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俺の恋。決めた恋。  作者: テイジトッキ
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2.祝! 初デート

「私、ゲーセンに行きたい!」


 ……ゲーセンって。



 という訳で、今俺達は麻雀オンラインゲームの椅子に並んで座っている。


 何で、麻雀なんだよ~。

 コインゲームとか、レースとかシューティングとか、キャッキャしながら遊ぶゲームが山ほどあるのに……。

 もしかしたら何かの弾みで晴華に触れられるかもって妄想した俺の下心が破壊されていく……。

 まったく、何が嬉しくて無言で画面と睨めっこしてんだよぉ。

 しかも、別々の席で……俺って幸薄いのかな……。


『最近、麻雀覚えたの。加州雄は麻雀知ってる?』

『あ、あぁ。知ってる』

『そうなの? 面白いよねぇ。私、嵌っちゃってぇ。プロ目指したいなぁなんて思ってるの』

『マジで?』

『うん! マジで。結構いい線いってると思うよ私。ホラ、見て』


 俺は画面に映し出された晴華の段位に、度肝を抜かれた。


「……マスター?」

「うん! 朱雀マスター。ね、凄いでしょ? マジでいけると思わない?」

「あぁ、それはどうか分らないけど……凄いな」


 これって……いつからやってんだ? 最近って言ってたよな……。

 以前、俺も挑戦してたけど5段くらいで頭打ちして、面白くなくなってやめた。

 それでも、2年近く掛かったと思う……もっとか?

 同じ段位で上ったり下がったり……一度7段になったが、すぐに降格。

 それからは坂を転げるように3段まで降格して、なんとか這い上がって5段で頭打ちした。

 マスターって……8段の上だったか?……8段でオーブを何個集めたらマスターになれるんだったか? 

 8個? 10個? いずれにしても、東風戦はトップで貰えるオーブは1個。

 だから、できるだけトップを取り続けなければならない。

 半荘戦ではトップになるとオーブが2個貰えるが、4位だと2個没収される。

 3位でも1個没収だ。トップの2個を目指して半荘戦に手を出すと、逆に没収地獄に陥り降格の連鎖が始まってしまう。

 この時、意地になってゲーセンに通った事は、まだ記憶に新しい。



 俺の家族は全員麻雀大好き人間。じいちゃんもばあちゃんもとなれば、両親もとなるのは当たり前か?

 俺は幼い頃、お年玉や小遣いを兄弟によく巻き上げられていた。

 悔しかったが、今では授業料だったと思っている。

 暫くすると、俺の方が腕を上げていて兄貴から小遣い稼ぎをさせて貰っていたぐらいだからな。

 父親とは取ったり取られたりで、いい勝負していると思う。


 まず、『符』を覚えるのが大切だと教えられ。小学校の高学年で完璧にマスターした。

 しかし、今となっては相手もいない。学校の友達にも麻雀を知ってるヤツはいない。

 じいちゃんもばあちゃんも年老いてしまったし、いつの間にか家族で卓を囲むっていうのはなくなってしまった。


「あ~ん。またダメぇ~。2連チャンでトップは取れるのに3回目がダメなのよね~」

「何で? 降格するのか?」

「ううん。降格はないけど、3回連続してトップ取れなきゃ昇段しないの」

「ふ~ん。そうなってるのかぁ」

「悔しいなぁ。でも、ここで熱くなったらもっとダメ。じゃ、帰ろうか? かずおの方は? 終わった?」

「ああ、俺はいつでもいいぞ」

「……」

「何だよ」

「女でしょ?」

「……ええ、わ、私はいつでもいいわ」

「ぷっ!」


 晴華が噴出して笑う。

 おいおい、マジかよ~。晴華、性格変ったんじゃないか?


『歩き方だけは気をつけてね』と言われ、俺達は食事をする事になった。

 初めてのデートが女装したまんまってのが気にならなくもなかったが。今は考えないでおこう。気にすると足が前に出なくなってしまうだろう。

 大丈夫だ。晴華の様子からすると、嫌がってる風でもないし……だよな。

 こうやって、晴華と歩くのは俺としても凄く嬉しいことだし……うん。

 ……はぁ。それにしても、何で今日なんだよぉ。


「うふふ」

「ん? どうした?」


 晴華が急に含み笑いをしながら俺を見た。

 はいはい。言いたい事は想像できますよ。


「私達って、どんなふうに見えるのかしら?」

「え? どんなふうにって?」

「やっぱ、女友達? それとも姉妹?」

「さあ。普通に女友達じゃね? 俺が男だとバレてなければ」

「うふ、大丈夫。バレないわ。加州雄、綺麗だもの」

「ば! 何、言ってんだよ」

「だって、ホラ!」


 晴華が俺に腕を絡めてくる。

 え! お、おい!


「ねっ。女同士が腕を組んで歩いてるっていう風にしか見えないでしょ?」


 晴華が立ち止まって、どこかの店先のウィンドウに写っている俺達を見ながら微笑んだ。

 俺は二人の姿を見るより、晴華の笑顔に目を奪われた。


「こ、今度会う時は、バッチリ男で決めてくから」

「え? 今度? 今度があるの?」

「あ、あぁ。お前が嫌じゃなかったらな……」

「……」


 一瞬、間が空いたのが不安になり、晴華をチラっと見た。

 彼女は少し俯いているが、その口元が笑っている。

 よし! 絶対、次はビシバシの男で決めてやるぞ! と心に誓う。





「……なぁ、晴華。こんなとこでいいのか?」

「あら。どうして? ここのお味噌汁、美味しいのよ」

「……そっかぁ。晴華がそう言うなら……」


 俺達が入ったのは定食屋だった。何処にでもあるチェーン店の。

 俺としてはステーキハウスとかで、晴華との初デートを心の中で祝いたかったのだが……。しかも、晴華を目の前に置いて。うぉ! もう最高だね!


