142. 逆上・・・。-柳-
♪♪♪~♪♪♪~♪~♪~……。
……。
♪♪♪~♪♪♪~♪~♪~……。
……。
♪♪♪~♪♪♪~ピッ
「……はい」
「朱音?」
「ん……」
「どこにいんだ?」
「ふん、知ってるくせに……芙柚さんでしょ?」
「……あぁ」
「そうよね、カイトが私に電話なんてしてくるハズないもの……」
「なんで、そんなとこにいるんだ?」
「……友達んちの帰り」
「そっか……」
「……芙柚さん。何か言ってた?」
「こんな時間に女の子がこんなとこウロウロしてちゃダメだって」
「ふ~ん」
「あいつ……。そういうとこ敏感っていうか、朔もそうだったから」
「朔也も?」
「あぁ……。とにかく、今日は俺ん家来い。今から、北に上がってたら遅くなるから」
「……ん」
ふぅ……。
ピッ、ピピッ、ピッピッピ、ピッピッピッピッピ……。
9:52
-朱音とは連絡が取れた。今、こっちに向かっている。
今日はウチに泊めるよ。
さてと……。
「母さん、朱音が来るよ。友達んちの帰りで遅くなったって。泊まるらしい」
「あら、そうなの? 食事は?」
「知らない。この時間なら、もう食っただろ?」
「そうかしら……。雑炊くらいなら、すぐにできるしねぇ」
「訊いてみれば?」
ピンポ~ン。
「こんばんは~! おばさ~ん。夜分にすいませ~ん」
「あらあら、ずいぶん遅くまで勉強してたのねぇ」
「今日は勉強じゃないの。たまには息抜きしよって……カラオケ」
「そうよね、そんな時も必要よね。朱音ちゃんは頑張り屋さんだからぁ。お腹空いてない?」
「ちょっと……。空いてるかな」
「何、遠慮してるのよ。雑炊だけど、いい?」
「うん! あ、あのお漬物ある?」
「あるわよ。ちょうど漬けたとこ……そろそろいい感じだと思うわ。帰りに持っていきなさい」
「は~い」
10:40PM
-帰ってきたみたいだ。話、聞いてみる。
「朱音……」
「あ、カイト! ごめんねぇ~、遅くに電話してぇ。カラオケ歌い過ぎて、もうクタクタぁ」
「ケッ、なに言ってんだよ。生意気にガキが夜遊びしてんじゃねぇぞ」
「だぁって、もうすぐ受験なんだもん。今っきゃないっしょ!」
「はっ、言ってろ!」
11:00PM
-別に、変わったとこはないみたいだぞ?
今、風呂に入ってる。
「朱音ちゃ~ん。私の部屋でいいわよねぇ」
「はぁ~い」
11:32PM
-母親の部屋に入った。
今日はもう寝るみたいだ。
仕事終わったら、電話くれよ。
チッチッチッチッチッチッ……。
おっと、もうこんな時間かぁ。
……ったく、芙柚何してんだ?
12:42AM
-まだ、終わんね?
-今日はアフターがあるから、明日電話するね。
はぁ? アフター行く前にメールか電話しろってんだよ!
12:43AM
-何時に帰ってくる? 待ってるよ。
-わかんない。
わ、分からないだとぉ? なに言ってんだぁ? さっさと帰って来いって!
12:44AM
-早く帰って来いよ。
-うん。なるべくね。帰る時、携帯鳴らすわ。
なるべくじゃねぇっての! 今すぐ帰って来いって!
-わかった。
トホホ……。
理解あるフリすんのもラクじゃねぇ……。
チッチッチッチッチッチッ……。
うわ! 寝ちまったぁ~、電話の音、聞こえなかったぁ~。
ん? 着信……。ねぇじゃん……。メールも……。
来てねぇ~!!!
アイツー! なに、やってんだぁ!
チッ!
♪♪~♪~
「もぉ~し、も~しぃ」
酔ってやがる……。
「お前、まだ帰ってないのかぁ?」
「う~ん、まだみたぁ~い」
お前のことだっつうの!
「何言ってんだ、他人事かよ。もう、遅いぞ」
「だぁ~いじょ~ぶだぁってぇ」
うるせぇ! 早く帰って来いって!
「ったくぅ、大分、酔ってるな?」
「なことないよぉ」
あるよ! ヘロヘロじゃんかぁ!
