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仲間

「キャ~! 勇者様のステキ~!」


 勇者が現れたということで、その日の宴は豪勢に行われた。

 デュベルは三人の美女に囲まれて宴を楽しんでいる。


(魔王城はヴェデット以外ほとんど男とモンスターだし、たまにはこういうのも悪くないな……いや、これはあくまで偵察だ! 俺は決して美女に釣られて来たわけではない!)

 そう思いながらも、デュベルは美女の肩や腰に手を回して上機嫌である。


「はい、勇者様。あ~ん」


 美女が手に取った苺をデュベルの口元に持ってくる。

 デュベルはすかさず口を開けて、美女の指ごと苺を頬張る。


「キャ~! 勇者様に指舐められちゃった」

「勇者様~! 次はこれ食べて~」


 別の美女が胸の谷間にプリンを置く。


「いっただっきま~す!」


 デュベルは本能の赴くまま、美女の胸の谷間のプリンを舌で舐め取り、口に含む。


「いや~ん! 勇者様のエッチ~!」


 美女は嬉しそうにデュベルを小突いた。


「楽しんでおるようじゃな、勇者マオウよ」


 酒で顔を赤くした国王がデュベルの許にやってくる。


「さて、勇者マオウよ。明日は共に旅をする仲間を決めるのだが……」

「じゃあ、仲間はこの美女三人で!」

「そういうわけにはいかん。明日は城にこの国の猛者を集めておく。好きな者を連れていくがいい」


(ちぇっ、別に俺一人いれば仲間なんて誰でもいいのに……)


 残念そうな表情を浮かべながら、デュベルは美女達の胸や尻に触れる。


「あはは、勇者様ったら~」


 そんなデュベルの美女達との楽しいひとときは夜遅くまで続いた。



 ◆



「いやぁ、昨日は楽しかったな。久々に魔王らしいことした気がする」


 翌日、エレット城に向かうデュベルは、前日の宴の余韻に浸っていた。


(美女に囲まれるのも悪くないな。世界征服なんて非生産的なことはやめて、代わりに美女ハーレムを作ろうかな)


 世界征服を目指すのは魔王の義務である。しかし、世界征服の内容はその時の魔王によって異なる。

 これまでには、世界征服をして人類を滅ぼそうとした魔王や、ただの自己顕示欲のために世界征服をしようとした魔王もいれば、魔族と人類の共存・共栄を目指した魔王もいる。

 もちろん、デュベルの祖父である先代の魔王も世界征服を目指していた。

 だが、これまでの魔王の誰一人として、世界征服を成し遂げた者はいなかった。

 つまり、表向きは世界征服を目指していれば、結果はどうでも良いのである。

 そのため、デュベルは世界征服にはあまり興味が無かった。


(やっぱ魔王と言ったらハーレムだよな! 勇者に会えなかったし、代わりに美女連れて帰るか)


 そんな考え事をしながら歩いていると、デュベルに何者かが激しくぶつかってきた。


「うわっ!」

「キャッ!」


 ぶつかった反動で相手は地面に倒れ込む。

 そこには腰に細身の剣を帯剣した一人の少女がいた。


「おい、大丈夫か?」

「あ、すいません!」


 少女は慌てて鞄から散らばった荷物を纏める。

 髪は短めに切り揃えられ、ついつい見惚れてしまうような綺麗な顔立ちをしている。


「ああ、もうこんな時間!」


 そう言うと、少女は荷物を鞄に詰め込み駆け出して行った。


「綺麗な子だったが、剣士かな? どうせならあの子をハーレムの一員……じゃなくて、仲間にしたかったな」


 デュベルが呟いたときには、既に少女の姿は見えなくなっていた。



 ◆



「では勇者マオウよ、この中から気に入った者を仲間として連れて行くがいい」


 エレット国王が仲間として用意した者は三十人ほど。

 戦士、格闘家、賢者、魔法使い、修道士……などタイプは様々である。


「う~ん、誰にしよう……」


 デュベルが彼らを見渡す。しかし、大半は屈曲な男である。


(使えねぇ国王だな。どいつもこいつも男ばっかじゃねぇか!)


