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俺の恋。決めた恋。  作者: テイジトッキ
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1.この好機、逃すものか!

 雪がチラついて来た__。


 初雪? 冬は好き。

 ううん、正確には雪が好き。


 空を見上げると、細かいガラスの欠片がキラキラ輝いているように見える。

 でもその雪が目の前に落ちてくる頃には、フワフワとした羽毛に姿を変える。


 それは、とてもロマンチック……。


 だが! さすがにこの格好は寒すぎる。

 只今バイトの真っ最中。

 街頭でイベントのチラシを配布しているんだ。

 派手なコスチュームを着せられて、大声で『おねがいしま~す』と言いながら笑顔で、歩いている人の目の前にチラシとティッシュを突き出す。

 こちらとしては老若男女を問わず押し付けて、さっさと終わらせたい心境なんだがそうもいかない。


 このティッシュ……R18モノだ。仕方ないか……。


 まっ。気を取り直してっと……。

 腕に掛けた小さなバスケットの中からティッシュを取り出し、ニッコリ微笑んで、首を傾げて、上目遣い、たまにアヒル口もしてみる……評価は低そうだけど。

 その証拠に目も合わせてくれない。


 首を傾げる角度が、もひとつかな?

 あああぁ! そんな事は後で温かいお風呂に浸かりながらの一人ミーティングで考えよう。

 うううぅぅぅぅ、寒いーー!!


 今日のコスチュームは、全身真っ白。

 三角帽子、短めのローブ、Aラインのワンピ、膝上まであるロングブーツ。

 しかし、ワンピがノースリーブなんだよぉ。ローブが短いから寒さが半端ない~。

 イメージは白いサンタクロースって感じで、あっちこっちにファが付いていて結構可愛い。


 チラッと、チラシセットの箱の中を覗いてみる……あと、50人程で終わるかな?

 他の奴らは? ふむ、順調そうだ。30分位か……よし、頑張るぞ!


「お願いしまぁすぅ」

「加州雄?」

「あ、は~い」


 げっ、返事しちまったよ……ヤバ。いきなり呼ぶなっての。

 誤魔化さないと……。

 聞こえてないフリ、フリっと……。


「おねがいしま~す」


 ニコッ♡……なんて。

 おっ。女じゃん……ま、いいか。

 チラシ&ティッシュを渡してっと……。うふ♡

 上目遣いで……瞬きも追加してやろう。パチパチ……ふっ、決まったな。

 なんてったって、今日のまつ毛は2つ付けだもんな。


「何やってんの? かずお」

「え……?」


 改めてチラシセットを突きつけた相手の顔を見る。


「はるか!!」

「え? 何? バイト?」

「ちょ、ちょちょっと待て」


 俺は慌てて目の前の女の腕を引っ張り、バイト仲間から少し離れたとこへ移動した。


 何で、晴華がいるんだよ……ってか、モロバレ?


「よう! 久しぶりだな。元気だったか?」

「……」


 な、何だよ。その蔑んだ目は……。

 いやいや、コイツはそんな人間じゃない。

 人を蔑んだりするような……ヤツじゃない。

 これは……驚いているだけだ。

 当然の反応なのだ。


「あ、もうすぐバイト終わるし……茶でもシバかね?」


 し~ん。

 うっ……。お、おい。何か言えよ。

 っていうか、何か言ってくれなきゃ俺の心がもたねぇんだよぉ。


「…………古いよ。誰が今時ナンパするのに『茶シバく』って言う? 親の親の、その又親の時代だわ。しかも、その格好でナンパする? 間違えてるよ。か・ず・お!」

「しっ! 大きな声で呼ぶなって!」


 ヤ、ヤバイ! 思わずバイト仲間達を振り返る。

 ふぅ~。聞こえてないみたいだ。


「はいはい、悪かったわ。じゃ、何て呼べば良いの? か・ず・お」

「ああ、わかった! わかった! ちょっと待ってろ。すぐに戻るから。そこ動くなよ!」


 と言いながら、俺がその場を離れようとすると後から晴華が叫んだ。


「あっ、ちょっと! 私の都合は聞いてくれないの?」


 あっ。……だよな。


「ゴメン。時間ない? もうすぐ終わるんだけど……」

「う……ん。まっいいか、久しぶりだもんね」


 晴華は少し考えた後、そう言ってニコッと笑った。


「おぉ。待ってろよ! すぐだから!」 


 うひょ~!! 晴華だぁ! 晴華だぁ! 


