りあと魔術師。
「よう、りあ。随分と手厚いねぇ。」
冷やかすように、男がりあへと声をかける。
「……。」
りあは無視して通り過ぎようとして、後ろから男に肩を掴まれた。
「待てよ。……悪かったよ、そう冷たくしなさんな。」
男はそう言って、へらりと笑う。
男の耳は長く、とがっている。やや肌が浅黒く、眼が赤い。
「何?」とだけ不機嫌な声で返して、りあは眼を細めた。
あからさまにあなたとは話しをしたくない、というオーラを出していた。
肩を掴む男の手を払って除ける。
「……あれ、まずかったんじゃねぇか?」
男は手を除けられてもへらへらと笑う。
「あなたには関係ないです。」
りあはそう返して、もう話は終わったとばかりに足を進める。
りあの後姿へ男は声をかける。
「まぁた、りあが落ち込まねぇか心配でよ。」
「……。」一瞬、りあは足を止めたが。
それには応えず歩き出した。
やれやれ、と男は肩をすくめた。
「嫌われたもんだねぇ……。」とぼやいて、頭をかいた。
一応、この男なりにはりあの心配をしているらしい。
この男……ダークエルフの名は、クロス。
りあと話したいばかりに言語魔法を駆使し、ついに地力で日本語を話せるようにまでなってしまった。
りあに執着しすぎて、りあと仲が良い相手と当たった時は全て殺してしまう。
そのせいでりあに嫌われていた。