 デュベルは心の中で文句を並べた。

 だが、そんな中、二人の少女がデュベルの視界に飛び込む。


「ふえぇ~」

「……」


 服装から考えると、一人は修道女、もう一人は魔法使いだろう。


(この子達可愛いじゃん! 他はパッとした子いないし、この二人でいいか)


 デュベルは国王の方に向き直る。


「決まったか?」

「はい、この子とこの子にします」


 デュベルは二人の少女を指さした。


「修道女のセルティアと魔法使いのコナか……。確かに修道女は回復魔法を得意とし、魔法使いは攻撃魔法に長けているが、この二人はレベル1だぞ。魔法も全く使えないが、それでも良いのか?」

「大丈夫です。レベルなんて気にしませんし、そこは俺の力でカバーします」


 デュベルの言う通り、必ずしもレベルが高ければ強いというわけではない。

 レベルとは、実戦経験に応じて付与される等級のようなものである。そのため、レベルの低い者がレベルの高い者を倒すという事例も少なくない。

 だが、実戦経験が多ければ多いほど戦闘に慣れているということもまた事実であり、レベル1とは実戦経験がほぼ皆無ということになるのだ。

 それを理解している国王は渋い顔をする。


「ほら、そっちの彼なんてどうだ? 彼は既にレベル50で魔力が高く、使える魔法も豊富だぞ」


 国王が指をさした先には、若い男の賢者が立っていた。


「いや、俺は男には興味ないですから」

「勇者マオウよ、これは遊びではないのだぞ。下手をすれば命を落とすかもしれぬ旅だ。仲間はしっかり選ぶがよい」

「国王は分かっていませんね、だからこそですよ」

「ど、どういうことだ?」

「生物は死に直面したときどうするかわかりますか? 子孫を残そうとするのです。しかし、一緒にいるのが男だと子孫を残せない。後は分かりますね?」

「う、うむ……」

「というわけで、俺はこの二人を連れて行きます。異論はないですね?」

「ふむ、さすがは勇者だ! 考えることが違うな!」


(本当は二人とも俺のハーレム要員として連れて帰るのが目的なんだけどね)


 デュベルはニヤリと笑った。



 ◆



(さて。勇者の剣ヴィットと可愛い女の子を手に入れたことだし、帰るとするか。さすがに勇者の剣が無ければ、勇者も当分現れないだろう)


 デュベルが城を出ようとすると、入口で兵士が誰かと話していた。


「……というわけでもう終わってしまったんだ」

「そうですか……」

「それにもう勇者は決まってしまったんだ。諦めたまえ」

「はい……」


 気になったデュベルは兵士達に近づく。


(あれは朝会った女の子!?)


 兵士と話していたのはデュベルが今朝ぶつかった少女だった。


「どうしたんだ?」

「これは勇者殿! これから旅に行かれるとこですか?」

「ああ。それよりこの子は?」

「田舎から勇者選考試験を受けに来た剣士だそうです」

「へぇ」

「でも、勇者選考試験は昨日だったし、勇者はマオウ殿に決まってしまったから、帰そうとしてたところなのです」

「そうなんだ……」


(なんか不憫な子だな……)


 デュベルが憐れむように少女に目を向けると、少女と目が合った。

 少女は、その宝石のような瞳を涙で潤ませている。


「あ、あの……今朝の人ですよね?」

「そうだが」

「私も一緒に連れて行ってください!」

「えっ?」


 突然の申し出にデュベルは驚く。


(まさか今朝の子まで俺のハーレム要員になるとはな。今日は運が良い)


 デュベルの驚きの表情は次第に笑みに変わっていった。


「いいだろう、むしろお願いします」

「ありがとうございます!」

「これで丸く収まったな、さすがは勇者殿」


 兵士も安堵の表情を浮かべている。


「じゃあ行こうか。俺は魔王デュベル。この二人は修道女のセルティアと魔法使いのコナだ」


 そう言ってデュベルは手を差し出す。


「私は剣士のナギサです! よろしくお願いします、勇者マオウ様!」


 ナギサはデュベルの差し出した手を握り、嬉しそうに微笑んだ。

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