 こんな好機は滅多とない。というか諦めていた。

 俺がウキウキしながらバイト仲間の方へ走って行くと、もう帰る準備をしているところだった。

 友達が来たと告げると『片づけはいいいから、帰っていいよ』って、快い返事をくれた。


 う~ん、いい人達だ。


 俺、吉村加州雄。高校3年生。9月14日生まれ。乙女座。O型。男。

 ちょっと事情があって、女装してバイトしている。

 まぁ普通に考えて、事情なしで女装はしないと思うけどね。


 とにかく、今は晴華だ。

 中学からずっと片思いしていた。3年ぶりかぁ? 可愛くなってるよなぁ~アイツ。

 性格がいいから結構人気あったし。俺なんか、遠目でしか見れなかったもんなぁ。

 絶対、連絡先ゲットするぞ! 


 っていうか、3年ぶりに会って女装なのにバレるって……俺もまだまだケツが青いな。ハハハ。


 着替える為に、チラシ配布場所から少し離れた所に停めてあるワゴン車に乗り込んだ。

 急いで、衣装を脱いでいる途中に気がついた。


「ヤベ! 俺、今日の私服も女だ!」


 この手のバイトは、化粧するのに時間が掛かるから家でメイクしてくる。

 なので、見た目を考えて女物を着る羽目になるんだよな。

 玄関から出る時に人がいないかを見計らって飛び出すが、近所のおばちゃんとかにたまに会ったりする。

 当然、帽子を目深に被って下を向いてるから気づいていないと思うが……。


 選りによってこんな日に……。

 いや、諦めないぞ! なんたって晴華だもんな。


「いよ! 待たせたな!」

「……」


 うっ、当然の反応だ。普通に引くよな……。

 バイトだけならいざ知らず、私服までとは……お釈迦様でも分るまいってか? 


 ……俺のギャグはどうも古いな。

 お祖母ちゃんっ子の所為か……。

 さっきの『茶シバく』もばあちゃんに教えて貰った。


「さ、寒いからどっか入ろうぜ。お腹空いてないか? バ、バイト代入ったし俺が奢るよ」

「……」


 焦るぜ……このまま走り去られでもしたら、人生最大の汚点になる事間違いなしだ。何とか引き留めねば……。


「俺は、何でもいいからさ。どこがいい? どこでもいいぞぉ」


 くっ……手を繋ぐか?

 いや、いっそ肩を組んでしまうか?


「……ねぇ。その格好で『俺』はないんじゃない?」


 上目遣いで、嗜めるように晴華が言った。


 いやん、か~わいい♡ やっぱ、女の上目使いはグッとくるねぇ~。

 だから、俺は上目遣いに磨きを掛けてるんだ。

 男心は男が一番知ってるのさ。


「大丈夫だよ。誰も聞いてねぇって。聞こえたとしても男っぽい女って感じでさぁ。最近、女でも『オレ』とか『ボク』とか言うヤツいるだろ? っていうか、それ以前に誰も気にしてないって」


 俺は晴華の目の前で、手のひらをヒラヒラさせた。


「私の周りに自分の事を『俺』『僕』って言う子はいない。それに、今の加州雄は完全に男の仕草だけど。女の格好してるんなら徹底すれば? 女として嫌な気分だわ」

「え? あぁ、そうか……。ごめん」


 バカヤロウ! 女の姿で晴華の前にいるだけで、俺にしては表彰もんだっつうの。

 なのに、その上ナヨナヨしてられっか! 

 俺はお前を引き留めるのに必死なんだから、これ以上嫌われるような事を態々する訳ないだろ。

 っていうか。晴華の前で男らしく振舞いたいのは当たり前の事で……。

 例え、こんな格好を……してても……。

 おいおい、勘弁してくれよ。


「まっいいか。早く行こ! 冷えてきた」


 そんな俺の杞憂をよそに、晴華がケロっと言った。


 よ、よし!


「お、おぅ。で、何処に行く?」

「ゲームセンター!!」

「はぁ? ゲーセン?」


 晴華さん! マジっすか?



また、お会いできた事嬉しく思っています。

ゆっくりと更新していきたいと思っています。

宜しくお願いします。

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