「誰のアフターだよ。俺の知ってる客か?」
「ヒロひゃん!」
「ヒロさん? 誰?」
へっ?
「ん~っと。エロほんのひとぉ」
「エロ本?」
へっ?
「名前かえたときのぉ、エロほん! おとなひぇん!」
「大人編? え!アレって実話なのか?」
なんだとぉ! マジかよぉ! 長尾ぉぉぉぉぉぉぉ!!!
「ひょうだよぉ~。ながおがぁ、勝手にぃ~、わひゃひのひみつ、ネタにひたのぉ。ヒドイでひょぉ~」
「ってか、お前大丈夫なのかよ。そんなヤツと一緒にいてぇ」
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイィィィイ!!
「だぁ~いじょ~ぶだぁってぇ」
うるせぇ! っ全っ然! 説得力ねぇんだよ!
「ママ達もいるんだろうなぁ?」
「み~んないるよぉ」
ホッ。
よかったぁ~。
「ならいいけど……。俺、迎えに行こうか?」
行きてぇ~! 迎えに行くぞぉ! 来いって言えっての!
「だぁ~いじょ~ぶだぁってぇ!」
だよなぁ……。くっそぉ!
「ヤバいぞ、お前。本当か?」
「う~ん。ホント、ホントぉ」
そうだ! あ、明日だ。
明日の約束すれば、コイツは早く帰って来る!
コイツはそういうヤツだ!
「う……ん。分かった、明日”ライミン”行くぞ」
「らいみ~ん。いくいくぅ!」
よぉ~し。いいぞぉ、いいぞぉ。
「朝、電話するから。朔也も連れて来いよっと……学校かぁ。にしても、気をつけて帰れよ」
「わあった、わあった」
「ったく、お前はぁ。おい! 芙柚、そんな奴に犯されんじゃねぇぞ!」
ホンマやぞ! 手ぇも握らすんじゃねぇぞ!!
でないと、コロスぞ!!
「わあった、わあった! あいひてるよぉ~やなぎぃ~」
う、うるせぇ……♡
「へっ! わあった、わあった。シラフの時に言えっての」
ったくもう……。大丈夫かよぉ~。
芙柚~、たのむぜぇ~。
ママ達もいるって言ってたし……。
連れて帰ってもらえるよなぁ。
……アイツ、今日どんな格好して行ったんだろ……。
アフターって……私服だよな……。
最近……可愛い系の服着て出勤してるって言ってたからなぁ……。
店入る前はGパンでいいんだよ!
なんて……言えないしなぁ。
可愛い系……似合ってるし♡
俺、ピンクの口紅好きだなぁ♡
た、頼むから……無事に帰って来いよぉぉ!!
〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉〉
ピピピ……。ピピ……カチッ。
寝れなかった……。
アイツ……ちゃんと帰ったかなぁ。
7時かぁ……。寝てるよなぁ。
ガラッ!
「カイト! おはよ」
「ば、バカか? 急に開けんじゃねぇ」
「な~んだ、起きてたんだぁ。つまんな~い」
「わ、悪いか!」
「寝顔見ようと思ってたのにぃ」
「見せねぇよ。学校か?」
「うん! こんな時、私服の学校は便利だね。いちいち着替えに帰らなくていいから」
「お前、教科書は?」
「今日は土曜日だから大丈夫。半日くらい誤魔化せるって」
「そっか、俺達”ライミン”に行くけど来るか? 学校、終わってから」
「行く!……って、芙柚さんも……だよね」
「あぁ、そうだ」
「だよね……。授業終わってから考える……。」
「ん……」
「じゃ、いってきまぁす」
「あぁ、いってらっしゃい」
ふむ……。
まぁ、何かあるんだろうけど……。
いつもの朱音なんだけどな……?
女の子は分からん。
って……、今は芙柚だ!