「それにね、ここは座席が……」


 ♪~♪~~~♪~

 晴華の携帯が鳴った。


「あっ、ちょっとゴメンね」

「あぁ。うん、どうぞ」

「もしもし。……ううん……偶然。……」


 晴華が携帯に手を当てて話している。

 聞かれたくないのかな? トイレでも行くフリして席を外した方がいいか?


「……うん。頑張る。ありがとう。またね。バイバイ」


 彼女は携帯をテーブルに置き、俺を見て微笑んだ。


「ありがとう。ごめんね、話の途中で」

「あぁ、別にいいよ」


 いいよぉ。全然いいよぉ。何でも許すよぉ。

 もう、俺はデレデレだよぉ。


「ねぇ、加州雄。彩、覚えてる? 山内 彩」

「山内……彩?」

「うん。同じクラスだったよ。覚えてない?」

「やまうちあや……ねぇ」


 覚えてるよ。あの頃、俺達は晴華派と彩派に分かれてたんだ。

 勿論、俺は晴華派。

 とびっきり大人しいって訳じゃないけど、女の子らしい雰囲気の晴華が俺の好みだ。

 山内 彩は、顔は超可愛いがお口が悪いっていうか、ハッキリ物を言うタイプ。

 彩派の奴らは全員Mだな。

 彩はハッキリ物を言う上に、大概が間違ってないから余計に心が抉られる。


『お前。いつか、絶対刺されるぞ!』

『ふふふ。たとえそうなったとしても、逆恨みじゃない? 結局、正しいのはどっちかしら? 真実はいつも1つよ!』


 ケッ! 勝手に探偵ごっこしとけ!

 しかし、アイツは晴華の親友なんだよなぁ。

 将を射んとすれば馬を射よ! ってかぁ。

 正直、あの馬はいらんな。俺はダイレクトに将だ。晴華だ。


「ん? どうしたの? 加州雄?」

「うん? い、いや。覚えてるよ。晴華の親友だろ?」

「うん。さっきね、加州雄に会ったってメールしたの。ふふ」

「げっ! ば、まさか!」

「アハハ。大丈夫よぉ、女装のことは言ってないわ」

「ビックリさせるなよ」

「加州雄の考え過ぎよ」

「あぁ、そうだろうな」

「それでね……」


 俺達は1時間程、食事をしながら楽しんだ。

 晴華は可愛いかった。食べる仕草もキレイだし……。

 お、俺がお前を食べたいぞぉ! ヨ、ヨダレ……。

 コロコロと笑う笑顔はあの時のまま……。

 俺は晴華を独り占めしている幸せを噛みしめていた。

 

 そして、俺はついに晴華の電話番号&アドレスをゲットしたのだった__。


 

 家に帰って、風呂に入り男に戻った俺はベッドに寝転びながら携帯を眺めた。

 勿論、ディスプレイには晴華の番号が映し出されている。


 登録名は何にしようかな? 晴華。はるか。ハルカ。晴華ちゃんはよそよそしいな。

 晴華でいいか。着信音は? 俺の好きな曲? 晴華の好きな曲? って知らないぞ。

 今度、訊いてみよう。

 電話が掛かって来た時、晴華の顔が映るようにしたいなぁ。

 盗撮するか……?

 ……頼んでみて、断られたらな。うん、今度会えるんだからな。

 ……本当に会えるんだろうか? 会ってくれるのかなぁ?

 あの時……口元が笑ってたよな? 嫌がってないよな? あぁ、晴華ぁ。


 とその時、携帯が鳴った。


「うわっ!! ビックリしたぁ~! ……晴華? マジ? も、もしもし?……」

「わっ! 早い! びっくりしたぁ~!」

「あっ、い、いや。今、晴華の番号登録してたから……」

「あぁ、そうなんだ。うふ、今日はありがとう。ご馳走様でした」

「俺の方こそ。……楽しかったし……」

「……」

「……」

「「今度!」」


 おおぉ! 被っちゃったよ。

 落ち着け、落ち着け……落ち着け。


「もしもし? ゴメン、被ったな」

「ううん。何?」

「あ、いや。今度さ……いや、晴華の好きな歌。何?」

「歌? 何で?」

「え~っと。晴華の着信音、それにしようかなって……」

「着信音? 携帯の?」

「あぁ、さっき考えててさ。変かな?」

「ううん。私からの電話、画面を見なくても分るのよね」

「あぁ、そういう事だな……」

「うふ。う~ん、今はぁ。徳田圭介の“ハート・ハート”が好き」

「えっ! マジで? 俺も好き! アレいいよなぁ。そっかぁ“ハート・ハート”かぁ。じゃ、それ設定しとくわ」

「じゃ、私も加州雄の着信音それにする!」


 ドキューン!! うっ、遣られた(ほれた)。

 晴華……いきなり、反則してんじゃねぇよ。嬉しすぎるじゃねぇかぁーーー!!!!


 その夜、俺の親愛なる相棒が下半身に、少し長めの出張に出たのは言うまでもない__。

 ドッキューン!!




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