11章 第2試合
「大丈夫か?レビン。」
「ああ、大丈夫。骨が2・3本折れただけだ!」
「それって大丈夫じゃねーから、早くヒーラーに治してもらえ。」
1回戦でボロボロにされてもレビンは凄く元気だった、流石は聖騎士、やられ慣れている様だ。そう言えばあいつが勝っている所を見た事が無かった。
「しかし魔王はすげえな、滅茶苦茶つえ~じゃねえか。」
「当然だ魔王であるからな。お主も中々見どころが有るぞ、どうだ?儂の配下にしてやろうか?」
「え、マジで。じゃあお願いします。」
「おいおい、良いのか?お前聖騎士だろ。」
「この世界じゃ聖騎士じゃね~し。長い物には巻かれろって言うだろう。」
「お前も切り替えが速え~な。」
この世界の人間はとても逞しい、逞しく無ければ生きていけないから。それに自由だ、煩い規制も団体も存在するほど社会が豊かでないから。非合法組織というのは平和な法治国家で人権を守られなければ存在出来ないのだ。つまり平和が長く続くと非合法な暴力団やスパイ組織が大きくなるというパラドックスが生まれる訳だ、変だろう?
「あら、1回戦突破おめでとう。」
「ようアンジェラ、ありがとう。まあ俺は逃げ回ってただけだけどな。」
「旦那!この美人だれだ?」
「他のギルドの選手だ。色々教えてくれる親切なお姉さんだ。」
「紹介してくれ!」
「何この人?」
「こいつはレビン。彼女いない歴=年齢の痛い奴だ。」
「うわ~!何てこと言うんだよ!」
「う~ん、これじゃあモテないのも納得だわね。」
「ちくしょ~!治療に行ってくる!」
レビンは泣きながら走ってギルドの治療院に行った。骨が折れてるのにタフな奴である、流石は聖騎士だった男だ。
「一緒に昼飯でもどうだい?」
「それを待ってたのよ。早く行きましょう。」
アンジェラは俺の腕を取って屋台の方向へ引っ張って行く。腕に当たる胸が存在をアピールしている。うん若い女の張りのある感じも良いが、アンジェラ位のフワフワした感じも良いもんだ。
「アンジェラ達の試合はどうだった?」
「負けたわよ、無理して怪我すると損だから。」
「我は肉が食べたい!」
「了解。肉食って午後も頼むぞ。」
「任せるのだ!」
魔王が肉を食べたがってるので、牛肉、豚肉、鶏肉、クジラ肉のステーキを出す。戦う時には肉を食べて攻撃性を増すのが良い。野菜ばかりじゃ戦う気が起こらない。ついでに野菜サラダ、シーザーサラダ、俺の好きなエビのシュリンプを出してスープはクラムチャウダーにする。
「むほ~!色々あるのだ!」
「アンジェラもどれでも好きな物食べろよ。」
「うわ~凄~い!これを待ってたのよ。」
俺はクジラ肉は匂いが苦手なんだが、魔王は大喜びで食っていた。生々しい感じが良いらしい。アンジェラも平気の様だ。やはり俺は軟弱なんだなと思う。口に入る物は何でも食えなければこの世界では駄目らしい。
「旦那、俺にもくれよ!」
「おお、早かったな。大丈夫か?」
「ああ、良いヒーラーが居たから直ぐ治ったぜ。」
「そうか、それじゃドンドン食って昼からも頑張ってくれよ。」
アンジェラが言うには次に俺達が対戦するチーム・黒の魔導士は汚い戦い方をするチームだそうだ。相手をいたぶる戦い方なので冒険者仲間からは嫌われているが、一般人には人気が有るのだそうだ。まあプロレスで言うとヒールって奴だな。
「しかし、その人凄いわね!もしかしてキングオーガとかジェネラルオーガとか言う希少種なの?」
「うん、まあ、そんな所だ。」
「当然だ!我は珍しいのだ。」
魔王だから確かに珍しくて希少だ。弱小ギルドのギルマスしてる魔王なんて聞いたことないから、亜人の鬼人族と思ってる様だ。ギルマスが亜人なのは良くある様だ。
「ふ~美味しかったわ、ご馳走様。また、夜も一緒に食事してくれる?」
「いいぞ。友達も連れて来いよ。」
「それじゃあ綺麗所を呼ぶわね。」
「なんで!旦那ばかりモテるんだよ!俺だってモテたいじゃねーか!」
「別にモテてねーだろ。飯食ってるだけだろ!」
「旦那に俺の気持なんかわかるもんか!爆発しろ!」
「色んなねーちゃんが来たらお前にもチャンスが有るだろうが!」
「そうかな?・・・旦那ありがとう、やっぱ頼りになるぜ。」
そして、午後第一試合、相手は前回5位の魔導士5人組チームだ。全員黒いローブに杖を装備している。こちらは午前と同じ、武装は俺がガバメント、レビンはこん棒、魔王は素手だ。観客から俺達にブーイングが飛ぶ、ほぼ無武装の俺達に対するクレームだ。
「試合開始!」
「うおぉお~!!!」
またレビンが突撃する。魔導士相手に接近戦を挑むのは当然だ、こちらの攻撃を当てなければ勝ち目はまいのだから。
ファイアーボール!
ウインドカッター!
アースバレット!
ウオーターカッター!
ロックジャベリン!
「あち!いて!冷めてー!ぎゃひ~!!」
魔法攻撃全弾を食らったレビンは床を転げまわっている。流石は元聖騎士。死んでない。
「わははは~!我参戦!」
一瞬で相手との距離をつめた魔王は魔導士達を殴り飛ばしている。本当に文字どおり人が宙を飛んでいるのだ。レビンがやられる前に倒せたくせにワザとレビンがやられるのを待ってたようだ。
「ふん、他愛のない。」
「勝者、チーム・フリーダム!」
また勝ってしまった。魔王一人の力で。
「魔王師匠ひで~や!俺がやられる前にかたづけて下さいよ!」
「何を言う、お前に活躍するチャンスを与えたのだ!モテモテに成りたいのだろ?」
「そりゃあ、モテたいけど死ぬかと思ったぜ。」
Aクラス魔導士の魔法5発をまともに食らって死なないレビンは化け物かと思った。しかも、既に回復している様だ。
「旦那!晩飯楽しみだな!えへへ~。」
「レビンお前大丈夫か?魔法5発食らったよな?」
「ね~ちゃんと晩飯一緒に食うまでは絶対に死なないぜ!俺は!」
良くわからんが、レビンの煩悩は魔法攻撃よりも強いらしい。聖騎士じゃなくて性騎士だったようだ。スキップするレビンと一緒に俺達は宿屋へと向かった。明日は勇者との戦いが有るが、危なく成ったら降参すれば良いだけなので気楽だった。