8時前か……。
まだ、寝てるよなぁ……。
飯食ってこっと……。
「母さん、飯ある?」
「パンならあるよ。焼くの?」
「うん、2枚……。いや、やっぱ1枚でいいや」
「目玉焼きは? ベーコン? いる?」
「うん……」
チッチッチッチッチッチッチッ……。
時間経つの遅せぇな……。
チッチッチッチッチッチッチッ……。
「あの子どうしたの? 急に……。こんなこと、今までなかったじゃない?」
「え? 朱音?」
「えぇ…。なんだか心配で……」
「考え過ぎだって、それだけ成長してるって事さ」
「そうなの?」
「そうだよ。高校に入ったら『今夜も泊めて~』って週末毎に来るかも知れないぞ」
「馬鹿ね。何、言ってるのよ。あの子はそんな子じゃないわよ」
「アハハハ。わかってるよぉ」
だよな……。
中学から国立の大学、狙ってんだもんな……。
でも、金の面で親に迷惑掛けられないから……中学も高校も公立。
塾とか、どうしてるんだろ?
ってか、今まで付き合い浅かったし……知らねぇ。
「カイト、出掛けるの?」
「え? あ、あぁ。何で?」
「時間が合えば駅まで送ってよ」
「いいよ。何時ごろ?」
「お昼過ぎくらいなんだけど」
「あぁ、いいよ。多分、そのくらいに出かけるから」
「そう? 助かるわぁ!」
9:12 か……。
時間、経たねぇなぁ……。
あ……ふ。眠くなってきたな……。
ちょっと横になるか……。
っと、アラーム、アラーム……。
10時でいいか……。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。
これでよし……っと。
ドサッ!
zzzzz……。
ピピピ……ピピピ……ピピピ……。ピピ……カチッ。
う……っ。
んっ……あぁ!
電話……。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。
トゥルルー……トゥルルー……トゥルルー……。
「はぁい……」
「起きてるかぁ?」
「うーん、なんとかぁ……」
おぉ、ちゃんと帰ってんだぁ。
「お前、昨日ひどかったぞぉ」
「う……ん。頭、痛い……」
「だろうなぁ」
ベロベロだったもんなぁ。
俺が横にいたかったくらいだぜぇ。
「″ライミン″行くぞ」
「う……ん」
「迎えに行こうか?」
行くぞぉ♡
「ううん。シャワー浴びたいから……。先に行ってて」
「あぁ、わかった」
早く来いよぉ♡
ガチャ。
ザーザー……。
キュッ。
『まひる。シャワー浴びるかぁ?』
えっ?
『ヒ、ヒロさん!?』
『どうした? 起きれないか?』
えっ?
バクンッ!!
「ヒロさん? バッキャロー! 芙柚! お前、今どこにいるんだ!!」
「ど、どこって……」
「ふ、ふざけんじゃねぇぞぉぉ!! どこにいるんだよぉ!!」
「え? え? あ、あたし……」
「オマエっ!! 何、やってんだよ!」
「な、なにって……。ヒ、ヒロ……さ……ん。あ……」
「芙柚! 芙柚! おい!! 芙柚!!」
「……。」
「おい! もしもし! もしもし! 芙柚!!」
カチャカチャ……。
「もしもし……」
「……アンタ。誰だ」
「人の名前を聞く時は……まず、自分から……じゃないのかね?」
クッ……。
「や……なぎ……といいます」
「ほぅ……。君が……」
「ふ、芙柚を迎えに行きます。そこは……どこですか」
「迎えに? ハハハ……私達は今目覚めたところなんだ……もう少し時間をくれないか?」
クッソ……。
「申し訳ないですが。約束してるもんで……。彼女と……」
「フ……。彼女……ねぇ」
『ヒロさん! 電話、代わってください!』
「ヒロさんと仰るのですか? 申し訳ないですが、彼女と電話を代わっていただけませんか?」
「そうだね……。これ以上は……」
『もしもし! 私……』
『もういい……。どこだ? 迎えに行く……』
『リ、リーガロイ……』
『わかった!!!』
チッ! 超一流ホテルじゃねぇか!
『い、今から……30分。いや! 20分!! 外で待ってろ……。分かったな! 外でだぞ! 一秒でも早くその部屋……出ろよっ!!!!』
『わ、わかった……』
プッ……。
バタバタバタバタ……。
「母さん! 悪い! 俺、でかける!」
「えぇ! 送ってくれないのぉ」
ガチャガチャ。
バン!
キュキュ!
ブォンッ!!
キキィーー!!
「カイトぉ~」
ふざけんじゃねぇぞ!
ったく、なにやってんだ!
信じらんねぇ! 信じらんねぇ! 信じらんねぇ! 信じらんねぇ!!
渡さねぇぞ! 誰にもぉ! 芙柚は俺のものだぁぁぁーーー!!!