ団子汁無しな!」
そう俺は達は魔王城に住み着いて魔王のボディーガードとして働いた。勇者達にとって幸運な事に俺達は彼らを殺したりしなかった。対戦料を貰っているので又再戦しに来てほしかったのだ。そうすれば何度でも勇者から金がとれるからだ。魔王は料理スキル持ちなので美味しい食事を高値で出して儲けていた。魔族領なので食材が高いと言う言い訳をしたら勇者達は信じていた。単純な阿保共で助かった。そしてギルドを通じて向こうの国王と連絡を取り、毎月一回魔王挑戦の試合を行う事にした。観客の安全も保障したので魔族領に魔王対勇者の戦いを見に来る観客も増えていった。
「どうだ魔王?儲かったか。」
「はい!お客さんがいっぱい来て大儲けです。」
「部下の魔物に美味しい物あげたら喜ばれました。」
「良かったな、この調子でいけば魔族と人間は仲良くなれそうだ。今度は勇者だけじゃなくて違う種類の戦いも見せる様にしようぜ。」
「良いですね、力が余ってる魔物たちも喜びます。」
毎月魔王城で興行をしていたら人間たちも魔物達もお互いに慣れた様で、余りいさかいは起き無くなって来た。毎月大勢の人間や魔物が集まって来るので、宿泊施設やお土産や食堂なんかもいっぱい作って儲けてやった。その金で魔族の生活を少しずつ向上させていったら、争うより人間と仲良くした方が暮らし向きが良くなる事に気が付いた魔族達はとても協力的になった。協力しない魔族は家の魔王やチチ達が強制的に協力させるか消滅させた。
「おっさん、いつの間にか平和になったな。」
「そりゃあそうだろう元々争う理由がね~からな。魔王と勇者が争わなくてはいけないなんて誰が決めたんだ?」
「吾輩は勇者と戦わなくて良いのであるか?」
「自分の国で平和に暮らしてたら戦う必要はないだろ?戦うのは相手が自分の所に攻めて来た時だけで十分だ。めんどくさいからな。」
「それもそうであるな、美味い物食って寝てた方が楽なのである。」
「へんなスイッチが入った狂人さえ始末すれば世の中は結構上手く行くんだよ。皆楽な方が良いからな。」
大分落ち着いてきたので俺はギルドで保護していた勇者達に、現魔王が転移者で有る事。人間と争う気が無い事を伝えた。死ぬ心配が無くなった勇者達は喜んで、観客に受ける試合をする様になった。それは娯楽の少ないこの国の住民に喜ばれ益々試合が盛り上がる事になった。今や魔王対勇者は人間と魔族にとってなくてはならない一大イベントとなったのだ。
「おい、のじゃ!出て来い!」
「なんじゃ、気付いたおったのか。」
「当たり前だ、俺をなめるなよ。」
「流石は2つの世界を救った勇者じゃな。」
「それじゃこれで良かったんだな。」
「うむ、ありがとう勇者よ。」
「俺に説明しなかったのはスキルが消えるからか?」
「そうじゃ。すまなんだ。」
「そんじゃ、やってくれ。」
「相変わらず淡泊じゃな。」
こうして又俺は自分の世界に帰って来た。何故かノジャが一緒についてきたので一緒に焼き鳥屋で一杯やった。久しぶりの自分の世界は楽しかった。もう2度と俺を呼ぶなとノジャに言ったら笑っていた。
孤児院の勇者Ⅱ・終わり




