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犯人は僕でした  作者: 駒米たも
本編
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054 対峙

「そう。キャンディー。それからチョコレートです。お菓子屋さんで買いました」


 僕の言葉に署長が嫌な笑みを浮かべた。

 撃たれたら痛いのかな。ナイフで切られただけで痛かったんだから、凄く痛いんだろうな。嫌だな。


「何が望みだ。若者らしい正義感に駆られて無謀にも私の計画を止めに来たのかな? ライン卿。味方は誰もいないようだが」

「いやまさか。止めようだなんて思っていないです。止められるなら、止めたいけど」


 ――君は血にまみれた状態で部屋にいた。窓は開いていて、壁を伝えば二つ隣の夫人の部屋へ侵入できる。アリバイ(・・・・)は無く、凶器を持ち、服のポケットからは犯行に使われたと思わしき毒針が出てきた。さて、何か言い逃れはあるか。


 取り調べをしたあの時、バグショー署長は確かに「アリバイ」という言葉を使った。

 アリバイという言葉自体は古くから存在する。

 しかし意味は「代わりの人が別の場所にいる」というもの。

「現場不在証明」という犯罪用語として使われ始めたのは二十世紀初頭。つまり、今からざっと五十年ほど未来の、知らないはずの言葉を署長は使った。

 ジェイコブ先生の家で辞書を借りた時、アリバイの意味も確認しておいた。現代で使われている意味は書いていなかった。つまり、目の前にいるこの人は、この時代の人間ではない。

 さきほどバークさんにお菓子を見せた時、彼はとっさにスイーツと言った。

 飴をキャンディーというのはアメリカ英語。


「おっ、お手紙ありがとうございました、アンデル監督ー!!」


 懐から印籠のように取り出した紙面を掲げる。

 僕の元に届けられた、アンデル・バーキンダムを名乗った誰かからの手紙。

 アンデル監督は僕を知らない。

 けれど、僕はアンデル監督の喋り方も言葉の特徴も思考の癖も全部知っている。

 ファンってのはね。パンフレットやオーディオドキュメンタリーを何度も何度も見る者なのだよ。

 だから分かるんだ。目の前にいるのは「バグショー署長が好きでたまらないアンデル監督が彼の姿をとって喋っている」ということが。

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