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犯人は僕でした  作者: 駒米たも
本編
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064 撤収

「リンドブルーム様の持ってきたお話の内容ですが、ライン商会とリンドブルーム商会は互いに協力関係を結ぶという方向で話が纏まりました」

「そうなんだ。船長の事だからもう少し積極的な提案をされると思ったけど……もしかして、警戒するようにレイヴンに言われたのかな」


 僕の答えにエルメダさんは一瞬驚いたように目を開き、そうしてゆっくりと微笑んだ。


「リチャード様。ようやく話し方を思い出されたのですね」

「……」


 そっと口を閉じる。僕が今ペラペラお話できている理由はアンデル監督の御目こぼしと、先ほど「ユニコーンと盾」で飲酒したお酒の成分によるものだ。

 酔っぱらった状態の僕は、いわば無敵となる。自分でも何言ってんだと思うけど、昔っからそうなのだから仕方ない。お陰で英語は喋れるようになるし、何だかこの全てが僕にとって都合の良い方に転がるような、そんな不思議な事すら起こるのだ。

 その代わり、一時的な飲酒ブーストが終わればそこに待っているのは地獄の二日酔い。二日で済めばいいけど、起こした奇跡と飲酒量に比例して一週間ぐらい具合が悪くなることもある。

 もしも今僕がちょっと酔っているとエルメダさんにバレてみろ。再度あのロンドンの下水が如き酔い覚ましを飲まされるはめになる。

 僕はまだ、こんなところで死にたくないのでござるます。


 因みにエルメダさんの言っている「ライン商会」というのは何代か前のライン卿が遊び半分で設立した貿易商会のことだ。本編に出てくるリチャードの身分を保証してくれる大切な商会アリバイでもある。

 マーシュホースのトップが二人とも殺されたんだから、きっと中央街シティは混乱しているだろうなぁ。

 エルマー夫妻が死亡したことによって、アビゲイルのいるアシュバートン家にもマーシュホース商会の莫大な株が相続される。

 アビゲイルの家は貴族と婚約が結べるくらいお金持ちだったけど、これでもっとお金持ちになってしまうね。そうなるとロンドンの金融競争の天秤をアシュバートン家が傾ける未来が来るかもしれない。

 アビゲイル、大丈夫かな。リチャードが殺さなくても、遺産目当てに近づいて来た人に殺されたりしないよね。心配だなぁ。一度見逃すと決めた獲物を知らない奴に横取りされるのって凄く嫌なんだよね……ん?


 マーシュホースは復活するのか。それとも消え去ってしまうのか。手腕が試されます。

 ライン商会ならマーシュホース商会を買収出来るんだろうけど、船長自ら協力関係を求めにきたって事は「場を荒らすなよ」って釘を刺しにきた意味合いも多い。

 先代の所為で埃が出てきそうなライン商会がマーシュホース商会の事業を引き継ぐだなんて……正直言って興味しか無いけど……そんなの経済的蟲毒だ。

 ライン商会は解剖と人身売買が主力メインの清く正しいマッドサイエンティスト御用達商会であって、阿片やクスリ、兵器売買を扱う戦争屋商会ではないのだ。求めるのはサスペンスであってアクションではない。商会のジャンルが違う。

 そもそも、素人がこの時代の倫敦金融戦争ちみもうりょうのすに首を突っ込もうとか冗談じゃない。


 人間関係がギスギスするお金の事は忘れて、ミステリーとサスペンス溢れる事件と探偵とシスターの活躍を追いかけ回していたい。

 犯人と容疑者の狭間でお互いに疑心暗鬼に陥りながら、陸の孤島で偶然呼び出された一癖ある知人とばったり顔を合わせてギスギスしたい。


 せっかく好きな世界にいるんだもの。

 この命ある限り、趣味を求め、何も周りへの迷惑を考えず。

 この世界でほどほどに好きに生きていく心算です。

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