1章 異世界再び
孤児院の勇者の続編になります。孤児院の勇者同様生暖かい目で見てやって下さい。
目が覚めるとそこは異世界だった。
「またかよ!クソ女神。いったい俺に何の恨みがあるんだよ!」
前回の異世界召喚で女神に転移させられた俺は、見事に愛と勇気で異世界を救い世界に平和をもたらしたのだ。
「おう、目覚めたか勇者よ。」
「はあ、何でお前がいるんだよ!これは何かの罰ゲームか!」
「フハハハハハ~、訳が分からない様だな勇者よ。偉大なる我が無知なお主に・・・わ!何をする!・・ やめろ!・・痛い!痛い!・・・マジ痛いからやめて下さい。」
俺の前には魔王がいたのだ。前回の転移の元凶、異世界を破滅させようとしたやつだ。勿論おれがボコボコにしてやった奴だ。
「何偉そうにしてんだ!クソ魔王が!」
「いや、偉そうと言われても・・・ワシ本当に偉いし・・魔族の長ですし・・・」
「なに!まだ殴られたいのかお前!」
「やめて下さい!マジ痛いですから、今度は死にますから、勘弁して下さい。」
土下座して謝る魔王が言うには、魔王は前回魔族を滅ぼしかけた責任を取ってこの世界を救う使命を受けたのだそうだ。そして魔王だけでは不安な女神が俺をサポート要員としてつけたそうだ。
「お前のせいじゃねーか!クソ魔王!俺に迷惑ばかりかけやがって。あの時ヤッテレバ良かった。」
「いやすまん、ワシのせいだと言う見方も出来るかもだが・・ここはこう大きな心でだな・・・ぐは!・ 痛い!痛い!」
「お前はいちいち煩いんだよ!」
「勇者こそ暴力ばかりではないか。我でなければ死んでおるぞ。全く、乱暴な・・・」
俺の怒りが頂点に達し、身の危険を感じた魔王は土下座した。頭を地面にこすりつけて目を絶対に合わせない様にしていた。
「すまん勇者、愚かな我に力を貸してくれ。この通りだ。」
「全く最初からそう言えば俺の血圧も上がらずに済むんだがな。」
「わ、我は少し頭が残念なので、お主だけが頼りなのじゃ・・です。」
「で、一体俺は何すれば良いんだ?」
「ワシと一緒に世界を救ってくれ・・下さい。」
「どうやって?」
「?????」
魔王も詳しい話は聞いていないらしい。女神がこの世界を救う様に言ったからここに来てるだけらしい。
「またかよ!あの女神。おれの時も何も言わずに異世界に転移しやがったぞ。」
「うむ、ワシも何をすれば異世界を救えるか全然分からないのだ。」
「そりゃあそうだろう、いきなり知らない世界の来て、世界を救ったらビックリだ。それは神であって勇 者でも魔王でもない。」
取り敢えず腹が減ったので、どこか人の住んでいる町に行くことにした。
「おい、魔王。人の町はどっちにあるんだ?」
「うむ、あっちに人の気配が沢山あるな。」
「へえ、すげ~な。そんな事が分かるのか。」
「フハハハハハ、当たり前であろう。我は魔王!魔族100万の頂点に立つ王だぞ。」
「煩い!黙って歩け。」
「・・・酷い扱いじゃのう。」
森の小道をゆっくり二人で歩いて行く。以前の異世界と似た感じの森だった。道も馬車が1台やっと通れる位の広さだ。兎に角人に会わないと、この世界の文明レベルも文化レベルも分からない。そして問題とやらもさっぱり分からないのだ。
だだ相棒の魔王は頭は悪いが物凄く強いので、その点だけは頼りになる。以前の様に転移してすぐに盗賊に襲われて殺されかけた時より随分ましだった。
「おい魔王、お前一体どの位強いんだ?」
「うん、我のステータス見るか?」
「そんなモン有るのかよ。」
「パーティーを組めばメンバーのステータスが見れるのだ。異世界の常識だぞ。」
「何だと、前の世界で一度も見てないぞ。」
「良くそれで世界を救ったな、流石勇者よ!凄すぎて訳が分からんレベルじゃ。」
パーティーを登録をして魔王のステータスを見てみた。
名前 魔王
種族 魔族
レベル 99
HP 9999
MP 9999
Str 9999
Def 9999
Agr 9999
Int 90
Luk 9
スキル 暗黒魔法 魔王専用暗黒魔道
称号 異世界の魔王
何だか9が沢山並んでいるステータスだった。良く分からないので自分のステータスを見てみた。
名前 ぴっぴ
種族 人族
レベル 1
HP 120
MP 80
Str 180
Def 150
Agr 120
Int 150
Luk 180
スキル 銃魔法 勇者パワー
称号 異世界の勇者
「何だこれ、ダメじゃん。世界救えないじゃん。弱いじゃん。」
「あれ?普通の人間より少し強い位しかないのう?変じゃの?」
何だか俺の感が、こりゃあ駄目だと警報を送っている。早く家に帰って寝た方が安全だ。もうこれ以上進みたくない気分だ。多分また女神が間違えたのだ、俺にチート能力を付けるはずが忘れたに違いない。
「大丈夫じゃ勇者、何か有れば我が守ろう。グハハハハ。」
「くそ!・・・」
それから俺はこの能天気な魔王と共に森の中をトボトボと歩いていった。そのうちこの魔王をまいて何処かの町で食い物屋か村人になって平凡に生きてやろうと思っていた。世界を救うと罰ゲームが有るので絶対にこの世界は救わないと心に刻み込んだ。
「ふんふんふ~ん!」
何故か隣の魔王は上機嫌だ。鼻歌まで歌っている。2メートルを軽く超す巨体で、頭に2本の禍々しい角と背中に蝙蝠の翼、尻から尻尾を生やした怪物が鼻歌を歌いながら俺の隣を歩いているシュールな光景に俺は自分の不幸体質を呪った。ついでに女神とこの世界も滅びる様に祈ってやった。